自慢話する人の武装解除

自慢話は若い人に(限らないかもしれないけど)嫌われる。相手への敬意や配慮が欠けてるからだろうか。「俺のすごさがわかったか!俺をあがめろ!奉れ!」という圧を感じ、一方的にサービスを要求するからだろうか。
でもその実、私は自慢話をする人と話すの平気。簡単に武装解除できるから。

自慢話を聞いて一段落ついた頃、次のように話しかける。「そこまでになるには、きっと大変なご苦労があったことでしょう」としみじみ言うと、「そうなんだよ!わかってくれる?」と、居丈高で圧倒しようという鼻息の荒さがなくなり、急に緊張が解け、親しみをもった話し方に変わることが多い。

つらかったこと、苦しかったことをふんふんと聞いていると、本音のところが出てきて、「いやあ、俺も普段は強がってるけど、内心不安でいっぱいでさ」と、今、悩んでることを打ち明けてくれたりする。いつの間にか、カウンセラーになった気分で話を聞くことになることも。

そのほかのテクとして、「実は、前からどっちなんだろう?とわからないでいることがありまして」と、誰もが判断に迷う、難しい話を「相談」の形で持ちかけたりする。人は優しくする方がいいのか、厳しい方がいいのか、みたいな、どっちとも言いにくい話題を出すと、大概、少し考え込んでから話してくれる。

もし簡単に結論出して済ませようとしても「その場合、こんなケースがあって」と、簡単にいかない事例を紹介すると、一緒にウーン、と悩んでくれる。この時には武装解除できてる。相手も自分も同じ地平に立って、一緒に考えるスタイルに変わっている。

就職面接の時、塾で子どもたちを指導していた話をしたところ、面接官が「うちに中学二年の娘がいてね」と。私は「思春期のお嬢さんだと、父親としてはどう距離をとったらよいか、難しいですよね」と労るような声かけをすると、悩みを打ち明けられ、いつの間にか私が相談に乗る形になったことも。

相手の工夫、努力、苦労に驚くことは、ヨロイをまとって「なめんなよ」とファイティングポーズをとってる人の心を、武装解除する力がある。簡単には結論が出ない相談を持ちかけるのも一つ。そうしたテクを知ってると、自慢話ばかりの人でも、九割は武装解除が可能。

ただ、一割弱くらい、武装解除に応じない人がいる。ヨロイを脱ぐのが怖いのだろう。不安なのだろう。「ご苦労があったでしょう」と水を向けても、「いや、俺にとっては簡単だったよ」とマウンティングが終わらない人もいる。こうした症状の人の方が深刻なのだけど、人生には限りがあるので、私は当面その人と付き合わないことに決める。武装解除できそうな時まで待つ。

ヨロイ兜を外せると、人間、本音で話せる。そんな感じの人間関係が増えていけばなあ、と思う。

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