見出し画像

理性的な制作に向かって

わたしの会社、木と冬では「ゆったり制作プラン」を作りました。時間を長めにいただいて小規模のウェブサイトを作るというものです。「ウェブサイトを作るちょうどいい方法ってないよね」とずっと思っていて、このたびチームメンバーと一緒に考えてプラン化しました。

ちょうどいいとは

これまで十数年にわたってウェブ制作の現場に携わってきてずーーーっと思っていることがあります。ウェブサイト作るの高い。

誰かに作ってもらうというのはなんだって高くつきます。ウェブ制作が高いのも、ディレクション・デザイン・エンジニアそれぞれに専門性があり、すべての人が関わり合ってひとつのものを作るからです。

しかしもう数百万、数千万円の世界なんです。とてもじゃないけど個人の方がかけられる費用ではありません。かたや個人の方が作ろうとすると、ノーコードサービスで苦心しながら作るほかない。「難しい・・・たすけてー!」という声をたくさん聞いてきました。ちょうどいいところを作りたい。

せっかく誰もが世界に言葉を投げかけられる技術なのに、真っ白なキャンバスが広がっているのに、そのおもしろさを共有できているか不安。プロとしていろんな人にちょうどよいウェブサイトを提供するにはどうしたらいいだろうということをずっと考えてきました。

売り上げから考えるのをやめる。
よけいだと思うコストをかけない。
小さいままであること。

見栄やお金を追求するのを後回しにして考えると、もっと多様でシンプルなところに向かう気がしました。必要なことを必要なだけ。身の丈にあう。ゆったり制作プランでそんなことを実現していきたいと思っています。

(とはいえ個人の方にはまだお高い価格であるということもわかっているのですが・・・でも、それだけの価値のあるものだと思っているからこその価格です→料金表

なぜ「ゆったり」?

このプランでは長めの期間をいただくことを前提としています。理由は大きくふたつあります。

現代、時間はとても貴重なものです。効率化で自由な時間が増えそうと思いきや、空いた時間にどんどん仕事を詰め込んでしまいます。(トホホ。)
その結果、時間が仕事を呼んでしまう現象が起こっていて、それをなんとか差し止めたいというのが理由のひとつ。わたしたちごとなのですが、まず最初に時間を提示することでメンタルヘルスのケアにつながると考えました。

もうひとつは「費用を決めるのに時間を係数にしてみたらどうだろう」という検証です。わたしたちの仕事はだいたいスケジュールが決まっています。◯月上旬〜◯月下旬で稼働できますか?というような。でもウェブ制作の最後の工程であるためにお尻は決まったまま遅れてくることもしばしばあり、そこに収めることが求められます。その対応にはスキルも負荷も求められる。対応する時間が短くなればなるほど費用は高くなり、長くなれば安くなるという考え方にしてみました。

ウェブサイトをめぐる環境問題

もうひとつ大事なことが。

生きているだけで資源を使用するように、ウェブサイトを使うことでも環境へのインパクトがあります。製品のライフサイクルの中で排出される温室効果ガスをCO2に変換して数値化する「カーボンフットプリント」という考え方がありますが、ウェブサイトにもそれを計測しているところがあります。

The internet consumes a lot of electricity. 416.2TWh per year to be precise. To give you some perspective, that's more than the entire United Kingdom.
(訳)インターネットは大量の電力を消費する。正確には年間416.2TWh。これはイギリス全土を上回る量だ。

Website Carbon Calculator

ウェブサイトをホスティングするサーバも電力で動いているし、わたしたちがウェブサイトにアクセスする端末も充電しないといけません。無尽蔵に増やしていけると思いがちなインターネットは意外と電力を消費していて、一人一台以上の端末を持つようになってから問題はより顕著になっています。

アクセスしただけで過剰な処理が行われるウェブサイトも少なくありません。回線速度やブラウザの性能が上がるにつれてウェブサイトに求められる基準は高くなりつつあります。でも、それって生活にフィットしている?

そんな問いから、わたしたちで制作するウェブサイトはなるべく環境へのインパクトを減らそうと意識することにしました。サイトが重くならないように設計やデザインをしたり、余計なリソースを読み込まないようにコーディングをすること。環境にやさしいホスティングサービスも積極的に使用していこうと思っています。

デザインもよりシンプルになるかもしれません。それが本来すべきデザインであるし、コンテンツに集中できる/読み込みにストレスがない/電力を消費しない-とシンプルにすることはメリットだらけなんです。

「ゆったり制作プラン」とはあまり関係がないようにみえますが、まず依頼してくれた方やアクセスする人のことを考え、これからの生活を続けていくためにという点ではわたしたちの理念に一致している作り方です。

▼こちらの記事もおもしろいのでぜひ。
これからのウェブサイトは「地球に優しい」ことも重要に? 見直されるシンプルなデザインの価値

理性的な制作へ

ひらかれた場所へ向かうために、なるべく個人から離れないようなサイズであること。環境やアクセシビリティに配慮するために、見栄やお金を第一の目標としないこと。総じて「理性的な制作」へ向かうことを大切にしたい。

ウェブサイトを作るツールがたくさんある中で誰かに依頼するハードルも高くなっていると思います。わたしたちにしかできないことがある!と言うつもりもありません。みなさんと同じように生活しているただの人間です。そんな人間にできることはなにがあるだろうと日々考えています。仕事を、生活を、続けていくためにはどんな作り方がいいだろう。内外から考えています。

お店をはじめたり、新しい事業を立ち上げる方。作家さんや写真家さん。趣味のことでウェブサイトをはじめたい方。ウェブサイトを持つことなんてイメージしたことなかった!という方。居場所がほしい方。いろいろな方へひらいています。お問い合わせのみでも構わないのでお気軽にご連絡ください。

この記事が参加している募集

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?