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#中国揺らぐ価格統制高まる転嫁圧力企業競争力に影 #卸売物価10パーセント越え上昇過去最大 中国の電力不足が素材高に拍車をかけている。9月の卸売物価指数は過去最大の伸びを記録した。政府は電力生産を増やすため、値上げを容認した。

資源高で企業のコストは一段と膨らみ、価格転嫁の圧力は強まる。政府は価格統制で小売価格の上昇を抑え込んできたが、政府が市場に介入する手法が揺らいでいる。 中国国家統計局が14日発表した9月の卸売物価指数は前年同月比10.7%上昇した。統計が遡れる1996年10月以来、最大となった。伸び率は8月から1.2ポイント拡大した。 卸売物価指数の上昇に拍車をかけたのが国内の電力制限だ。石炭価格の上昇などで採算が悪化した発電会社が発電を渋った影響が大きい。政府は住民生活にかかわる領域への電力供給を優先。エネルギー消費量が多い鉄鋼やセメントへの供給制限を続ける。生産が減り、供給不足から価格が跳ね上がっている。 中国の鉄鋼業界団体によると、大手企業の1日当たりの粗鋼生産量は9月下旬で前年同期比19%減、10月上旬は同14%減と2ケタの落ち込みが続く。鉄鋼関連の情報サイトによると、中国宝武鋼鉄集団など製鉄会社43社が9月から10月にかけて点検の名目で一部工場の生産を止める。 この結果、9月末の鋼材価格は前月末より6%高まった。前年同月と比べると51%の大幅上昇だ。10月も値上がりの傾向が続く。 セメントでは大手の広東塔牌集団が電力制限の影響を織り込んで、21年の生産目標を従来より12%低い水準に引き下げた。9月のセメント生産は低調とみられ、9月末の平均価格は1年前と比べ2割上昇したという。一段の素材高は、今後の景気の下支え役として期待されるインフラ投資にも影を落とす。 政府は電力不足の緩和に動き出した。温暖化対策として石炭生産を制限してきたが、主産地の内モンゴル自治区政府が石炭の増産を指示。15日からは、石炭火力発電の電気料金の引き上げ幅を最大20%まで容認する。事業者向け電力の値上げで、発電会社の収益悪化を食い止め、発電を促す。 気温が下がる冬場は電力需要が膨らむ。昨年12月も厳冬で電力需給が逼迫し、浙江省や湖南省では使用を制限する動きが出た。国家発展改革委員会の趙辰昕秘書長は、家庭向け供給を優先する考えを示し「必要なら家庭部門以外は制限する」と述べた。電力需給が継続的に安定するかはなお見通せない。 電力需給が緩んでも、電気の値上げを通じた企業のコスト上昇は避けられない。製品価格への転嫁圧力は強まる一方だが、国内市場での価格転嫁は進んでいない。 9月の消費者物価指数(CPI)は前年同月比上昇率が0.7%と、4カ月連続で鈍化した。豚肉が5割近く下がった影響が大きいが、主要国の中央銀行が物価の趨勢を見極めるうえで重視する「食品とエネルギーを除くコア指数」も1.2%の上昇にとどまった。 原材料高の小売価格への波及が小さい理由の一つが、政府による価格統制だ。「不法な値上げの手掛かりをしらみつぶしに調べる」。原材料の高騰が目立ち始めた6月、価格上昇に厳しい目を向ける姿勢を示した。 価格転嫁の遅れは、雇用や所得の回復が鈍く、過当競争が続く中小零細企業が値上げに踏み切れないという事情もある。ただ政府による市場への介入で中小零細企業の収益は悪化が続く。 収益悪化は雇用や投資に響いている。都市部の新規雇用は今なお新型コロナウイルス禍前の水準に戻らない。1~8月の設備投資は、前年同期より1割超落ち込んだ20年同時期をさらに1.4%下回る。価格統制は市場のゆがみを生むだけでなく、中国の景気回復の足を引っ張りかねない。 輸出企業は国内市場での収益悪化を補うかのように、家電など一部の海外向け製品で価格の引き上げを進めている。値上げが海外製品に偏れば、将来的に中国企業の国際競争力にも影を落とす。

#日経COMEMO #NIKKEI

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