個人事業主化が進むプロ野球界とそれを面白いものにする鍵

2023年のオフシーズンは色んな出来事がありましたが、最後に最も話題となったのが、佐々木朗希の契約更改が遅くなったことでした。

どこまで真実が明らかになっているかわかりませんが、2025年のシーズンからメジャーリーグに挑戦したいという意向を示し、許可しないロッテ球団とこじれたというものでした。
真実がわからないので佐々木を非難することはできないし、しませんが、いずれメジャーに行くことはほぼ確実です。
今回のこの騒動の中で良く上がった声が、ロッテ、NPBを踏み台にする自分勝手な奴というような声でした。

佐々木に限らず、メジャーリーグを志す選手は特に投手の中で明らかに多くなっており、選手としての全盛期をメジャーで過ごすために早めにメジャーに行こうと考える人もいると思います。
大谷翔平は2016年にまさに二刀流の活躍をして2018年シーズンからメジャーに行きましたが、NPB時代の最多ホームランは2016年の22本です。
打撃部門に関しては一つもタイトルを取っていません。
それがメジャーで40本超を2回、30本超を1回、ついに2023年は本塁打王を獲得しました。

かつてイチローが7年間も首位打者を連続して取ってようやくメジャーに行ったり、松井秀喜が自分の事を裏切り者とまで言って後ろめたさを醸し出しながらメジャーに行った時とは明らかに時代が変わったと思います。

更に、先日ニュースで見かけましたが、「令和の三冠王」村上宗隆が同じセ・リーグ、巨人不動の4番打者である岡本和真と年越しを一緒に過ごしていたようです。

最近は他球団の選手と一緒に自主トレを行うことも当たり前の風景となりました。
youtubeで星野監督が監督だった時の中日ドラゴンズは他球団の選手と喋ることすら禁止していたということなので、もしあの当時の星野監督がヤクルト、巨人の監督であったら村上、岡本二人の安全は保障できません。

メジャーリーグを夢見たり、他球団の選手と自主トレなど交流を深めることで日本プロ野球選手の個人事業主化はどんどん進んだと思います。
いや、元々プロ野球選手は個人事業主なのである意味これはプロ野球選手という職業を人間がやる以上当たり前の変化なのかもしれません。

特に他球団の選手との交流に関しては、職業として野球をやる以上当たり前の現象だと思います。
当然、WBCやプレミア12、オリンピックなど国際試合が増えて、仲間として他球団の選手と一緒に戦うことが増えたことも影響しているでしょうが、それ以上に自分が試合に出て結果を出せないと生活ができないという面やNPBの先にあるメジャーリーグに行く、そこで活躍するという最終目標のためにはNPBのリーグ戦における敵味方は些細なことなのでしょう。

例えば、巨人のある一人の1軍、2軍当落線上の投手がいたとします。
この選手は1軍に残って試合に出なければ給料も上がらないし、将来的なプロ野球生活も見通しが立ちません。
そうなったときに彼の敵は阪神や中日など巨人以外の11球団の投手や野手ではなく、同じ巨人の投手なのです。

もっと言えば、この選手は移籍した時も考えると巨人を含む12球団の野手は全員敵になる可能性があると考えていいでしょう。
そうなったときに誰と手を組んで力を伸ばすか?
それはやはり他球団の一流選手、もちろん同じポジションの選手ということになるでしょう。(実績がない状態のその選手を相手が自主トレ仲間に受け入れてくれるかは別として)
また、過去の歴史ではボールが飛ぶ、飛ばないという問題で成績が大きく変わっています。
そうなると投手と野手の間にも壁はできると思い、逆に他球団の同じポジションの選手はある意味同じ職種をしている者同士となります。

その後、1軍に定着し、タイトルもとれるようになったその選手はメジャーリーグを志したとします。
そうなるとさらにレベルアップが必要と考えます。
大谷やダルビッシュと接することができればベストですが、それができず国内の選手限定で技術交換をするとなれば、それはやはり他球団の同ポジションの一流選手でしょう。
そこに加えて2,3年に一度国内のトップ選手と力を合わせて他国の代表チームとも試合をします。
そうなれば完全に仲間です。
特に代表戦は負けたものならその戦犯は徹底的に叩かれてしまうので、チーム力を高めるためにもお互いに技術交換を行うことが多いと思います。

同じポジションの選手、しかも他所のチームの選手に自分の技術を伝えたら自分の所属チームの成績や個人成績にもかかわってくると思います。
しかし、その点もかつてと異なり、最大の目標がメジャーリーグで活躍することと定義すると、日本でのタイトル、チーム成績はかつてほどは欲しないのかもしれません。

大谷翔平や佐々木朗希を見ているとNPBを完全に超えた次元にいるのではないかと思います。
特に冒頭も触れた佐々木朗希に関しては、ローテすら守ったことがないと非難されますが、2022年4月10日の完全試合+歴代最多タイの19奪三振を同時に達成したことで沢村賞やその他のタイトルを1試合でとび越えてしまった感があります。
1試合限定ではありますが、あの日の佐々木朗希は歴代の日本人投手で最強だったと言っていいでしょう。
本人がNPBにおいて目標をどう定めているのか、そもそもそれすらないのかわかりませんが、すぐにでもメジャーに行きたい気持ちもわからなくはないです。

ファンから見ると球団を跨いで選手同士が仲良くするのは緊張感がないと映ると思いますが、仮に今の時代に他球団と接するのを禁ずるとそのチームだけ技術の進歩に遅れ、弱体化する恐れがあるのと単純にオフシーズンは球団がタッチできないためそもそも禁ずることができません。
更に、前述の個人の生活が懸かっているという事実もこの流れを加速させていると思うため、今後も球団を跨いだ選手の交流は継続するでしょう。

逆に個人事業主化が進むこのプロ野球を緊張感のある勝負として面白くするのは監督なのかもしれないと感じています。
昨年岡田監督が優勝の事を「アレ」と呼び、逆に優勝をしっかり意識づけたシーズンとなりました。
かつての落合監督や昨年退任した原監督、もっと遡ればミスターこと長嶋茂雄読売巨人軍終身名誉監督のように勝つことに飢えた監督によって緊張感のある勝負事としての面が出てくるのではないかと思っています。


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?