ちょっと怖い話

 やぁ、良い子のみんな。
良い子のみんなは週に2回ペースで40日ちかくも金縛りに遭い続けたことはあるかな?
 どうも、イナです。

 暑い日々が続いているので、今回はちょっと怖い話でもしましょうかね。
 あれは私が岐阜県の山奥で働いていた時のことである。


、、、。

 季節は冬。一月下旬。時刻は夜中の一時。
明日が休日という事もあって夜更かしをしていた私は夜食を買いにコンビニに出かけた。

 私が住んでいたのは本当に山の中だった。
街灯というもの自体がなく、コンビニに行くためには自分の手も見えないほど真っ暗な夜道を25分歩くしかない。

 引っ越して来た当初はスマホのライトがなければ歩くことができなかったほどだが、この時にはもう慣れたもので、スマホも持たずに夜道をサクサク進んでいた。

 アパートを出発して間もなく。
私は道端に変なものを発見した。水色の膨らんだゴミ袋だ。奇妙に思えた。

 「なぜこんな所に?」
妙なのは、その場からすぐ近くにゴミ捨て場がちゃんとあった事である。10メートルも離れていないのに、なぜゴミ捨て場ではなく道端に放置されているのだろう。私はそのゴミ袋に近寄った。

 ゴミ袋まで3メートル程の距離になったとき、あやうく悲鳴をあげるところだった。
 私がゴミ袋と思っていたのは、うずくまった女だった。辺りが暗すぎるために、水色のカーディガンを着た女がうずくまっているのを、水色のゴミ袋と誤認したのである。

 女は私に背を向けた格好で、何かをやっている。道端の側溝に手を突っ込んで、なにやら漁っているように見えた。その時になってようやく、女が側溝を漁るジャッ、ジャッという音が聞こえた。

 私はまったく動けずにいた。
真冬の夜中一時である。気温はマイナス10℃になっているはずだ。そんな中、薄手のカーディガンで足元はよく見えないがサンダルだろうか。ライトの類も一切もたず、女は一心不乱に側溝を素手で漁っている。
 人間、、、だろうか?
いや、人間であろうとなかろうと関わってはならない。ヤバいに決まってる。

 そっと後ずさる。後ろを向く。
さあ逃げるんだ。ゆっくり、静かに。
コンビニに行こうという気持ちなど、もはや完璧に消え失せていた。
 その時である。以前とは明らかな違いがある事に気づいた。音がしない。
女が側溝を漁っていたジャッ、ジャッ、という音が消えている。手を止めた、、、?

 わずかに布がすれる音。
 立ち上がっている?

 じっとりと嫌な汗が出てきた。一刻も早くアパートに戻らなければならない。
 しかしその時、嫌な予感がした。

 このままアパートに帰ると、コイツを「連れて行く」ことになるのではないか。

 それは確信に近い感覚と言えた。
私は意を決してアパートとは真逆の方向、コンビニ方面へと歩き出した。

 走るな。喋るな。足音を立てるな。後ろは絶対に振り向くな。静かに。できるだけ早足で。

 そこから15分間。私は必死に歩いた。
早足のため足首が痛い。耳をすませる。
足音は聞こえないが、振り返らない。
 もし、振り返って貞子みたいなやつが背後にいたら漏らして失神する自信がある。

 ようやくコンビニに辿り着いたとき、私は汗まみれで息も絶え絶えだった。でも良かった。
助かった。コンビニの際立った明るさが恐怖を取り去ってくれた。

 私は予定通りに買い物をし、来た道とは別のルートで無事に帰宅した。

 冷静になって考えれば、あの女は認知症やアルツハイマーの類だとも考えられる。
 だが。私が見た女の後ろ姿はせいぜい30代半ばくらいだと感じた。いくらなんでも認知症には早すぎる。

 あの時。もし女に声をかけていたら。
もし歩いていて後ろを振り返ったら。
どうなっていたのかと思うと、
ちょっとヒヤリとするのだ。

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