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母と息子 23『魅惑の魂』第3巻第1部 第23回

承前

 そうして戦争が、時計台のハンマーが鐘を鳴らすのように、その鐘を鳴らすためにやってき最初の瞬間だった。アネットにはそれが自分の一部、広大な麻痺した領域が目覚め出しているよう思えたものだった。その第一印象はさらに拡大されることを明らかにしていた。彼女は自分の個人主義の檻に閉じ込められていた。そこから逃げ出した彼女は、硬直した手足を緩めながら思うのだった。孤独の眠りからの彼女の目覚めが始まった。彼女は民衆のなかにいた…
 そこでは彼女は、民衆の様々な動きを感じ取ることができた。その最初の瞬間に彼女が感じ気づいたのは、いつもは閉じられている扉、偉大な魂の扉であるヤヌスの神殿が開き始めていことだった。それはあまりにも幽かなものではあったが!… ヴェールがかかっていない自然、そして隠すことを止めた力… 彼女はそこから何を見るのだろうか? 誰が現れるのだろうか?… それが何であっても、彼女にはすでにそなえができていた、彼女は待っていた、彼女の本来の力を発揮するために。
 *古代ローマにおいてヤヌスの神殿は、戦時に開けられ、平時に閉じられていたとされている。

つづく

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