会話を盛り上げるコツ

「ためしてガッテン」で面白い実験が。「出番があるまでこの部屋でお待ちください」と、数人の男性ばかり入れられた部屋、女性ばかり入れられた部屋。その中で何が起きるのかを観察。
男性ばかりの部屋では沈黙が続き「遅いですね」「そうですね」と二言がやり取りされたのみで、沈黙が続いた。

他方、女性ばかりの部屋では。「どちらからいらしたの?」とかの問いかけからはじまり、どんどん会話が膨らみ、実ににぎやかに話が盛り上がった。
この様子をモニターで観察したスタッフが、少しテコ入れしようと、ケーキとコーヒーを差し入れることに。「出番までもう少しお待ちください」。

沈黙が続いていた男性側の部屋では。「うまいですね」「そうですね」。その二言がつぶやかれた後、黙々とケーキを食べ、コーヒーを飲み。そのあと、またしても沈黙が続いた。
他方、女性の部屋ではケーキとコーヒーでさらに大盛り上がり。お気に入りのケーキ店の話題とか、さらに会話が盛り上がった。

あとでスタッフから種明かし。男性側の部屋で沈黙が続いていたのをずっとモニターで見られていたことに、男性たちは苦笑い。他方、女性たちは「あら、恥ずかしい」「余計なこと言ってないかしら」とさらにワイワイ。すっかり親しくなっていた。

共同研究の関係で、一部上場の大企業2社と一緒に食事する機会が。大企業の2社から来たそれぞれの担当者(両方とも男性)は初顔合わせ。さすがに社会人経験を積んできたツワモノたちだけあって、会話が途切れることはなかったのだけれど。

「私はかつて何億円の仕事をしたことがあって」「それはすごいですね、私はA社と何十億円の仕事をとりつけた思い出が今も忘れられなくて」「そういえばその会社とはこんな新規のビジネスを立ち上げたことが」ニコニコ笑いながら俺の方がすごい仕事したことがあるぞ合戦。私は横で見ていて楽しかった。

私より少し年上の男性は仕事に誇りを持っていて、かつ、俺の方がすごい仕事しているんだぞ、というマウンティングがすごい。私は何が楽しいのかわからないのだが、そうした人に連れられてスナックとかに行くと、お姉さんたちに俺はすごいんだ自慢していて。話すことって自慢しかないのかな。

年下あるいば部下のそういった場でのお仕事は、自慢話をする上司をヨイショすること。「すごいですねえ」「私にはとても」とへりくだること。これがそういった場でのお約束。いわゆる「さしすせそ」。さすが、知らなかった、すごい、センスいい、そうなんですか。
先輩から後輩へつながれる伝統。

ここ数年、パートを募集すると半分は男性が申し込んでくる。面接で話していると、なぜか「ほんの少し前まではあなたたち側にいて、人を品定めする側だった」と、昔すごかったアピール。
うん、一緒に仕事すると私毎日説教されそうだな、と思った。

男性は長らく、仕事ができることを自己の存在証明みたいに考えるロールモデルを思い描いてきた。特に年配の方はしみついていて、なかなかそこから脱却できない。近年は定年退職前にセミナーを受講するらしく、マウンティングすると嫌われますよ、という教育を徹底されるらしいけれど。

YouMeさんは知らない人ともスッと仲良くなる。コツを聞いてみた。「雑談すればいいのよ」。えー、でも、雑談って中身ないやん。相手も興味があるかどうかわからないし、何話していいかわかんないよ、というと、「中身なくていいの。仲良くなることが目的だから」目からウロコがボロボロ。

YouMeさんによると、中身のある内容になると信条の違いとかの問題が出てきやすく、ケンカになったりマウンティングになったり、面倒なことになりやすい。自分の見識の方がお前より上だ!と証明したくなり、本来の「あなたと仲良くなりたい」という目的が達成できなくなる、という。

「あなたと仲良くなりたい」からこそ中身のない雑談が良いのだという。中身がなければ、こちらも向こうもあまりこだわりがないから、どうでもよい。それでも互いにやり取りしているうちに気心が分かってきて、ああ、この人はこういう人なのか、というのが分かってくる。すると親しくなれるのだという。

中身のない雑談で一向にかまわない、「あなたの声が聞きたい、あなたとずっと話ていたい」という気持ちがあれば、どんなに他愛のない会話でも相手にその気持ちは伝わり、親しくなれる。ああなるほど、女性が他愛もない話をあえてするのは、そういった理由だったのか!

