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行動分析学の記録で「みんな」から「個」の保育へ ~園児からのボトムアップ保育~その2

翌日から実践

昨日のA先生のアドバイスを受けて、さっそく保育士は気持ちが楽になったようでしたが、これで課題解決ではありません。
研修内容を実践で活用でき、日常の保育の質が向上し、何より、子どもの支援になければ意味がありません。
さらにそれを継続するためには記録の付け方が重要だったのです。
感情的な記録ではなく、行動分析学の思考を維持するための記録です。
それは、
子どもをよく観察することから始まり
②保育士自身がどんな関りをし
③結果どうなったかを記録する
実は保育士自身の行動記録でもあります。
子どもの行動だけを記録するものは山ほどありますが、自分の行動をきっかけとして、子どもがどうなったかを記録するなんて、すごい記録です。
しかも記録している保育士は、子どもの行動を記録しているつもりで、実は自分や周りの保育者の行動をも記録しているなんて、、、マジすごい。
これで得られる効用として、もっとも良かったことは、主任や園長などから「もっとこうしたら?」という指示されるトップダウンではなく、困りを抱えていた保育士自身が課題解決の糸口に気づいていくプロセスを得られたことでした。

下の表1)、表2)を見てください。
今までは「どんな時」「どんな行動」までにフォーカスして、その問題となる行動を減らすことに力を注いでいたのですが、
「どんな対応(周囲がどのようになった)」「その直後の子どもの様子」まで観察していくと、対応の在り方で子どもがどうなったのかを知ることができます。

引用:肥後祥治「行動分析ワークショップ」「一歩、一歩」ワークシート集P3~8.


引用:肥後祥治「行動分析ワークショップ」「一歩、一歩」ワークシート集P3~8.

具体的な行動記録を蓄積していくと、行動の理由(意味)が見えてくるのです。

チーム保育(共働)が大事

また、保育者がどう関わればいいかも分かってきます。
もしかしたら、善かれよ思って行っていた支援によって、逆にその子の好ましくない行動を促していたかもしれません。
例えば「(子ども)大声で泣いて要求する」→「(保育士)応じない」→「(子ども)もっと大声で泣く」→「(保育士)もう、しかたないね。と応じる」
とすると、も子どもは「もっと大声で泣けば要求が通る」と学習してしまいます。
逆に、好ましい行動を引き起こした支援の在り方がわかってくれば、それをすればいいのです。
しかし、複数いる保育士の中で一人しかその方法の支援ができないとなると全てが台無しです。
習慣化しないからです。
記録を取りながら、保育者同士、情報を共有し、みんなで実践していくことが大事です。

観察・記録にいらない要素と必要な要素

行動分析学を学びながら気づいたことがありました。
それは、この記録は「今にだけフォーカスしていること」
まず「発達障害だから...」というバイアス。
得意不得意に影響はあるにしても、必ず成長するのだから、「発達障害だからできない」という偏見はいらない。
それと、「このまま小学校にあがると授業に集中できないのではないか、、、」とか、将来のことを勝手に想像して心配するときがあります。
でもそれって、すごく不確かなことで、それによって子どもを評価するなんておかしなことです。
また、「小さい頃からそうだった」などの過去の行動で今を評価することも不必要なことです。それは「昔はよかった」と嘆く老人と一緒。
それともう一つ、「みんなそうだから」とか「他のみんなはできるのに」のような評価もいらない。そもそもみんなという主体はない。
以下の要素は行動分析学の観察記録にはいらない要素。

①発達障害の診断名によってかかるバイアス
②支援者の勝手な将来の不安妄想
③都合よく使われる過去の記憶
④「みんな」というアバウトな主体

必要な要素は、「今の出来事」にフォーカスすること。
たったこれだけ。
とてもシンプル。複雑な思考や難しい方法はいらない。
こうして書いてみると、普段いかに要らないことにエネルギーを注ぎがちかが分かります。
行動分析学の記録がいかにシンプルかつ合理的であるのか、再確認できました。

その3へつづく。


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