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休職中にやっておいた方がいいことは何か

「休職中にやっておいた方がいいことは何か?」

こんな質問は世の中に存在しないと思う。病気になったのなら、やるのは「休むことだけ」だから。
でも、約2年の休職期間を経て、もうすぐ復職する私なら、「旅」と答える。

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旅 : 住んでいる所を離れて、よその土地を訪ねること。旅行。

デジタル大辞泉(2014年8月更新版)

物理的な距離を移動するのが、「旅」ならば、私が冒頭に書いた「旅」は少々意味が違うかもしれないけど、少し広義に捉えてほしい。

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原因を挙げればキリがないけど、心が休まらなくなって、生活に支障をきたすようになった。いわゆる、心の病。思考はいつも堂々巡りで夢の中まで追いかけてくる。寝ても眠れないから夜になるのが怖かった。

もちろん薬にも助けてもらった。
けれど、私の場合は休んでいても一定の所からは一向に良くならなかった。変わらない現状、動けない自分、どうしていいかわからない毎日。特に「思考の癖」みたいなものが強くて、堂々巡りの思考は私を苦しめた。

そんな時に必要だったのは、自分の思考の癖を把握して、他の考え方があるのを知って、向き合って、行動してみて、失敗して、また向き合って、受け入れて…。そういうことの繰り返しで、少しずつ堂々巡りの思考から離れること。

その中で、「他の考え方があることを知る」というのは、家(住んでいる所)で休んでいてもできないことだった。(私には)
だから「旅」が必要だった。

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人事総務関係やメンタルケア関係の人がみたら、「え?おい!」と突っ込みたくなる部分があると思う。でも、どれも重要な旅だった。

休職している2年間の間にした私の「旅」

1)旅(辞書と同じ意味のいわゆる旅行)
2)自分を知る旅(英会話教室)
3)可能性を探る旅(ライター塾)
4)思考の旅(カウンセリング)

移動を伴う旅は、ロンドンへ一人旅。
日本とロンドンの”当たり前”は違う。そもそも当たり前なんてないかのように感じた。
ミュージカルで高額な席が空いていたら、チケットを持っていなくったって親子で座る。バスの出発が遅れても、受け入れられるまで運転手に何度も主張をくり返す。モネの絵を前に撮影会を始める。(一周回って帰ってきてもまだやっていた)
もちろん、人のことなんて気にしていない。「私はこれが心地いい人なんだ。へー。あの人はそれがいい人んだ。合わないね。」って感じで笑ってる。他人のことも、他人からの目も気にしすぎな自分のことを、ちょっと不思議で可笑しく思えた旅だった。

英会話教室でコミュニケーションを取るのは、自分のことを知る旅になった。
「あなたはどう?私はこう思うけどなんで?」って質問される。まず日本語で考えるけど、日本語でも答えが出ない。好きな小説、映画、場所などと、それを好きな理由。家では復習と予習をするより、聞かれた質問について日本語で考えている時間の方が長かったと思う。別に「なんとなく好き」だって良いんだけれど、考えてみたらちゃんと理由があるものもあって、自分のこと全然知らなかったんだと気づいた。英語が出来ないことより、自分に一番関心を持っていないのは自分だったことにもショックも受けた。

ライター塾やブックライター塾では、「私は限られた社会(村みたいな)に、ずっと住んでいたんだ」と感じる日々だった。普段は出会わない人に出会うことは刺激的で、よその土地は想像以上に違う空気に満ち溢れていた。そもそも会社勤めではない働き方をしている人が多かった。そうすると、現状の自分の立ち位置に対する捉え方も、もちろん違う。会社で決められた評価項目なんてのはないのだから。それに仕事への向き合い方も多種多様、仕事のペースだってそれぞれ。私の住んでいる所にはない考え方が存在していると知ったし、この先やってみたいことが自分にもまだあるんだと可能性を探れた旅になった。

週1回のカウンセリングは、重要な「思考の旅」だけど、振り返るにはまだ早すぎるからそっとしておくことにする。それに、まだまだ続いていく旅だから。常に私の旅に寄り添ってくれたカウンセラーには感謝している。

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ちなみに、「学生のうちにやっておいた方がいいことは何ですか?」という社会人への質問。
トップスリーに入るだろう回答も「旅」だと思う。

社会人になれば、まとまった休みを取ることが難しくなるし、大型連休は移動費も宿泊費も高くつく。そもそも体を休めるのが連休という認識も強くなる。

でも実際には、社会人がいう「旅」っていうのも、わたしのそれと同じで、「移動を伴う旅」よりも広義な意味だと思う。
知らない世界を見ることだったり、日頃の生活には無いことを体験することだったり、違う価値観に触れてみることだったり。

つまり、
辞典でいうところの「住んでいる所」というのは、住んでいる「家」に留まらない。働いている場所や、やり取りをするコミュニティ、所属する業界、更には、疑う余地もない自分の考え、ルーティンとなっている行動。そういったことまで全て含めて「住んでいる所」なんだと思う。
そこから離れてみて、よその土地を訪ねてみる。
追われるように過ぎていく毎日の中で、凝り固まっていく自分を解きたいような、違うエッセンスを欲しがるような、新たな自分を感じてみたい、そんな感覚。
そんなようなものが、「旅」という答えには込められているんだと思う。


心の病は、100人いれば100通りの原因と症状と解決方法がある。だから、この文章は決して誰かの参考になるものじゃない。
それから、休職中に体調を押して旅行をしたり、新しい環境に飛び込んだり、新たなスキルを習得するのがいいんだ、なんて勘違いはしないでほしい。
少し前を向けそうな時に、「住んでいる所を離れて、よその土地を”覗き見する”」ぐらいの旅は休職中にやってみてもいいと思うよって、そんな話。

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