年配男性のロールモデルだと、いかに高尚な話をするか、知的なところを見せるか、いかに自分がデキる人間であることを証明するか、という会話がスタンダードになっている。基本、スナックのお姉ちゃんにする話しぶり。だから、退職し、仕事から離れると、このスタイルの話しぶりは嫌われる。

この話しぶりをずっと続けていられるのは、大会社の会長とか、いつまでも会社の重鎮でいられる人たち。ビジネス誌なんかは、80歳になっても仕事の話をしている人たちでワンサカだから、年配男性は、自分も定年退職してもそんな話ぶりをロールモデルにしてしまいがちなのかもしれない。

私ももう50代になり、定年退職後のことも見据えないとな、という気がしている。いつまでも過去の栄光にすがるのは、確かに目の前の人は「すごいですね」と社交辞令で言ってくれるかもしれないけれど、心に響かないだろうし、何よりその人と仲良くなれない。どうしたら仲良くなれるのだろう?

相手の言うことに驚き、面白がる。これかな、と思う。
これまで学生の相談に乗ってきて、「深い話ができる友人がいない、みんな流行とかファッションとか表面的な話ばかりで、それに合わせるのに疲れる」ということをいう男子学生に何人も会ってきた。わかる。私も若い頃、同じように悩んでいた。

私は今、初対面の人とでも話しているうちに、普通はよどほ親しくてもしないような政治の話とか、子育ての悩み、恋人とのケンカ、社会問題、そうしたディープな話もすんなりできるようになった。それはなぜか。驚き、面白がるからだと思う。

私はその時、自分が話すのではなく、「訊く」。「へえ、それはどういうことですか?」「なるほど、それで思い出したんですけれど、こういう話と組みわせると、どうなりますかね?」と、質問する際に情報を付け加えながら訊き、自分とは異なる考え方に驚き、面白がっている。

一切否定せず、あなたの考え方は面白いなあ、と、新たな発見に驚き、面白がると、どんどん話してくれる。そして、どれだけ話しても否定せず、面白がる私に興味を持ってくれ、今度は私の話を聞きたがってくれる。聞かれたことには簡単に答え、基本、「訊く」に徹する。

すると、仲良くなれるし、深い話もできるのかな、と思う。なので学生さんには、深い話をしたければ、自分の話を聞いてもらおうとするのではなくて、相手の話を「訊いて」ごらん、とアドバイスすることにしている。相手が一方的に話しているようでも、深い話が問いの形でできるようになる。

YouMeさんとその友人との会話を横で聞いていると、まるで暗号。言葉が私からしたら抜けまくっているんだけれど、どうやら心の中で瞬時に補完しているらしく、会話がちゃんと成立している。次々に話題がワープしているのに、ついていっている。私はきょとんとするしかない。

YouMeさんの当意即妙な雑談を、私はまねることができない。けれど、「あなたと仲良くなりたい」こそが雑談の最も重要な目的なら、その目的のところを借りて、私好みの話題になるようにすればよい。それが「驚き、面白がる」これなら、私好みのディープな話題でも仲良くなることができる。

女性であっても、表面的な雑談は苦手、という人は多いらしい。人間にはそれぞれ個性があって、雑談の方が「あなたと仲良くなりたい」という目的を達成しやすい人、ちょっとマジメな会話ができるほうが仲良くなれる、という人、それぞれ。男性にも女性にも、いろんなタイプがいる。

「あなたと仲良くなりたい」「あなたと話していたい」という骨子のところだけ共通すれば、いろんなテクニックがあると思う。私が言語化したのは、YouMeさんタイプの「雑談」と、私好みの「驚き、面白がる」。みなさんはどんなテクをお持ちだろうか。もしございましたら、教えてください。

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