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トランプ氏、米最高裁判事に保守派女性の指名強行へ トランプ米大統領は26日、連邦最高裁判所の判事を指名する。野党・民主党が11月の大統領選の勝者に委ねるべきだと求めていたが強行する。承認には与党・共和党が過半を占める上院で過半数の賛成を得ればいい。かつては6割の賛成が必要で超党派合意がカギを握っていた人事だが、2017年の上院による規則改正で党利党略がむき出しになりやすくなった。

複数の米メディアは25日、トランプ氏が18日に死去したリベラル派のルース・ギンズバーグ最高裁判事の後任に、第二審の連邦控訴裁判事を務めるエイミー・バレット氏(48)を起用すると報じた。人工妊娠中絶に否定的なことで知られる保守派の女性だ。 トランプ氏はギンズバーグ氏の後任をバレット氏を含む女性5人の中から選ぶ考えを示していた。バレット氏は大統領選の激戦州の多い中西部を拠点とする。指名には保守派有権者の支持固めを狙う姿勢が映る。 最高裁の判断は妊娠中絶や銃規制など米社会を二分する問題に与える影響が大きい。終身制の最高裁判事は20~30年の長期にわたって務める人も多く、国民の注目度は高い。民主党上院トップのシューマー院内総務は「報じられている候補は全く受け入れられない」と強く反発している。 最高裁判事は大統領が指名し、上院(定数100)のうち51の賛成票を得ると承認される。以前は賛成60票が必要だったが、与党・共和党が多数派を占める17年にトランプ氏が指名した別の保守派判事を承認するために基準を下げた。これにより多数派を占める政党が数の論理で強行採決を行い、判事を承認できるようになった。 承認に60票が必要だった時代は超党派での合意形成が不可欠だった。レーガン元大統領は指名した保守派判事の承認を上院に否決された。野党の合意が得られなかったからだ。 身内の共和党からも「論争を呼ぶ候補は指名しないでほしい」との声があがり、その後に指名したのが中道派のアンソニー・ケネディ氏だった。同氏は案件に応じて保守派とリベラル派に賛成票を投じる「スイング・ボーター」の役割を担い、最高裁の判断のバランスを保った。 共和党だけを一方的に責めることもできない。民主党も上院の多数派を握っていた13年、控訴裁判事の承認に必要な賛成票を60から51に下げた過去がある。当時は民主党の議席が60に満たず、オバマ前大統領が指名する判事候補を共和党がことごとく拒否した。承認の停滞を解消するために禁じ手だった承認ルールの改正に踏み切った。 今回の人事で保守派判事が承認されれば、最高裁判事9人の構成は保守派が6人、リベラル派が3人となる。民主党内では保守派の支配を薄めるため、判事の定員拡大を求める声があがる。11月の大統領選の民主党候補のバイデン前副大統領は党内の結束を優先し、こうした極論への賛否に言及を避けている。 場当たり的な対応を繰り返してきた米議会に対し、国民の不満は募るばかりだ。米調査会社ギャラップによると、議会の支持率は8月時点で21%にとどまり、トランプ氏(42%)を大きく下回る。既存政治を敵視するトランプ氏の台頭を招き、議会でも急進的な左派や右派の政治家が躍進する理由にもなっている。

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