共感的映画論◌映画『ディア・ハンター』(2)
この映画で描かれる「ニック」という人物は、自分が置かれた、当時急速に崩壊へ向かいつつあった南ベトナムの剥き出しになっていく現実の空気を、他にどうしようもないように、そのまま深く呼吸する。
俳優のC・ウォーケンもまた、この人物をそうとしかありえないように鮮烈に演じている。
なにかに踏みとどまりながら、心もとなげに、その危うい歩みを重ねていくような、C・ウォーケンの演技によって、この映画に描かれる<現実>(「ニック」と彼をとりまく)は、おそらく、より身近でリアルな息づかい