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猫の後ろをついていく

 職場の猫の話。職場には3匹の猫がいるが、今回の主人公は以前noteに記した、猫語を教えてくれているほうの猫。

 今回は、この好奇心旺盛な猫のことを「スキップ」(仮名)と呼ぶことにする。
 今日、ごみをまとめて捨てにいくと、にゃーあにゃーあと、スキップの鳴き声がした。振り返っても姿がない。どこだ、どこだ?辺りを探すと、垣根の隙間からスキップがこちらを見て鳴いていた。絶え間なく、泣き続ける。しっかりと私を見て鳴いている。わかった、わかったから…と言いながらスキップのところへ行くと、道案内をするかのごとく、スキップが私の半歩先をすすんでいく。私はその後をついていった。

 人通りがほとんどない、日当たりの良い玄関先に到着した。玄関先といってもコンクリートではなく、土の残っている場所だ。地面に伏せたスキップはコロンと寝転んでお腹をみせ、背中を地面にこすりつけるように体をくねらせながらにゃぁにゃぁとしばらく鳴き、こんどはくるっと身を翻して伏せてみせた。
 それから私を見てすまし顔。私はスキップの頭や背を撫でながら、
「これは気持ちよさそうだね。いい場所だね」
 と話しかけると、スキップはふたたびころりと寝転んでお腹をみせ、みゃぁみゃぁ鳴いた。脱力したお腹を両手でさすると、たゆたう。よほど気持ちがいいらしく、目を細め、口をかっぽりと開けて鳴き、手は脱力しきってぷらんぷらん。くーっ、かわいい!少しでも風に揺れる葉が音をたてたり、車が通りすぎる音が聞こえたりすると、サッと伏せて身構えるのが、またかっこいい。
「ここを教えるために連れてきてくれたの?ありがと、ありがと」
 車が行き過ぎるのを体にぐっと力を入れたまま見送り、危険がないとわかるとまた曲線を描く猫の姿に戻った。背中をさすると、私の足元のまわりをぐるぐる回った。

 スキップはゆっくり歩きだした。私も横に並んでゆっくりと歩く。スキップは私を、私はスキップを意識して、どちらかが先にいってしまわないように、ゆっくりゆっくり歩をすすめる。

 みんながいる場所にでた。お客さんがスキップに声をかけると、歩くのをやめて座った。私が撫でようとすると、すっと手をかわして反対方向へ向きなおして座った。お客さんが、
「スキップってツンデレですよね~」と、笑った。
「ほんとうに」
 わたしもにやけてスキップの背中を見た。

 えさやおやつをあげないと、動物はなかなかなついてくれないものだと思っていたが、猫語を習得すると兄か妹くらいには見てくれるようだ。

 スキップ姉貴!その短い尾っぽに、明日からもついていきます!

 

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