見出し画像

地域の人とつくりたい。「暮らしに溶け込む」ような宿づくり(信州つなぐラボ第3期 テーマ紹介「観光」)

北陸新幹線佐久平駅から車で30分の緑豊かな望月地区。ここ数年、新しいお店や人が集う場が増えてきました。

2020年4月より佐久市の地域おこし協力隊として活動する渋井貴史さんも、観光に目を向けるプレイヤーのひとり。この冬望月地区で一棟貸しの宿をオープン予定です。

第3期信州つなぐラボでは、「観光」を1つのテーマとして取り扱い、都市と地方が交じることによる、これからの文化の受け継ぎ方を考えます。

今回は渋井さんの取り組みと今抱えている悩みについてお聞きしました。

画像7

話し手:佐久市望月地区地域おこし協力隊・渋井貴史さん 聞き手:藤原 正賢<信州つなぐラボ事務局>)

地域で営む一棟貸しの宿

画像7

渋井さんが活動するのは、望月地区の中心市街地から車で15分、5つの温泉宿が立ち並ぶ春日温泉エリアです。泉質のよい温泉に、乗馬を楽しめる馬事公苑。望月が誇る観光資源の宝庫です。

画像7

渋井さんが手掛ける物件は、馬事公苑の元職員宿舎。
オープンに向け、自らの手で改修(セルフビルド)を進めています。

旅行をする際に、観光スポットや飲食店情報をインターネットで入念に調べる方は多いのではないでしょうか。例え初めて行く場所でも、宿の情報から街の観光情報まで全てインターネットの検索で得られる時代です。

しかし、渋井さんは、事前に情報を集めた予定調和の観光ではなく、住民から生の情報を得られるような観光を目指します。

渋井さん「この宿は一事業者が運営をするのではなく、複数の店や人で営むことを想定しています。例えば、ホテルのフロントの役割を、地元の人が集まるカフェに担ってもらえたらと考えています。職業、年齢問わず様々な方が集うので、『あの場所おすすめだから行ってみたら?』という会話が生まれ、予期しない偶然な出会いが生まれることでしょう」

東京から長野。働き方を変えたきっかけ

取材中も地域の人と近い距離で楽しそうに話す渋井さん。しかし昨年まで望月とは縁もゆかりもありませんでした。神奈川県生まれ、東京都育ちの渋井さんは昨年まで都内の広告代理店に務めていました。どのような経緯で望月と出会い、宿を始めるに至ったのでしょうか。

渋井さん「広告業界に入ったのは父親がきっかけです。父親は元々ケーキ屋を営んでいたのですが、僕が大学生の頃に店を閉めることになったんです。『もっと人に知ってもらえたら店を閉めなくてもよかったのかな?』という悔しい気持ちから、広告の仕組みを勉強するために広告業界を志願しました」

画像7

広告代理店で働き始めて4年経つ頃、渋井さんは仕事に対して違和感を抱き始めました。

渋井さん「大きな企業はやりがいこそありましたが、働いている中で、生産者の思いやストーリーをファッションとして捉えているような場面に出会うことがありました。大変な思いをしてつくりだした広告が、社会にとって本当に大切なものだったのかもわからなくなってしまって……」

自身の働き方を見つめ直そうと思ったタイミングで、ネット上で目にした佐久市の隣にある東御市のパン屋の求人に心を惹かれ、転職を決めました。

地域に根ざし、「暮らし」を伝えたい

長野に来た当初、職場と家の往復でなかなか地域のことを知る機会がなかった渋井さん。しかし、今の活動に繋がる2つの大きな出会いがありました。

まずは、大学の友達経由で知り合った岩下大悟さんとの出会い。岩下さんは、近くの佐久穂町で一棟貸しの宿「山村テラス」を営んでいます。

画像7

素材提供:Sanson Terrace

渋井さん「僕が宿を始めようと思ったのも大悟さんがいたからこそ。3軒の宿を手掛け、運営している宿の先輩です。大悟さんが農家やカフェの店主など近隣の地域で活躍するプレイヤーを紹介してくださったおかげで長野での交友関係が広がりましたし、宿づくりのノウハウから『地域で暮らしていくとはどういうことか』ということまで学ばせていただきました」

そして、岩下さんの紹介で出会った「けんの農醸」の鈴木健之助さんも渋井さんの良き理解者です。

鈴木さんは8年前に横須賀から望月地区に移住し、農業を始めました。現在はズッキーニを栽培したり、酒米づくりをして蔵元に卸す傍ら行政と協力してどぶろくづくりに向けて準備を整えたりと、精力的に活動をしています。

渋井さん「健之助さんは農業に携わり自然と共に暮らしているからこそ、物事に対してとにかくおおらかに構えているんです。きっと、自分でどうにかできる範囲と、自然の流れに委ねるべき領域をよく理解されていらっしゃるのだと思います」

地域で活躍する二人との出会いによって、渋井さんは「地域に根ざす暮らしに主眼を置くようになった」と言います。自分でなにかを生み出したいという気持ちから、パン屋を辞め、佐久市望月地区の地域おこし協力隊としての活動をスタートしました。

画像6

素材提供:滝澤さや香

望月で出会った人とのイベントにも積極的に参加しています

暮らしの息遣いが聞こえる宿を目指してアクションを起こす渋井さん。宿泊を通して、等身大の街の魅力を伝える方法を模索しています。

渋井さん「宿泊者に望月の良さを知ってもらいたいのですが、実はどう観光に繋げていくか具体的なイメージはまだ湧いていないんです……。例えば、農業体験をパッケージ化しただけではこの街や人の魅力はなかなか伝わらないような気がしていて。地域の人達の力も借りつつ、負担にもならない仕組や方法を見つけていきたいですね」

おわりに

画像5

「まずは、自分たちで宿を楽しく作っていくことが大事」

様々な構想を考えているという渋井さんの挑戦はまだ始まったばかりです。

信州つなぐラボでは、渋井さんと一緒に「新たな観光の形」について考え、取組みをつくります。

インターネットで得られる物見遊山的な観光ではない、地域の暮らしに溶け込むような「これからの観光」を一緒につくりませんか?

信州つなぐラボのプログラムに関する詳細はHPをご覧ください。

執筆:ナカノヒトミ
撮影:小林直博

この記事が気に入ったら、サポートをしてみませんか?
気軽にクリエイターの支援と、記事のオススメができます!
信州つなぐラボは、「都会と信州の”つなぐ”をデザインする」をコンセプトに、長野県、県内の自治体やそこに住む地元住民、そして多拠点でのライフスタイルに興味がある都会在住者が、それぞれの視点や知恵を出し合い、都会と信州をつなぐ新規事業を構想し、実証実験するコミュニティです。
コメントを投稿するには、 ログイン または 会員登録 をする必要があります。