ネガティヴ・ケイパビリティについて
箒木蓬生『ネガティヴ・ケイパビリティ-答えの出ない事態に耐える力』を読んだ。
とてもいい本。
めちゃくちゃ良くて2回読んでしまった。
詩人キーツが兄に宛てた手紙にある一文がある。
人って矛盾に耐えられないから何かしらの答えをひねり出す。どっちつかずってのが一番嫌な生き物なんだ。
昔付き合ってた彼女に中途半端が嫌いだ、と言われたことを思い出す(完全にこちらが悪かった)
キーツの生き様は劇的(父母は幼い時に病死、本人は25才で死んでる!)だけど、長生きしていたらどうなっていたのかなと想像する。
たぶん、ゲーテみたいなおっさんになったんだろうな。
ちょっと死ぬのが若すぎた。
実はこの本の主人公はキーツだけじゃない。
精神分析医のビオンもいる。このビオンが精神分析にキーツの「ネガティヴ・ケイパビリティ」を援用した。
本当のところ、ビオンの話はよくわからん。
α要素とβ要素とか言われても他でやってくれとなる。
(ちゃんと読めばそれなりに良いことが書いてあるが体力がなくて読めない)
この本は、人のなんていうか、その人が持っている以上の力はネガティヴなものを転化して生まれることを教えてくれる。
ネガティヴってのは、置かれてる状況だったり自分の感情のことで、それにじっと耐えると、新しい状況や感情が「創造」される。
実際、世の中の出来事ってのは白黒で綺麗に別れてない。何が善で何が悪なのか、すぐには分からないし、下手すれば一生わからないままかもしれん。
それでも、わからなさを抱えたまま、じっとすることの価値はある。大江健三郎がよく言ってた、シモーヌ・ヴェイユの「注意力」みたいなものだ。
注意深く、対象を見つめる。
何か見えてくるんだ。
最後に、キーツの墓石に刻まれた一文を。
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