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③【認知症】でも大丈夫!と思えるかもしれない話(前半)

私は10年前に介護の資格を取得している。
介護士になろうと言う強い志があった訳では無く、たまたま見つけた講習を受けたと言う感じだった。
結局、その後も介護職には着いていない。
ただその講習の中でグループホームに10日間実習に行った経験は、母が認知症になって進行している今、それでも大丈夫だと思えるお守りみたいなものになっている。

前半5日は軽度認知症フロア、後半5日は重度認知症フロアで実習することになった。

初日。はじめましてと挨拶をすると、皆さん快く迎えて入れてくれた。学校の先生をしていた話や、巻き寿司を巻くのが上手だったと言う話などたくさん聞かせてもらった。
次の日、既に皆さんの顔も分かっているし話も聞いているので、前日よりはリラックスした気分でフロアに入ることができた。しかし入ったとたん初対面の空気が流れた。皆さん「はじめまして」の顔をしていた。
理解している。認知症は短期の記憶が無くなると言うことは。講習で散々学んで実習に入っているのだから。でも…こんなにみんな揃いも揃って私の事覚えてないの?!
母が認知症になった今なら理解できる。結局その時はまだ何も理解できていなかった。
その後、会話をするが全て聞いたことのある話。学校の先生をしていた。巻き寿司を上手に巻いていた。
それは次の日も同じ。

4日目から少し違う感情が湧いてきた。そこのフロアにいる方々は、とても楽しそうに毎日同じ話をし、同じところで驚き、同じところで笑っている。これってもしかしたらとても幸せな事じゃないか?
認知症になったら終わりだと言う人もいるけれど、決してそんなことはないと感じた。トイレの失敗や不穏になる時もあるけれど、忘れることに関して言えば、昨日話したことを忘れているなら今日もまた同じ話をすればいい。和やかに笑いあえる場がたくさんあれば、『認知症』は怖くないと思えるのかもしれない。

実習初日〜5日目軽度認知症フロアでの話。

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