日本人男性はなぜ孤独に陥りやすくなったのか

私も結婚が四十と遅く、生涯独り身を覚悟していたのもあり、記事を読むと、当時のことを思い出す。男性は女性と比べて、見ず知らずの人と仲良くなる術が少ない人が多いように思う。私自身そうだし。そして、これは既婚独身に関わらず、日本の男性に多い傾向のように思う。
https://www.msn.com/.../%E7%8B%AC%E8%BA%AB.../ar-AAZc4NE...

「ためしてガッテン」で、次のような実験が行われた。「出番が来るまでしばらくお待ち下さい」と、男性ばかり数人を同じ部屋で待機してもらう。同じように、女性数人を別の部屋で。そして何が起きるのか観察。女性ばかりの部屋ではさっそくおしゃべりが始まり、どんどん賑やかに。他方、男性部屋は。

「遅いですね」「そうですね」の二言が流れた後、沈黙。気まずい空気と時間がひたすら流れる。

これではいかん、とテコ入れ。

「準備に時間がかかっておりまして、もうしばらくお持ちください。お詫びに、ケーキとコーヒーをお持ちしました」と、スタッフが差し入れ。すると女性部屋では。

さらにケーキをネタにして会話が大盛り上がり。近所のケーキ屋さんから話が始まって、話がどんどん弾む。他方、男性部屋は。

「おいしいですね」「そうですね」二言だけ流れた後は、黙々とケーキを食べ、コーヒーをすすり、腕を組んで黙ってしまう男性陣たち。一向に会話が弾む様子がなく、実験終了。

実はその後出番があるというのはウソで、男性ばかり、女性ばかりを同じ部屋に集めたら何が起きるのかの実験だったとスタッフが種明かし。女性たちは「あらいやだ、私余計なこと言ってないかしら」と、さらにワイワイキャアキャア。男性たちはしてやられた、と苦笑い。でも黙ってる。

では、男性は先天的に一人でいることが好きで、コミュニケーションが不得意かというと、そうは思わない。「東海道中膝栗毛」なんかを読んでも、男性もとても人懐こく、渡舟なんかに乗ったら話が弾む。落語の世界でも、「お国はどちら?」なんてやり取りがすぐ始まり、打ち解ける。

「逝きし日々の面影」なんかを読んでも、人懐こい男性の多いこと、多いこと。もちろん寡黙な人はいるけれど、女性と負けないくらい人懐こく、コミュニケーションに長けた男性が多かったことに気がつく。昔は男性も、多くの人が女性と同様に打ち解けるテクニックを身に着けていたことが窺える。

大きく変化が起きるきっかけになったのは、日露戦争後の鉄拳制裁あたりからではないか。日露戦争では前線から逃亡する兵士が少なくなく、鉄拳制裁でしばき倒すことで上官の命令に絶対従うよう訓練するようになったようだ。殴るという教育的習慣がなかった日本に、「教育的」殴打が始まった。

無駄話をしていたという理由だけで鉄拳食らう理不尽な軍隊体験を男性は戦前、ほぼ全員、経験することになり、そのあたりから「男は無駄話するもんじゃない」という文化が根づき始めたのもそのためかもしれない。比較的寡黙な薩摩藩出身者が、陸軍幹部に多かったのも影響したかもしれない。

戦争が終わり、徴兵制もなくなったけど、「1940年体制」と言われるように、戦後の社会モデルは軍隊を模したものになった。鉄拳制裁的な空気はいろんなところに残っていたし、「男は無駄口叩くな」という文化も、軍隊体験からそのまま引き継いだ可能性がある。それでも下町には、人懐こさが生きていた。

しかし大店法が改正され、郊外型の大型店舗ができると、下町文化を支えてきた商店街や小さな店舗が経営で成り立たなくなり、破綻。皆が勤め人を目指す社会になってしまった。すると、会社の関係でしか人間関係を結べない男性が増えてしまったように思う。

昔の熊さん、八つぁんみたいな軽妙なやり取りをする男性ならではのコミュニケーション技術、人懐こさを、文化として継承する場が失われたことが、男性の孤独を生んでる背景なような気がする。身分の高下に関わらず気さくにやり取りする文化もあったのに、男性世界ではそれが失われてしまった。

「男は女性と違って、無駄話をしてはならない」という「呪い」がどうもある。私は、無駄話はとても大切だと考えている。

YouMeさんが、スッと人と仲良くなる様子を見て、スゴイなあ、と思った。一体どうすればそんなことができるの?と聞いてみたことがある。すると「できるだけ無駄な話題が吉」。

「意味のある話題って、みんな信条とかあったりして、意見が違うとケンカになりかねないじゃない。別にケンカしたいわけじゃなく、仲良くなりたいのが目的なんだから、話題は無駄でくだらないものの方がいいのよ」

私は目からウロコが落ちた。そうか、仲良くなるためには無駄話の方がよいのか!

あなたと仲良くなりたい、でも微妙な話題であなたとケンカになりたくない、ならばなるべくとうでもよい話題の方がよい。肝心なのは「あなたと仲良くなりたい」ということであって、話の中身に意味なんか求めない方がよい、と。

ああ、なるほどなあ!

男は無駄話してはいけない、意味のある話題にしか乗るべきではない、という「呪い」が、多くの男性にかけられているために、自縄自縛に陥っているのかもしれない。無駄ではない話題は信条がぶつかりやすく、ケンカになりがち。それがわかるから、もう話さないでおこう、になってしまうのかも。

まずこの「呪い」を解こう。男が無駄話するの、大いに結構。あなたと仲良くなりたい、というきもちさえあれば、話題は下らなければくだらないほどよい。そしてバカ笑いしたらいい。

それでも高倉健のように寡黙で、あんまり人懐こくなどできない人もいるだろう。同じように皆がなる必要はない。けれど、高倉健の周りには人懐こい人たちがいて、高倉健と程よく距離を置きつつも必要に応じて輪に入れる。そんな緩やかなコミュニケーション技術も取り戻したい。

男もバカ話しよう!無駄話しよう!ちゃんとした話をしなきゃ、なんて呪いは解除しよう!軍国教育の後遺症から、そろそろオサラバしよう!

ビバ!無駄話!

追伸
こうした男性、多そう・・・。やっぱり、独身男性に限らず、男性に多そうなケース。

https://dot.asahi.com/dot/2019042600016.html?page=1

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