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キリンHD、豪乳飲料事業の売却中止 豪中摩擦が影響か キリンホールディングス(HD)は25日、オーストラリアの乳飲料事業の売却を中止したと発表した。2019年秋に中国蒙牛乳業に売却することで合意していたが、豪政府が蒙牛乳業による買収に難色を示していた。

豪州と中国の関係悪化が一因との指摘がある。 キリンHDは19年11月、豪国内で乳製品や飲料を手がけるライオン飲料を蒙牛乳業に6億豪ドル(約460億円)で売却する契約を結んでいた。 20年2月に公正取引委員会にあたる豪競争・消費者委員会の承認は下りていたが、フライデンバーグ財務相は25日の声明で、蒙牛乳業に対し、買収が「国益に反する」との見方を伝えていたことを明らかにした。キリンHDと蒙牛乳業は両社で協議し、今後も政府の許可が得られないと判断した。 要因の一つとみられるのが、豪中関係の悪化だ。豪州ではチャイナマネーの流入への警戒感が広まり、今年3月に海外からの全投資案件を審査すると決定。6月には安全保障に関わる事業への投資についても、規制を強化する方針を決めている。 一方、中国側は5月以降、豪州からの一部食肉の輸入を止めたほか大麦に追加関税を課している。8月には豪産ワインに関して反ダンピング(不当廉売)調査に着手したと発表しており、両国間で政治的な緊張が高まっていた。 キリンHDは海外の低収益事業を再編するため、18年10月にライオン飲料を売却する方針を決定。19年10月にライオン飲料のチーズ事業をカナダの乳飲料大手サプートに約224億円で売却していた。 キリンHDにとってライオン飲料の事業売却は、海外の低収益事業の整理が一段落することを意味していただけに、契約解除は痛手になる。キリンHDは事業を継続しながら、新たな売却先を検討する可能性もあるという。 ライオン飲料の20年12月期の売上高は前期比10%減の15億豪ドル、事業利益は83%減の400万豪ドルの見通し。新型コロナウイルスの影響で販売量が落ち込んでいる。 一方、蒙牛乳業の広報担当者は25日、「蒙牛とライオン飲料は連携し発展する潜在力があった。買収協議の終了は遺憾だ。引き続き、海外での成長戦略を強化する」と話した。 電子版の

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