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楽天、規約巡り新たな火種 違約金・手数料に賛否 ネット通販「楽天市場」の一部出店者で構成する任意団体「楽天ユニオン」は18日、楽天が出店者に課す違約金制度などが独占禁止法違反(優越的地位の乱用)だとして、公正取引委員会に排除措置命令を求めた。楽天に送料の無料化に続く新たな火種が加わる。

公取委の判断によっては、運営モデルの見直しを迫られる可能性もある。 「オンラインショッピングモールの出店者全体に影響のある問題だ」 300店超が参加する楽天ユニオンは18日、東京都内で記者会見し、顧問の川上資人弁護士が公取委に排除措置命令を求めた理由をこう説明した。楽天市場が2016~19年に実施した「違反点数制度」「成果型広告手数料の引き上げ」「決済システムの利用料の引き上げ」の3つの規約変更について、楽天に撤回するよう求める。 ■300万円支払いも 違反点数制度はブランド模造品の出品や商標権の侵害など、1年間の違反行為を点数で加算し、一定レベルで違約金、営業停止などの処分がある。サイトの違反行為を減らす目的だが、最大300万円の違約金の支払いを求められる場合がある。川上弁護士によると、強制的に楽天の利益になる内容もあるという。 楽天ユニオンは「アフィリエイト」と呼ばれる成果報酬型のネット広告の手数料、決済システムの利用料の過去の引き上げについても問題視する。広告手数料の変更で、「ある出店者は手数料が2倍以上に増えて負担が増した」(楽天ユニオン幹部)との指摘もある。 ■決済利用負担に これに対し、楽天は16年に導入した違反点数制度について「偽ブランド品の販売、商標権の侵害などの悪質な行為が減らなかった。消費者を守り、利便性を高めるため」と主張する。制度の導入後、違反行為は7割減ったという。ブロガーなどへの広告手数料の引き上げも「競争が激しくなり、集客力を上げるために必要」としている。 楽天は同日、「規約や利用料の変更について、出店者が十分に対応できるよう相当な告知期間を設けて周知と説明をしている。法令順守に努めている」とコメントした。だが楽天ユニオン顧問の川上弁護士は「違反点数制度では16年当時、出店規約に一切の条文がないまま導入された」と違法性を主張する。 楽天の施策を巡っては、出店者でも賛否が割れている。約300店が参加し、楽天との対話を重視する「楽天市場出店者 友の会」の幹部は「真面目に店舗を運営すれば、違反に引っかからない。ネットビジネスの変化は速く、ルール変更は必要だ」と理解を示す。 楽天ユニオン、友の会のいずれも参加店舗数は全体の1%に満たない。大半の店舗は「相次ぐ規約変更への不満はある。だが集客力は大手EC(電子商取引)サイトでは高く支援策も多い」(関東の出店者)と現時点では静観する向きがある。 独禁法に詳しい川島佑介弁護士は「違反点数制度はきちんと運営すれば、不利益が課されない。事前の協議や合理性がポイントになるが、送料問題よりも立証のハードルは高いのでは」と慎重な見方を示していた。 楽天は昨夏、3980円以上の購入で一律で送料を無料にする方針を示した。その後、楽天ユニオンが公取委に是正を求めた。楽天は3月に一律の導入を延期し公取委の調査はなお続いている。 送料問題が迷走するなか、昨年12月末から今年3月末にかけては楽天市場の店舗数が伸び悩む場面があった。米アマゾン・ドット・コムに対抗するため、物流投資がかさみ、20年4~6月期の国内EC事業は減益となり苦戦する。足元は新型コロナの影響で店舗数は増えているが、公取委の判断で送料や手数料収入などのルールの見直しを迫られれば、業績には逆風になる。 来春をめどにプラットフォーマーと呼ばれる巨大IT企業に対し、取引先や利用者から不当な利益を搾取しないようにする新法も施行される見通しだ。規制強化の流れを受け、楽天ユニオンは年内にも協同組合に移行し、アマゾンやヤフーなどEC業界全体の出店者の受け皿として「プラットフォーマーと対談できる組織にする」(幹部)。 九州地方のある事業者は「アマゾンに対しても配送や在庫管理の代行サービスの価格について不満がある」と話す。楽天市場を巡る今回の問題は、他のネット通販にも影響を及ぼす可能性もある。

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