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ブームに乗っかる
流行りというものを意識しだしたのはいつ頃からだろうか?
流行りの曲、ファッション、食べ物……
自意識過剰なところがあり、流行り乗っかるということをしてこなかった。
今回は流行に乗っかってみた話。
大学生の時タピオカが流行った。”タピる”なんて言葉も生まれ、新しい店が建ち、そこかしこでカップを持つ人を見かけた気がする。
そんなとき私はなぜかタピオカを頼まなかった。今となっては謎だが、一度も飲むことがなくブームは終焉を迎えた。
タピオカのタの字も聞かなくなったころ、「もったいなかったなー」と思うようになってきた。斜に構えていたことで得られたものは何も無く、少しの後悔が生まれた。
ブームに乗っかることをどこか恥ずかしいと思っていたが考えが変わる。流行っている内に関わるからこそ得られるものがあるのではないか?
以降、流行っているもの(主に食べ物)を手あたりしだいに試していくことになる。
次はマリトッツオが流行った。
イタリア発祥の伝統的な菓子で、パンに大量のクリームを挟んだものは見た目のインパクトがある。家族の分を購入したところ、物珍しさもあって反応は良かった。「これは?」「マリトッツオだよ」「今流行ってるやつか」「どんな味がするんだろうねぇ」「クリームパンだよイタリアの」
せっかく買ってきたのにクリームパンと決めつけられイラっとしたが、僕の凡庸な舌ではクリームパン以上の表現が思いつかず出鼻をくじかれる形となった。
次はカヌレである。
フランスの伝統的な焼き菓子でバターや卵黄をふんだんに使っている。
サイズに対して値段が高く、普段なら絶対に買わない類の菓子であったが、これも流行っているので味は間違いないだろう。
食後に出したところ10分で完食。2000円近くしたものが一瞬で胃の中へと消えた。
やはり旨いものは無くなるのも早い。
「カヌレなら前も流行ってたよね」母の発言を皮切りに聞きたくもない昔話を聞かされる羽目になった。
流行にはサイクルがあるらしい。それは20年ほどの周期で回っていくらしく、僕が新しいと感じたものもでも親世代では過去に流行ったもの、懐かしいものとして受け取っている。こうしてみると完全オリジナルなんてものはごくわずかなのだろう。
次は生ドーナツ!
やわらかく口の中でとろけるような食感から生という表現が用いられているようだ。
生か~? 納得できないまま購入したが、案の定「なにが生なんだ」と家族から聞かれることに。なんで菓子を買って詰められなきゃならんのだと思い、自室へ戻った。
そんなわけでブームに乗っかるのに飽きた頃、駅でフィナンシェが売られているのを見かけた。
フィナンシェとはフランス起源の伝統的な焼き菓子で……
よほどヨーロッパの菓子を流行らせたいようだ。
その頃にはもう熱意を失いかけていたので嫌なものの見方をしてしまう。
列に近づく僕に心の声が言う。「マドレーヌみたいじゃないかい?」
その瞬間喰ったわけではないが、味の想像がついてしまった。
代わりにどら焼きを買って帰る。ここ最近で一番反応が良かった。
その時、気付く。我が家には海外のハイセンスな菓子よりも和菓子の方があっていることに。
結局、菓子を食っただけになってしまった。普段食べないものを食べる機会になったからいいのかも。
次は何が流行るのか? もう買わないだろうがチェックはしておこう。
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