壁一面の賞状

うちの子は幼稚園の頃からそろばん塾に通っているのだけど、ある時、息子が「そろばんやめようかな」と言い出した。塾に行けば楽しそうにやってるのに、なぜ?と思った。
ふと、それまで部屋の壁に貼っていたそろばんの合格証を、最近は貼っていなかったことに気がつき、新しいのを貼ってみた。

そしたら、そろばんをやめたいと言わなくなり、再び楽しそうにそろばん塾に通うように。
ああ、これはすまんことをしたなあ、と思った。それまでは合格証をもらってくるたびに親が驚き、喜んで壁に貼っていたのに、壁に貼るためのシールを買い忘れたのをきっかけに、せっかくの合格証を貼らずにいた。

合格証を貼ってほしいならそう言えばいいのに、とチラと思ったけど、思い直した。子どもに言われて仕方なく親が壁に貼る、という、受動的な親を見たいわけではないのだろう。息子が何も言わなくても、親が驚き、喜んでくれることが嬉しいのだろう。

でもしばらく、それがない。せっかく合格証をもらってきても、放置。親が驚かず、喜ばずの姿勢に、残念に思ったのだろう。ああ、これは済まないことをした、と思った。
今は合格証や賞状をもらってきたら、なるべく早く壁にな貼り、一緒に驚き、喜び、鑑賞する。いつか壁一面を一杯にしたいという。

いつか、子どもは親の意向を離れ、一人で動き出す。でも思春期に入るまでの時期、子どもは親に、自分の成長で驚き、喜んでほしい。その役回りを、なるべくサボらずにつとめたい。やがて、親のほめる言葉なんかより、って時期は来るのだから、それまでは。

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