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中東でイラン圧力一段と バーレーンもイスラエルと国交 バーレーンが11日、イスラエルとの国交正常化合意でアラブ首長国連邦(UAE)に追随したことで、イランへの圧力は一段と強まる。米国の仲介でわずか1カ月のうちに、アラブの2カ国が長く対立してきたイスラエルとの国交樹立を決めた。

イランへの警戒を背景に変化した中東の対立構図を映し出している。 バーレーンは人口150万人ほどの産油国で、隣のサウジアラビアの影響が強い。米第5艦隊が司令部を置くバーレーンは米との軍事的なつながりも強い。指導層はイスラム教スンニ派だが、住民の多数はイランと同じシーア派だ。今回の選択でイランへの対抗姿勢が強まるが、スンニ派主体のUAEとは異なる難しさもある。 イランと対立するスンニ派の大国サウジは、今回のバーレーンの動きについて公に言及していない。パレスチナ問題を棚上げにしてイスラエルと国交を正常化する考えはないとの立場をかねて示している。UAEなどの外交とは一線を画す姿勢だが、9月に入りイスラエルとUAE間の航空便が自国上空を通過するのを認めた。 イスラエルのネタニヤフ首相は11日の声明で「他のアラブ国家との和平合意締結に興奮している」と歓迎した。バーレーンのザヤニ外相は、パレスチナとイスラエルの対立を終わらせる「戦略的な選択」だとする声明を出し、パレスチナに配慮する姿勢もみせた。 パレスチナ自治政府は今回の合意に「拒否し非難する」と猛反発した。イラン外務省もバーレーン指導部を非難する声明を出した。アラブ諸国はパレスチナ問題でイスラエルと長く対立し、正式な国交を持つのはこれまでエジプトとヨルダンだけだった。 8月以降、UAE、バーレーンと立て続けにイスラエルとの国交正常化がアラブ諸国で相次ぐのは、トランプ米大統領が11月の大統領選をにらんで中東和平に向けた仲介外交で成果を示そうと急いでいるためだ。次はオマーンなどが追随するとの観測がある。 「いま中東で起きていることは誰も考えつかなかったことだ」。トランプ氏は11日、ホワイトハウスで記者団に対し、イスラエルとバーレーンの国交正常化合意を仲介した手腕を自賛した。 仲介外交の念頭にあるのは大統領再選だ。トランプ氏の支持基盤のキリスト教福音派は、キリストが再臨する前にユダヤ人国家が樹立・維持されているべきだと考える。 1948年の建国からアラブ諸国と戦火の歴史を繰り返してきたイスラエルの安全保障の確立には中東和平が欠かせない。そこでの貢献をアピールすれば、トランプ氏に対する福音派の求心力を高め、大統領再選へプラス材料になる。 米政権が敵国とみなすイランに対する包囲網の構築に向けてもイスラエルとアラブの接近は追い風となる。中東地域でのイラン包囲網は中長期的には駐留米軍の縮小につながる可能性があり、「米国第一」の外交方針を掲げるトランプ氏の主張に沿う。一方でイランやパレスチナの反発で、中東情勢の緊張がむしろ高まるとの見方も目立つ。 トランプ氏はアフガニスタンでも和平仲介を進め、12日にアフガン政府と同国の反政府武装勢力タリバンの直接対話が始まった。9月上旬には旧ユーゴスラビアのセルビアとコソボの経済関係の正常化を仲介し、外交関係の改善に向けたきっかけをつくり、外交政策の成果を急ぐ。 

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