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「靴下」漫才の台本

台本を実際に利用してくださるお笑い芸人さん等いましたらご一報ください。

❶「いっち番嫌な事って何?」
❷「え、何だろう」
❷「人に悪口言われるとか?」
❶「いい意見だね」
❷「いい意見?」
❶「悪口言われるともちろん暗い気持ちになるし、言われたことによって自分も少し攻撃的な気持ちになってしまって他人を傷つけてしまうかもしれない。そういう意味では嫌なことかもしれないね。他、何かある?」
❷「夏のプールの授業で顔に鼻くそついてる友達見ること?」
   ❶、若干眉間にしわを寄せる。
❶「いい意見だね。汚いっていうのもあるけど、言った方がいいのか言わない方がいいのかとても迷うし、何をしても友達に嫌な思いをさせそうで怖いよね。他にはある?」
❷「じゃあ、親と乗ってる電車に大声で下ネタ話す男子高校生が乗ってくること?」
   ❶、明らかに不満げな表情。
❶「良い意見だ。ただ、とにかく気まずい経験であるけど自分はそうならないようにしようって思えるから良い学びなのかもしれないね。他はある?」
❷「邪魔してきて休み時間中にトイレ行かせないようにする友達?」
❶「おい、何で「道徳の授業の時に自信満々に的外れな回答されたけど、授業前に「間違いはありません」って言ってる手前、間違ってるとは言えずに何とかその発言を受け止めようとする先生やってる!」ってツッコんでこないんだよ」
❷「え」
❶「それに嫌な事じゃなくて「あるあるネタ」みたいにしてお客さんの注目集めようとすんな」
   ❷、首をかしげる。
   ❶、❷をまねる。
❶「じゃないわ! それにお前、俺が道徳の先生意識してるって分かってて子供目線のあるあるばっかり言ってただろ」
   ❷、てへっという表情。
❶「お客さんもこんな奴を甘やかしてたらいかんのですよ」
❷「おい、お前。いくら自分の思い通りにいかないからって自分の大好きな中日ドラゴンズの往年の名プレイヤー権藤博さんが選手に苦言を呈するときに使う「いかんのですよ」なんていう、スタッフも含めここにいる全員が分からないようななものまねで盛り返そうなんておもっているんじゃないだろうな」
   ❶、悔し笑い。
❶「お前、殺すぞ」
❷「そう、殺すなんてとても嫌な事です。加害者、被害者だけでなく家族や友人みんなが巻き込まれて嫌な気持ちになります。人と人は互いに助け合って生きていくべきなのです」
❶「道徳の先生すんな!」
❷「え」
❶「もう本題に戻さしてくれ」
❷「本題?(小声で)」
❶「そう(かぶせて)。一番嫌なことは何かって話」
❷「ああ、いいけど。で、結局なんなの?」
❶「雨で靴下が濡れること」
❷「え、しょうもな」
❶「いやいや、なめちゃだめよ。靴下濡れてるだけで心が乱れるじゃん。なんかイライラしたりさ。お前も嫌でしょ?」
❷「そんなの新しい靴下買えばいいじゃん」
❶「靴が濡れてるんだからまた濡れるじゃん」
❷「え、待って」
❶「なんだよ」
❷「靴が濡れていれば必然的に靴下が濡れるんだからお前が本当に嫌なのは靴が濡れることなんじゃないの?」
❶「…いや、靴下が濡れること」
   ❷、❶の頭に手を置く。
❷「ドンマイ」
❶「やめろ」
   ❶、振り払う。
   ❷、❶の頭に手を置く。
❷「落ち着けって」
❶「やめろって」
   ❶、振り払う。
   ❷、❶の頭に手を置く。
❷「気を静めよ」
   ❶、振り払う。
❶「頭じゃなくて肩だろ! それに「気を静めよ」って何だよ。他の言葉と系統が違いすぎるだろ!」
❷「はあ」
❶「それに関してはもう、肩よりも頭の方が何かパワーを送ってるみたいでしっくりくるんだよ。ややこしいんじゃボケ!」
   ❷、手を出して「まあまあ」と❷を落ち着かせる。
❷「ママ―、ママー」
❶「それを言うなら「まあまあ」だろ。漫才中にお母さん呼んでどうすんねん」
❷「…なんか芸人のエキス100%みたいなセリフ、マンキンで言っててめちゃくちゃはずいんですけどー」
   ❷、❶の顔を覗き込みながら挑発するように。
❷「え、かかってます? 少しウケがいいからって。ブンブンブンって感じで」
❶「こいつマジで…」
   と言いながら笑う。
❶「お前よく聞けよ。靴が――」
❷「靴の話に戻るんかい(小声で)」
   ❶、笑う。
❶「防水加工されてる靴だったら靴が濡れる心配はない訳だから靴が濡れるのが嫌だってことにはならないだろ!」
   ❶、キメ顔で。
❷「その場合、靴が濡れないわけだから靴下は濡れないわけであって、靴下が濡れるためには靴が濡れることが大前提としてあるので靴が濡れるのが嫌だという主張は正しいと思います」
   ❷、すました顔で❶の方を向き、みつめる。
❶「うっ…うっ…いや、でも――」
❷「それともあれですか。雨の日に靴下だけで外に出てわーいわーい(演技)ってやるってことですか? 子どもならまだしも大人はそんなことしませんよね。100歩譲ってやったとしても家にいる時にやる愚行だと思うので、すぐに靴下を履き替えればよいのではないでしょうか」
   ❷、すました表情で言う。
   ❷、❶に向かってあなたのターンですよという仕草をする。
❶「…で――」
   ❶、キレた表情で❷をにらむ。
❷「それにもっと言ってしまえば何らかの用事があって外出しなけらばならない雨の日が嫌なんじゃないですか?」
❶「サンダル履いて出かける場合があるのでその理論はおかしいと思います(早口で)!」
❷「サンダルということはフォーマルな場所ではないし、暑い季節であることを考慮すると友人や恋人と海やバーベキューに行く場合が想定できますね。あなたはそんな楽しい日に雨が降ることを知って「あー雨か、靴下濡れるの嫌だな。あ!でもサンダルで行くんだから大丈夫じゃん、やったー!(演技)」ってなるってことですか?」
❶「いや、そこまで――」
❷「それは人としてどうなのかと思いますけど」
❶「そんな言う!?」
❷「じゃあ、外出しなければいけない雨の日が嫌だってことでいい?」
❶「うん、まあいいけど。なんかやけに今日イライラしてない?」
❷「ああ、さっき楽屋でお茶こぼしちゃって靴下びちょびちょなんだよね」
   ❶、❷を指差し、おどけた表情。



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