三佐妃

とある地方都市の小さなクリニックでダイオウグソクムシのように生息する臨床心理士、公認心…

三佐妃

とある地方都市の小さなクリニックでダイオウグソクムシのように生息する臨床心理士、公認心理師。だいたい全部の領域で、およそ四半世紀活動してきました。

最近の記事

住宅ローン金利上昇で日本も「ノマドランド」になるのか    #映画感想文         

 「nomad」は遊牧民に由来することばで、特定の場所を持たない働き方や暮らし方を言います。     「ノマドランド」は、静かで美しい映画でした。同時に、実際のノマドワーカーが名演していて、ドキュメンタリーとフィクションの境目がなく、ノマド暮らしの過酷さや、心の傷を抱えてさすらう悲しみも、私の胸にどっと流れ込んできました。    ネバダ州に暮らす60代のファーンは、教師をしていたこともある聡明な女性。しかし、リーマンショックのあおりを受けて長年住んでいた家を失ってしまう。亡き

    • 夢日記 #習慣にしていること

       鎌倉時代初期に、生涯にわたって自分の夢を記録し続けた、孤高の名僧、明恵(みょうえ)の詠んだ歌です。  朝一番にコーヒーを飲みながら、ほやほやの夢をノートにまとめるのが習慣です。  私が夢日記をつけようと思いたったのは、明恵上人のような崇高な志でなく、とてもセコイ動機でした。    神秘世界に飛び込んで、じゃぶじゃぶと泳ぐことが、私の至福のリカバリーなのですが、ホロスコープも、タロットも、ヒプノセラピーも、鉱石も、アロマも、人類の歴史の探求も、神秘世界系のモノやワークショッ

      • 故郷に帰りたい「HSP」というのもあるのかも

         4歳の頃、私は突然、自分の本当の名前は「むうこ」で、「遠いところからやってきたのだ」と感じた。  7歳上の兄にこのことを話した。兄は真剣な面持ちで、「本当に『むうこ』なんだな?いいんだな?」と念をおした。  そして兄は、私が幼稚園に入るために母が用意していた通園かばんや靴、帽子、その他の持ち物すべてに、油性のマジックで「むうこ」と名前を書き入れた。  その後が大変だった。母は怒り心頭。かわいそうなことに、当時11歳の兄はバシバシに叱られ、その日の家族のおでかけはパァになって

        • 死後のプロセスを学ぶ。

           以前、職場の事務室で、若手女子たちと雑談してました。  ひとりが「夜ひとりでいるとき、死ぬこととか考えだすと、急に怖くて心臓がバクバクしてくるんです。そんなことありませんか?」というので、  「私は、死とか死後の世界とか考えだすと楽しいな~。高校生の頃なんて、丹波哲郎の『大霊界』っていう映画が流行って、わざわざ映画館に見に行ったくらい。」といったら、なんか話が途切れて、みんな下を向いてしまった。  まずい、おばさん変なこといっちまった・・・と思っていたら、女子たちは一斉に、

        住宅ローン金利上昇で日本も「ノマドランド」になるのか    #映画感想文         

          ほんとうの優しさ、とは。

          涙の浄化作用  あの名作「大地」三部作から作家のパール・バックが好きになり、彼女の手記「母よ嘆くなかれ」にたどりついたのであるが、私は、初めてこの手記を読んだとき、通勤の電車のなかで、人目もはばからず、ぽろぽろと涙をこぼしてしまった。   誰でも、生きていたら、どうにもことばにあらわしようがない深い悲しみが、ひとつやふたつあるものだ。   ことばにあらわせないぶん、悲しみは心の奥に沈澱していく。でも時折、底から激しく噴きあげて、日常の平穏を壊す。   パール・バックのかみし

          ほんとうの優しさ、とは。

          「逃れることのできない悲しみに耐える」について。

            隠れた名作「母よ嘆くなかれ」  パール・S・バックは「大地」でノーベル文学賞を取った。彼女の手記「母よ嘆くなかれ」はあまり知られていないかもしれない。  私は「逃れることのできない悲しみ」の感情に捕まるたびに、いつもこの本を引っ張りだす。  パール・バックのひとり娘は、発達に困難を抱えるこどもだった。1930年代の、まだ発達障害に理解がなく、医療も進んでいなかった時代の話だ。  彼女が娘の発達の困難を知ったとき、胸をついて出た最初の叫び声は、 「どうしてこのわたしがこ

          「逃れることのできない悲しみに耐える」について。

          夢と、秋山さと子先生の思い出

            3日坊主の私が夢日記だけは継続中  枕元にノートとペンを置いておき、夜見た夢を書き留める、ということを続けています。夢を見たらすぐ、忘れないように寝ぼけた頭で書き留めます。朝起きてみると「誰が書いた?」と思うような謎のことばが書いてあったりするので驚きます。   特に、さあ分析してみよう!とも思ってはいません。夢は気をつけて大事に扱ったほうがいいと思うから。ただ、夢の世界と現実の世界を行ったりきたりしていると、私がいま現実と思っているのが「夢」で、「夢」だと思っている

          夢と、秋山さと子先生の思い出