私はこの先を考えている‼ いずれ水素エネルギーの単価は下落し、水素エネルギーだけでは事業継続は難しくなる‼ 水素等の有用化学製品や鉱物を同時に製品化する為に光エネルギーから化学エネルギー変換を可能にするシステムだ‼ ようこそ水素社会の入り口へ‼ 「グリーン水素」をパイプライン供給 仏社創業者に聞く 科学記者の目 編集委員 滝順一 太陽光発電の電力で水素を製造して既存の天然ガスパイプラインで輸送、産業や発電に活用する大規模な「グリーン水素パイプライン計画」が欧州で始まろうとしている。

2050年までに脱炭素を目指す欧州連合(EU)の長期目標に沿う。計画のまとめ役を担う仏ソラドベント社(本社パリ)の創業者、ティエリー・ルペック氏に計画の内容や背景を聞いた。 ――どのような計画ですか。 「天然ガスパイプラインを管理・運営するガスTSO(系統運用者)からの依頼で、競争力のあるグリーン水素の生産、輸送、消費の大規模な企業コンソーシアムを結成している。スペインに60万キロワット級の電解工場を建て、太陽光発電の電力で水素を製造する。これをTSOが保有する既存のパイプラインで消費地に運ぶ。ユーザーは化学や肥料、鉄鋼などの工場、発電所、工業用熱生産だ。天然ガスと石炭を代替する」 「最初のプラントはいずれ100万キロワット級に拡張する計画だ。重要なのは液化天然ガス(LNG)に対抗できる競争力を持てるかだ。そのために早期の大規模化を狙う。50年までに100万Btu(Btuは英国熱量単位)あたり7.5ドルを目指す。スペインに続いて、欧州とパイプラインがつながるアルジェリアやチュニジアでの太陽光発電による水素製造を視野に入れている」 ――なぜまずスペインなのか。 「スペインは固定価格買い取り制度(FIT)で太陽光発電が急増した後、制度廃止などで停滞していた。しかし太陽光発電のコストが十分に下がったため再び建設ブームが始まっている。ただ問題は電力網が満杯で、発電事業者に系統接続の権利があっても容易につなげない。余裕のある電力で水を電気分解し水素をつくることによって、太陽光発電の変動性を解消し電力系統の安定運用に資することが可能になる」 ――天然ガスパイプラインに水素を流すにはパイプラインの改修が必要になるのでは。 「送ガス網への設備投資については、この1年でTSO自身の認識に大きな変化があった。かつては天然ガスに数%の水素を混ぜたものしか送れないと主張していたが、既存の設備で天然ガスとのブレンドでも100%水素でも輸送可能だと考えを変えた。コンプレッサーなど一部設備は改修が必要だが、パイプラインを作り直す必要はない」 川崎重工業は19年末に世界初の液化水素運搬船を進水させた 川崎重工業は19年末に世界初の液化水素運搬船を進水させた ――見方が変わったのはなぜ。 「生き残りだ。欧州は脱炭素に向けて動いている。TSOはガスの生産と消費を結ぶ『中流』の事業だが、天然ガスの供給も消費が減っていく。パイプラインが座礁資産になっていく。グリーン水素の輸送を担うことで資産価値を復活させ、雇用も維持したいと、TSOの経営者たちは考えた。グリーンなエネルギーを望む顧客が増え、その要望に応えることが生き残るために不可欠だと判断したのだ」 ――コンソーシアムに参加する企業は。 「スペインのエナガス、イタリアのスナム、フランスのGRTガスとテレガ、ドイツのOGE、ベルギーのフラクシス、オランダのガスユニなどのTSOが中心だ。これらのTSOは『ガス・フォー・クライメット』という団体を組織している。ほかに電解装置のメーカーや太陽光発電のデベロッパーなどが参画する。欧州投資銀行(EIB)やほかの投資銀行、投資家からも私たちの計画は支持されている」 ――実質的に二酸化炭素(CO2)排出をゼロにする気候中立(カーボン・ニュートラル)を掲げるEUの取り組みは非常に野心的と言えるが、達成可能か。 「達成できなければ私たちは非常に困った状況に陥る。前向きに考え、どう達成するかという問いを発すべきだ。欧州の目標が野心的に過ぎ、達成できなかったことは過去にもある。目標や規制は大事だが、起業家や投資家が動かなければ脱炭素への移行は困難だ。世界最大規模の機関投資家であるノルウェー政府年金基金はエナガスの大株主だが、グリーン水素に強い関心をもつ。世界有数の資産運用会社であるブラックロックなどもそうだ。いま投資家が動き始めている」   ■取材を終えて  ルペックさんに会うのは2年ぶり。以前にインタビューしたときは仏大手電力エンジーの副社長だった。グリーン水素のためベンチャーに転じた。  グリーン水素のプロジェクトは日本でもいくつかある。川崎重工業はオーストラリアの褐炭ガス化でもたらされる水素を日本に運ぶサプライチェーンを構想、液化水素タンカーを建造している。東京ガスは自然エネルギーの電力でつくった水素をアンモニアにして日本に運び発電などに使う計画を公表している。また千代田化工建設などはブルネイで調達した水素をメチルシクロヘキサンという化学物質に反応させ液体にして運び、消費地で水素に分離するというシステムを提案し実証に挑む。日本政府もこうした取り組みをバックアップしている。

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