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VUCA時代においてPDCAがダメな理由

VUCAな時代、VUCAな世界とは

VUCAとは、元々は軍事用語で、Volatility・Uncertainty・Complexity・Ambiguityの4つの単語の頭文字から取ったものです。

 つまり、不安定で変化が激しく(Volatility)、先が読めず不確実性が高く(Uncertainty)、 複雑で(Complexity) 曖昧模糊とした(Ambiguity) 世の中ということです。

以下にちょっとだけ詳しく説明します。


Volatility(変動性)

今の世の中も、昔の世の中も変動はしています。

ただし、今はインターネットや情報技術が発展したため、変動するスピードが速くなりました。

下図は、様々なサービスの5000万ユーザーが利用するまでの時間ですが、どんどん速くなっているのがわかります。今年流行ったサービスは来年には廃れているのかもしれません。

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iPhoneスマホがアップル社から発表された時、今のように電車の中のほとんどの人がスマホの画面を見ている時代が来るなんてどれほどの人が想像できたでしょう?

10年前に有望だったビジネスモデルや市場も、全く新しい競合が生まれたことであっという間に成熟化・陳腐化してしまいます。

Uberがタクシー業界を壊し、AirBnBが宿泊業を壊し、Netflixがレンタルビデオを壊し、YouTubeがテレビ業界を壊しています。

新型コロナウィルスの感染者数やそれに伴う社会の変動はとても速かったかもしれません。


Uncertainty(不確実性)

今の世の中で、確実なことはとても少ないのかもしれません。

用意周到に準備したサービスが全く受け入れられず、適当に3日で作ったサービスが大流行するかもしれません。

金融機関に就職すれば人生安泰、大手商社に就職すれば人生安泰、大手自動車会社に就職すれば安泰なんて思って就職していたのはもう昔の話、今はその会社自体のビジネスモデルの存続が不確実になっているのかもしれません。

あれほど欧米で死者を出した新型コロナウィルスは日本にも多くの死亡者数をもたらすかと思いきや実際の結果として、幸いにもそれほど多くの方が亡くなることはなかったのです。日本人の行動変容やロックダウン政策が良かったのかわかりませんが、これは良い方向での不確実性です。


Complexity(複雜性)

YouTube、Netflix、AirBnB、Uber、TikTokが多くの人々に受け入れられていますが、とっても単純な理由なのかもしれませんがとっても複雑な要因がうまく絡みあってうまく行ったのかもしれません。

逆に、テレビ業界、宿泊業、タクシー、レンタルビデオ、映画館などを取り巻くビジネス環境も単純かもしれませんが、とっても複雑な要因があってなかなか変革ができないのかもしれません。

新型コロナウィルスほど複雑性があるものはありません。前述したように欧米と日本の100万人あたりの死者数を比べるととても大きな差があります。なぜ、日本が欧米ほど死者数が増えていないのかという理由として、BCGや生活習慣やマスク着用などがありますが、どれが決定的要因であるかわかりませんが、いずれにしろなぜこれほど新型コロナウィルスが世界中で感染したのかという理由も複雑でしょうし、これほど国によって状況が違うというのも複雑です。


Ambiguity(曖昧性)

曖昧性というのは変動性とも近いと思うのですが、変動性は、パラダイムやモデルの上下左右の揺さぶりが大きいというイメージですが、曖昧性というと「一寸先は闇」みたいなイメージです。これまでの企業の長期計画は10年、中期計画は5年、短期計画は1年というレベルだったと思いますが、今は長期計画は3年、中期計画は1年、短期計画は半年や四半期というレベルまで短くなったと言われています。

プロダクトライフサイクルも短縮化されてあっという間に旬がやってきてピークがやってくるので経営環境やビジネスモデルはあっという間に通用しなくなります。

新型コロナウィルスは、複雑で予測困難で変動性が高いため感染抑制の手段や、地域や国によって異なる状況の原因と解決策はとても曖昧な状況です。このような曖昧な状況では、これが決定打という打ち手も見出しにくいのが現実です。


VUCA時代に必要な行動

新型コロナウィルスは典型的なVUCAな世界が表現されましたし、ビジネスの世界でも複雑で変動性が高く予測困難な時代です。

では、ビジネスパーソンとしてあるいは企業としてどのような行動をとればいいのでしょうか?

