見出し画像

愛の海

ずっと 海のなかを 泳いでいた

それは とても大きくて

やさしさと強さを兼ね備え

限りなく透明で

調和に溢れている

愛の海だった

"あなた" という
 

その海は まるで無重力で

永遠に違和感のない

とっても居心地のよい海で

ずっと泳いでいられるのだ
 

あなたの海を泳いでいるときは

あなたに包まれている気がして

とっても安心する


あなたの海で 溺れそうになっても

まったく 怖くない

むしろ 溺れてしまいたいとさえ思う

溺れて

溶けて

この海なってしまいたいと


でも ときおり 天地がひっくり返り

あなたの海から強制的に出されてしまう時がある

そうすると わたしの身体は 五感を思い出したかのように

ズドーンと重くなる


目の前には 現実が次々と現れ始め

わたしを 狭くて苦しい世界に追いやろうとする


その世界にいると

とたんに あなたの海で泳いでいたことをすっかり忘れ

地面を歩き始めるのだ


足を使って

目で見えるものだけを捉え

耳で聞こえるものだけを聞く

指で触れるものや身体にあたるものだけを在るとし

思考を使って考えることをだけをただこなしていく


そうだった! この世界が わたしの生きている

世界だったんだ! と

強烈な違和感を感じながらも

その世界で 必死に生きようとする


そんな時に限って 溢れてくるのだ

涙が

あなたへの想いが

愛が

そして また 思い出して あなたの海へ帰っていく


いつしか 海が消えて 帰れなくなる時が きてしまうのだろうか

でも そんなこと 考えてても 仕方がない

今を生きよう

今 いたい場所に いよう

今 想いたい人で 私の世界をいっぱいにしよう

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?