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名曲アルバム⑥舟唄 八代亜紀

大学4年時に部の1年生にいつも笑顔で天真爛漫な女子がいた。何かと「オカザキ先輩、おもしろーい」などと受け応えに困るようなことを言ってきた。大いに焦った。「人生経験豊富でなんでも答えてくれそう」とも。いかん、完全に誤解されている。確かに妄想の中でさまざまな経験をしてきたが実生活では完全なダメ人間である。早く本当のことを知らせて絶望に向かう後輩を救わなくちゃ。「僕はクソみたいな最低人間だよ。」「うん、おもしろーい。」だめだ!本当が伝わらないし、なにより彼女のことを思うと胸がキュンとなってきた。「おもしろーい」が無邪気なのか確信的なのかそこんとこどーなんよ的頭ん中ぐるぐるが始まるともう止まらない。

彼女は熊本出身だった。全くもって勝手に彼女との将来など思い描き、熊本出身すなわち八代亜紀が浮かび、舟唄の世界観でしみじみ呑めばしみじみと的恋模様まで想像した。彼女を勝手に港町の小料理屋の女将にしていた。そんな想像が、今までの常態化した架空の妄想と違い、いつも一緒に練習をする後輩という現実に眩暈がし、彼女を汚す気がして勝手に絶望した。 やがて妻となる彼女との、それはそれは初期のこと。

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