僕が考える3つの方法について紹介します。


(1)戦略的であること

戦略とは目的であったり、理念であったり、意図であったり、狙いであったり、リソースの配分であったりします。戦略には様々な定義がありますが、少なくとも具体的な施策である戦術とは違い、戦術を決めるための上位概念であったり、なぜその目標を達成するのかという具体的な行動の起因となる意図だったりします。

つまり、戦略は一度決めたら変えにくいのが特徴です。

変えても良いのですが、毎週変わる戦略は戦略とは言えないかもしれません。

ということは、複雑で変動性が高い予測困難な時代であっても、自分の戦略(目的・理念・、意図・狙い・リソース配分)は変えないという明確で強固な意思が必要だということです。

明確な意志があればVUCAな状況下でも柔軟に対応できるのです。


(2)柔軟性があること

自分の戦略を変えない代わりに、うまく行かなければ変えていいのが具体的戦術です。

つまり、VUCAな状況下では、日替わりで具体的戦術を変更して良いのです。

個人にとっても企業にとっても変わらない、変えないことはとてもリスクの高いことです。

ライバルは常にいて、あるいはライバルと思わなかった企業が急にライバルになることだってあります。

その際に、柔軟に変わるか頑なに変えないかが生死を分けると言っても過言ではありません。

問題は、多くの人、多くの経営者が変わった方が良いと思っているが、実際に変わる行動を起こせないことです。これが大問題! どうすれば変わる行動をとれるかはまたいつかの投稿で(笑)


(3)挑戦すること・試してみること

VUCAな時代において正解はありません。多くの人は正解を欲しがりますが残念ながら正解はないのです。

ということは、色々と試してみることが重要です。

IT業界にはPoC(Proof of Concept)というコンセプト検証をする企業が多いのですが、PoCは何もIT企画やITサービスだけではなく、人材開発、組織変革、マーケティング、リーダーシップという領域においても実施すべきだと思います。

小さな挑戦や小さく試してみることはそれなりにできそうです。

そして、その結果を精査・検証して次に活かせば良いのです。


OODAのすすめ

OODAの前にPDCAについて確認したいと思います。

PDCAとは

PDCAはビジネスパーソンであれば誰もが知っている言葉だと思います。Plam(計画)、Do(行動)、Check(評価)、Action(改善)を組み合わせた言葉ですね。

Plan(計画)とは「目標の設定」、「目標を達成するためのアクションプランの作成」などで、基本的には、誰が(Who)、いつ(When)、どこで(Where)、何を(What)、なぜ(Why)、どのように(How)、いくらで(How much)やるのかということを設定します。

ポイントは具体性があることですね。

Do(実行)は、Planで設定した目標を達成することやアクションプランを実行することです。

次のCheck(評価)にも関係してくるので、実行時には評価できるような進捗や結果を記録することがポイントですね。

Check(評価)は、実行が計画通りにできたかどうかについて評価することです。

計画通りに進まなかった場合は、その原因の分析をしますし、計画通りに進んだ場合も成功要因の分析を行うことで、次のAction改善につなげます。

Action(改善)は、Check(評価)で明らかにした課題の改善点を考えます。改善のポイントは、このまま進める、改善して進める、一旦止める、完全に止めるという選択をすることだと思います。


PDCAは良かったり悪かったり

PDCAは、PDCAサイクルとも言われ「目標を明確にし」、「行動に集中し」、「評価し」、「課題ががわかり」、「また目標を明確にし」というサイクルを回すことが重要で、それがとても良いのですが、よくないのは、このサイクルが遅い場合です。

先述したとおり、現在の世の中は、不安定で変化が激しく、先が読めず不確実性が高く、 複雑で曖昧性が高い世の中なので、PDCAサイクルが四半期レベルで回っているようでは遅いと言われています。

ファーストリテイリングは毎週のPDCAサイクルですし、ヤフーなどは毎日のPDCAサイクルだと言われています。

つまり、早くPDCAを回さなければ時代の変化、市場の変化についていけないということです。

そうなると、課題は、本社や経営幹部などの上層部の判断や計画や検証や改善を待っていると、そこがボトルネックとなって柔軟な対応ができなくなってしまうのです。


OODAとは

OODAもVUCAと同じで米軍において提唱された戦術です。

本国の作戦本部や現地の作戦参謀では現場の状況がつぶさにわからないし、現地の状況は変化が激しく、現地の判断はスピードが求められるので、いちいち上層部の判断を待てないため現場の兵士や指揮官が現場の状況に合わせて適切な対応をするという戦術です。

OODAは、Observe(観察)、Orient(適応・見定め)、Decide(決定)、Act(実行)の英語の頭文字を取ったものですが、前述したとおり、現場の戦況を観察し、その戦況を客観的に見定め、しかるべき決定をして、実行するということです。

