母と息子 103『魅惑の魂』第3巻 第2部 第31回
彼女が息子を恋しいと思っていた以上に、息子は彼女を恋しく思っていた。… だが彼がそれを表向きに認めることは一切ないだろう。
彼は彼女と別れることになったとき、自分が彼女から見捨てられたのだと思っていた。その後、学校の宿舎に入れられたことを激怒した。刑務所に入れられた気分だったのだ。閉じ込められた… ここは牢獄だ!… たしかにその通りだった… いつの時代でも学校の宿舎は、少年院でしかなかったからだろう!…
その後の四週間というもの、彼が彼女に手紙を書くことはなかった。彼女は一度、二度、三度と、彼に書いた。最初は母親らしく厳しいものだったが、ひそかに彼の心変わりを願っていた。彼がいまの自分のやり方を変えるなら許してもいいいと、ほのめかしたような言葉を綴っていた… (許す! 彼を許す!… しかし.許さなかったのは彼の方だったのでないだろうか!…)
それでも彼のほうから返事がこないことに、最初は腹立たしく思いもした。だがそれがいつのころからか心配となって、彼女自身を苦しめていた…
そのころマルクは歯を食いしばっていた。アネットは彼がいまどうしているのか気になってシルヴィにに様を調べてもらうように頼んでいた。そしてシルヴィが宿舎の面会室のやってきて母親に返事を書かないことを叱りつけた。マルクのなかにもある変化があったようでもあった。
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