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これから社会人になるあなたへ

「医者は治療する立場だから患者が亡くなると自分の責任だとか思いがちだけど、そんなたいそうな力はない。良い医者ですら、多くの失敗や患者の死を経験しそれをもとに形成されている。責任を負うなんてそんなたいそうなことは思う必要はないし、医者はそんな偉い立場でもない。でも無駄にしてはいけないし、申し訳ない気持ちは大事にした方が良い。やっぱり失敗をもとに次にどうするか、そうやってしか前に進めない。それが成長につながり、より良い医療を提供できるはず。今日は精一杯申し訳ない気持ちになっって、明日からは引きずることなく前に進みなさい!」

医師になって1年目、自分の担当していた患者さんが初めて亡くなった時に、10歳程年の離れた先輩医師からもらったメールだ。医師になったばかりで、何もすることができず、自分の無力感に苦しんでいるとメールした所、上のような返事が来た。この言葉は今でも、私の医師としての「姿勢」を支える大切な言葉だ。

1年目にこのような言葉をかけてくれる上司に出会えたことは、私にとってかけがえのない財産だ。もし、「今日の事は仕方がない。勉強して、知識と技術をつけて、次の患者さんを救ってやろう!」みたいな言葉をかけられていたとしてら、勘違いした医師になっていたかもしれない。知識や技術以上に、医師としての「姿勢」を教えてもらった。

社会人になって、最初の数年は、とても大切な時期だと思う。
右も左も分からない、お作法も分からない、自分の型もない。見方を変えれば、素直で純粋で、スポンジのように何でも吸収できる。その時期にどんな人に出会うか、どんな人から教えを乞うか、どんな人を師として仰ぐのか。それによって、社会人としての人生は大きく変わると思う。4月から新社会人になる人たちには、ぜひ職場で「この人みたいになりたい!」と思えるような人を見つけて欲しいと思う。知識や技術でももちろん構わないが、仕事に取り組む「姿勢」という視点でもアンテナをはってみて欲しい。

医師になって10年以上になる。気が付けば、1年目の時に言葉をかけてくれた先輩医師と、同じくらいの年齢になった。
4月になれば、初々しい社会人1年目の医師が職場にやってくる。
私は、新人にあの時の先輩医師のような「姿勢」を見せられるだろうか?
悩みを相談された時に、あの時のような言葉をかけてあげられるだろうか?まだ少し不安もあるが、あの時の言葉をもう一度思い出し、4月からまた気持ちを新たに、新人達と一緒に頑張りたいと思う。

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