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【プチ研究】 組織のなかのシニア (1) 実態

 「働かないオジサン」と揶揄され、シニア就業には厳しいものがあります。手の届く範囲で調べてみました。

諸説の要約

 「モチベーションが低い」「パフォーマンスが低い」「マネジメントしづらい」など、シニア社員への評価は厳しい。にもかかわらず、現場の「年上の部下」と「年下の上司」の8割は互いに良好な関係性を保っている。ということは現場では、パフォーマンスに目をつぶって、無難な関係性維持を優先していることになる。
 だから、シニアの働き方の課題は「関係性を良好に維持しつつ、いかにシニアの意欲とパフォーマンスを改善するか?」ということになる。しかし、これだけであれば、マネジメントの普遍的課題にすぎない。一歩踏みこむならば、シニアの働き方の真の課題は「関係性とパフォーマンスの両立が困難である」ことにある。
 さらに、上司部下双方にとって関係性の共通キーワードが「傾聴」であるということは、課題の核心は「フィードバックの困難さ」であることを示唆している。

企業の評価は厳しい

 資料(1) パーソル総合研究所、2021/8/16

  • シニア社員が「期待に応えている」割合は(上位項目でも)30%程度にすぎず、「新たな仕事へのチャレンジ」「自律的なキャリア構築」といった項目では、20%を下回った。

  • 最大の課題は「モチベーションの低さ」と「パフォーマンスの低さ」、「マネジメントの困難さ」で、40%以上の企業で問題視されていた。

  • シニアが曖昧な評価のもとに、疎外され、放置されている職場では、若年者の転職意向がかなり高くなる。不活性なシニア社員の放置は、若年者にも悪影響を与える。

ポストオフで大幅に意欲が低下する

資料(2) リクルートマネジメントソリューションズ、2022/01/31

  • 役職を外れた(ポストオフした)会社員の4割が、仕事に対する意欲が「下がったまま」と回答。「一度下がったが上がった」は2割にとどまる。

  • ポストオフが「疎外感」と「周囲からの期待低下」を引起こし、それが「意欲低下」を招き、それがまた「疎外感」と「期待低下」を悪化させるという悪循環が生じている。


 本来、労働意欲の源泉はポスト(社内の地位)だけではない。ポストオフが大幅な意欲低下を引き起こすならば、会社員がポスト中毒になっていることも意味する。これは本人だけの責任とはいえない。長年、昇給昇格だけを餌に労働意欲を引出し続けてきた企業の人材育成スタイルそのものに問題があったことも示唆している。


しかし現場の上司部下はうまくやっている

資料(3) サイボーズチームワーク総研、2023/7/18

 「年下の上司」による「年上の部下」へのマネジメントについて調査した。その結果、8割近い人が、年上の部下あるいは年下の上司と「仕事がやりやすい」と感じている。

年上の部下から見て、やりやすい年下の上司とは

  • 上から目線がない

  • 聞く耳を持っている

  • 話しかけやすい

年下の上司からみて、やりやすい年上の部下とは

  • 仕事を任せられる

  • 聞く耳を持っている

  • 経験やスキルが十分にある


 資料(1)(2)(3)によれば、シニアのパフォーマンスは低いにも関わらず、現場の上司・部下の8割は良い関係を保っている。ということは、年下の上司は、年上の部下のパフォーマンスの低さに目をつぶっている。これを上司の怠慢というのは酷だろう。年上の部下が扱いにくいので、チーム全体のパフォーマンスを考え抜いた末の苦渋の決断だろう。手をかけても改善見込みのないシニアよりも、若い部下にマネジメント・アテンション(マネジャーがストレスに抗って発揮する集中力)を投資したほうが、結局はチーム全体の成果が大きくなるからだ。

 なお、資料(3)によれば、「やりやすい条件」として、上から見ても下から見ても「傾聴」が二番目に入っている。このことは課題の核心が「フィードバックの困難さ」にあることを示唆している。


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