データアナリストとは何をしている人なのか

データアナリスト≒ビジネスマンなのか

データアナリストは「分析に責任がある人」ではなく「分析のスキルがある人」で定着している、という話を「データアナリスト」の違和感の正体では書いた。

ところで、データを収集し、分析し、意思決定するというのはだれでも行っている行為である。勘と経験もその人の持っているデータのみを使うというだけで分析だ。つまり「分析のスキルがある人」=ビジネスマンということでもある。ということは、データアナリスト=ビジネスマンとなってしまうがそれではまったく意味をなしていない。

さらに分析していないがデータを扱っているからという理由でデータアナリストを名乗っている場合もある。その結果、ますます「データアナリスト」が何をしているのかわからなくなっている。

そこで今回は「データアナリスト」を名乗っている人が、実際にはどんな仕事をしている人なのかを自分の観察に基づいて見てみる。

「データアナリスト」を名乗っているのはどんな人か

自分が見聞きした範囲で、複数名以上を観測した場合について、思いつくままに書いてみた。

どこかにぴったり当てはまる人もいるだろうが、転職経験があれば会社や状況によっていろいろなパターンを経験することになる人の方が多いのではないだろうか。

  • 「提案」にまで踏み込まないと仕事にならないのでそうしている人

  • 名乗ってはいるが、自分でもあまり何だかわかってなさそうな人

  • 分析と施策をまとめてやることが当たり前だと考えている人

  • インテリジェンスを担っているけれども自覚がない人

  • マーケターやコンサルタントだけれども名乗っている人

  • 「提案」ではなく「データ」の仕事をしている人

  • 分析していると思っているが分析していない人

  • 独りよがりな「提案」を行っている人

「提案」にまで踏み込まないと仕事にならないのでそうしている人

分析と企画がまったく別な仕事であることは承知している。しかし、求められるのは圧倒的に「提案」(実際にはそのあとの実行まで)であり分析だけでは仕事になりづらい。なので、やむを得ず「提案」まで踏みこんでいる人。

その結果、「データアナリスト」だけれども分析が主ではなくなってしまい、職名と業務にギャップがあることは理解しつつもそのままになっている。

名乗ってはいるが、自分でもあまり何だかわかってなさそうな人

「意思決定を支える」ための分析はしている。ただし仕事の責任が「データ」「インテリジェンス」「提案」のどこにあるのかが曖昧。実際の仕事としては「データ」の割合が高くなりがち。良く言えば様々な状況に対応できるユーティリティプレイヤー、悪く言えば中途半端。

分析と施策をまとめてやることが当たり前だと考えている人

「分析だけでは意味がない、施策の実行までリードしなければならない」といった話は以前からある。

さらに、近年の「データ分析」がデジタル、それもWebの領域が中心であり、この領域では分析と施策が近い。そのためこの領域から分析に関わるようになった人にとっては、分析と施策を切り離して考える機会も必要もなかったためにより一層「分析だけでは。。。」という考え方になったのではないだろうか。そしてそれでうまく行っているのであれば違和感を持つこともないだろう。

以前は「データサイエンティスト」や「機械学習エンジニア」を名乗っている人が多かったが、統計学や機械学習を使わない人は最近になってデータアナリストが増えた印象。

「名乗ってはいるが、自分でもあまり何だかわかってなさそうな人」との違いは、「提案」が主で実行にも関わることが多いかどうかで、デジタルマーケターと表現するほうがあってそうならこちらに入る。

インテリジェンスを担っているけれども自覚がない人

「インテリジェンス」を職位としてしている人はほぼいない。それでも仕事の中で「インテリジェンス」の仕事を無自覚に行っている場合がある。

複数の施策があって、そのうちより効果が高い方を実施したい意思決定者がいるとする。「それぞれの施策でどれぐらいの効果が出そうか」という要求に対して分析を行い、それぞれの施策で見込める利益を予測して提供するならば「インテリジェンス」である(ただし、「だからどうするべき」や「このような施策はどうか」というところまで踏み込んだら「提案」)。

当人に認識がないのと仕事のうちに占める割合が低いからだろうか、そこそこにはいそうだがあまり顕在化していない。

マーケターやコンサルタントだけれども名乗っている人

実態としてはマーケターやコンサルタントであるが、意図的に名乗っているらしい人。あるいは以前データアナリストだった人がコンサルタントなどになってもそのまま名乗っている場合もある。

興味の対象が「分析すること」そのもの(考え方、プログラミング、高度な理論、中立性の担保、特定業界や分野の専門知識など)でなく「課題を発見する」とか「課題を解決する」ことならば別枠でとらえたほうが良さそう。

違う名前を使うことで既存の職種とは違うイメージを作ろうとしている、ということなら理解できる。それ以外の理由だったらむしろなぜ名乗っているのか聞いてみたい。

「提案」ではなく「データ」の仕事をしている人

分析が職務とはなっているが、一般にビジネスサイドが「データ」と「インテリジェンス」の区別を知らないため「データ」ばかり要求される。

ここで「「提案」にまで踏み込まないと仕事にならないのでそうしている人」とそうでない人に分かれる。後者は、分析ではなく「データ」を作るデータ整備が仕事の中心になる。データ整備を能動的に選ぶ人もいれば、何となく状況に流される人もいる。

データ整備も大きく分けて2つの方向性がある。

  • データ整備全般+周辺(データマネジメント、法務、セキュリティなど)に広く関わる場合

  • データ抽出(ダッシュボードやレポートも含む)が中心になる場合

筆者の場合、当初は何となく流されていたが、データは扱っているが分析をほとんどしていないことを認識して以来能動的にデータ整備を意識して、「データアナリスト」を名乗るのをやめた。

分析していると思っているが分析していない人

「分析」という言葉の定義自体がまたあいまいなので話がややこしくなりがちだが、少なくとも次のような例は「分析」とは呼ばないのではないか。

  • 予測を伴わないダッシュボードの作成

  • グラフを見て「施策の結果、売上がが〇%上がりました」というようことをレポートにすること

共通しているのは「分析」と称しているものの内容が、事実の羅列であって独自の見解や予測ではないこと。それは分析のための「データ」を抽出しているのであり、分析とはわけて考えたほうがいいのではと思っているのでわけてみた。

独りよがりな「提案」を行っている人

限られたデータだけを使って分析し、「こうするべき」と「提案」はするものの、業界に詳しいわけでもなく会社の優先順位、コスト、リソースなどビジネス上の問題も考慮されていないために役に立たない。

分析と施策が近い場合であれば成立するが、そうでなければ机上の空論でしかない。が、当人は分析しているつもりなので受け入れられないと不満を貯めんでいる。

すいません、いつかの自分のことです。

「データアナリスト」を主語にして話すのはもう無理なのかも

名前が先にあると、名乗りたい人がその定義をどんどんと広げてしまって何を指しているのかわからなくなる、というのはデータサイエンティストでも同じことが起きた。データアナリストは「分析」が中心にないのでより混乱を招きやすいのかもしれない。

ここまで混乱していると、もはや「データアナリスト」を使って会話することも難しいのではないか。なので他の言葉を使おうと思うのだが、そもそも「分析」が中心の職務がほとんど存在しないので「分析者」とかにしてもまたデータアナリストと同じようなことになりそうだ。とはいえ名前が無いと不便なので、次の記事を書くまでにはどうするか考えておく。

普段の仕事においては、職名だけでなく日本語で何をしているのか、何に対して責任を持っている人なのかという視点で話したり聞いたりすることが必要だとつくづく思う。

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