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タイの結婚式に招待された体験記 後編

 夕刻のそれらしい時が来て、タイの儀式によくあるパターン・・・いつ始まったのか、誰が参列者なのかも判然としない集まりの中に連れ出された。

 服装は小ザッパリした普段着(?)、音だけの花火が数発轟き、定番の耳をつんざく低音を発する大きな古めかしいスピーカー。ステージではリオのカーニバルかと見間違える様な踊り子が踊っていて、その周囲にはネオン管やスポットライトがいくつも並べられて色とりどりの光を発している。

 多くの人々が集まった村の広場に会場が設置されて、料理と飲み物が提供されドライバーと二人で少し摘まんでいると、新郎の両親が先ほどお会いした大婆を伴って現れた。再び丁寧に参加したお礼を言われている・・・のだろう、多分。周囲の人にも私を紹介してくれているのか、色々話しかけられるがよく分からない。

 暫く混とんとした状況が続いていると、そこに新郎が新婦を伴って登場、周囲の人々にお互いを紹介しながら回ってくる。近づいて来て、親戚だという若者を紹介された。彼は英語を少し喋るので話し相手が出来たのだが、タイの民謡が鳴り響き、踊る人々の人いきれで声がよく聞こえない。

 そんな状態で宴は大盛り上がりで数時間が過ぎた頃、突然明かりが消えた。電気の使い過ぎか、停電したみたいで辺りは真っ暗。月は出ておらず、きれいな星明りだけでは自分の足元もよく見えないが、タイの人々はとても夜目が効くので自然に歩いている。

 話し相手の男性が今夜一泊する家まで連れて行ってくれると言う。街灯も何もない田舎道を普通に歩く後ろ姿を追いかけるのは大変、直ぐに見失ってしまう。漆黒の闇ってこれを言うのか、おっかなびっくり歩を進める。数分でかすかに灯りがついた人家が見えたが、最後の数歩がなかなか到着しない夢の中の様なもどかしさを覚えながらやっと辿り着く。

 ここも停電、灯りは太いローソク一本、そんなうす暗い明かりの横でおじさんが、なんと❢❢ 猟銃の手入れをしている。不測の事態に備えての事なのか? 光の当たり方で顔の陰影が強調されて、なんとも不気味。昔、流行った映画”八つ墓村”の一シーンのような雰囲気。生暖かい周囲の空気が一瞬ヒンヤリした様な気がした。こうして真っ暗なタイの夜が過ぎて行った。



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