※そもそも戦争における戦闘はOODAだった気もするのですが、どのレベルの話かということでもあります。

OODAループ

なぜか、PDCAについてはPDCAサイクルというのに、OODAはOODAループといいます。

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OODAループは、Observe(観察)、Orient(状況判断)、Decide(意思決定)、Act(行動)の頭文字をとったものです。


Observe(観察)

Observeでは、とにかく相手をつぶさに観察します。相手をよく観察してその考え方や行動を知ることが重要です。Seeは見るですが、わざわざObserveと言っているのは「ちゃんと観る」ということが重要だということです。

とぼけた部下に「お前本当に見たのか?」とか「本当に顧客に聞いたのか?」と言いたくなることがありますが、要するにちゃんと相手を観察したのか?と言いたいわけですね。

でも、でも、でも、

当然ながら上長や意思決定者自身が自分で観察を行うことがとっても重要ですよね。

だって部下が「ちゃんと観ました。顧客もそう言っていましたもん!」を信じて判断したら間違うことがあります。実は顧客が言葉ではそう言っていたけど、本音は全くそんな表情をしていなかったことだってあり得ます。

つまり、自分で観察するか、ちゃんと観察できる部下を育てるかの2択です。


Orient(状況判断、方向付け=わかる)

観察して現場のデータが集まったら、判断や方向づけです。Orientフェーズでは、現場データを観て理解すること、わかることに集中します。

集まったデータが何を意味しているのか? その背景には何があるのか? 本当の意味は? などについて考え、状況判断を行います。

つまり、Observeフェーズで得たデータを次のDecideフェーズに役立てるためにちゃんとわかるということです。


Decide(意思決定)
集めた情報をもとに何が起きているのかを理解したら、次はDecideフェーズです。このDecideフェーズでは、理解した状況に対して何をするのかを決定することです。

これはPDCAサイクルでいうところの、Planと同じです。

つまり、5W2Hで計画こと、やることを決めるということです。


Act(実行)
そして最後はActフェーズです。このActフェーズでは、Decideフェーズでで決定したことを実行します。

そして、実行した結果何が起きたのかをまたObserve(観察)するというループに戻ります。

PDCAでいうところの最後のActionと同じです。


PDCAとOODAの違い

PDCAとOODAの大きな違いは、PDCAは自分志向で自分がどうするんだという計画からのスタートなのですが、OODAは相手はどうしたいんだという観察からスタートすることが異なります。

要するに、「現場はどうよ?」「実際、どうよ?」「今はどうよ?」という視点を常に持つことです。

「何もOODAループじゃなくたってPDCAサイクルを早く回せば良いのでは?」と思いがちですが、視点の違いが大きな違いであり、サイクルやループのスピードではないことがポイントです。

・ずーっと観る
・ちゃんと観る
・見るじゃなくて観る
・何かを感じるまで観る

これって、U理論的であったり、GTA的(Ground Theory Approach)だったりしますが、それはまた今度の投稿で(笑)

対してOODAは現場が起点となっているので、柔軟に対応できます。OODAループを高速で繰り返しながら、都度調整を加えていくことができるようになれば、素早く適切な決断を下す能力が高まり、変化に対して臨機応変な対応が可能になるため、結果、現場の問題解決能力が向上する、という仕掛けになっているのです。


ビジネス領域でのOODA

さて、前置きが相当長くなりましたが、VUCAと同じでOODAもビジネス領域で注目され始めました。

なぜなら、VUCAな時代において、いちいち社長や経営陣に現場の状況を報告して指示を待っていてはライバルに勝てないからです。

つまり、

・スピードが遅いPDCAサイクルでは間に合わない
現場を理解せずの計画では結果が出ない

ということです。


現場を知らない社長や経営陣は、与えられた情報では意思決定できないので詳細な情報を求めたり、他部門に意見を求めたり、1ヶ月後の役員会議で検討したり、色々検討した結果、やっぱりもう少し情報を寄越せなんてこともあります。

これでは、ビジネスという戦争に勝てません。

でも、経営者の方は身に覚えがあるような無いような(笑)


まとめ

あなたがそう思わなくても社会はVUCAな世界です。あなたの会社は間違いなくVUCAな時代に存在しています。

そのことをハッキリと認識することが第一です。

次に、戦略を明確にし、柔軟性を持って戦術を変更し、挑戦を恐れないという行動が個人にも企業にも必要です。

OODAは、VUCAな時代を生き抜くための具体的なプロセスとして良策だと思うので、実践してみはいかがでしょうか?


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