アレルギー考・・・「毛穴の汚れを取る」の弊害

2000年代、アトピーや食物アレルギーがものすごく増えた。昔はアトピーは学年に一人か二人いるくらいだったのに、クラスに複数人いるように。食物アレルギーも珍しかったのが、クラスに数人。どうしちゃったの?というくらい増えた。

アトピーは大人になると治ると言われていたのに、大人になって発症する人続出。NHKのアナウンサーでも、アトピーの人が出て珍しく感じなくなるほど。どうしてこんなにもアレルギーが増えてしまったのか?みんな不思議がっていた。

大きな転機になったのは「茶のしずく」石鹸。この石鹸を利用していた人から、ひどいアレルギー症状を示す人が続出した。この石鹸には小麦を原料とした成分が含まれており、この石鹸利用をきっかけに小麦アレルギーになって始末だという人も現れた。
https://www.jpeds.or.jp/modules/guidelines/index.php?content_id=44

この事件で、皮膚にアレルゲンがつくとアレルギーになりやすい、ということが広く知られるようになった。また、アトピーは、皮膚の保護膜をなくすほどにきれいに洗いすぎたときになりやすいことも知られるように。保護膜を失ってアレルゲンに反応しやすくなってしまうため。

そういえば2000年代は「毛穴から汚れを取る」というキーワードが流行した時期。毛穴の汚れをそのままにすると悪い菌が増えて肌に良くないと脅されていた。このため、多くの人が毛穴の中まできれいにする洗顔を心がけていた。思えば、これが皮膚の保護膜を剥がしてしまっていたのだろう。

やがて、皮膚の保護膜を破壊するほど洗顔してはならないということが知られるようになり、むしろ皮膚の常在菌がアレルゲンからほごしてくれているということもわかってきて、「毛穴から汚れを取る」という宣伝文句は影をひそめるように。それと同時に、アトピーや食物アレルギーが減り始めた。

今や、アトピーの人を見ることは少なくなった。小学校の話を聞いても、2000年代にあれだけたくさんいた食物アレルギーの子も、かなり比率が減った(しかし、クラスに一人二人はいる)。
振り返ってみると、「毛穴の汚れを取る」ことがアトピーや食物アレルギーを増やしていたのかもしれない。

この件以来、清潔という概念が更新されたように思う。以前は、体からにじみ出る老廃物は「汚れ」であり、徹底して取り除くことが清潔だと考えられていた。しかし今や、皮膚の常在菌が皮膚の健康を維持してくれており、体からにじみ出るものは単なる老廃物ではなく、保護膜だと知られるようになった。

今では風呂に入っても石鹸を使わずに済ませる人も増えているらしい。湯を浴びれば十分汚れは取れるとのことで。
もちろん、コロナ対策などでは石鹸は有効(ウイルスの殻を破壊する)なので、石鹸を否定する必要はない。ただ、「毛穴の汚れを取る」ほどの過剰な洗浄は考えもの。

清潔も行き過ぎるとアトピーや食物アレルギーの原因になる。ある意味、壮大な人体実験を行うことになったのが、「毛穴の汚れを取る」という国民的流行だったのかもしれない。

追伸
アトピーは実際には増加傾向のようです。
https://medicalnote.jp/contents/190912-001-FM

ということは、見た目にひどいアトピー症状の人が減ったように見えただけで、実際には苦しんでいる人が増えているということに。なぜこんなにも増えているのか?大人になれば治ると言われていた病気が?

東京都の調査によると、子どもの食物アレルギーと喘息に関してはやや減少したとのことです。
https://s.resemom.jp/article/2020/10/23/58717.html

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