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ユーロ圏GDP40%減、4~6月年率 過去最悪 欧州連合(EU)統計局が31日発表した2020年4~6月期のユーロ圏の域内総生産(GDP)速報値は物価変動を除いた実質で前期比12.1%減った。年率換算では40.3%減と、1~3月期に続いて過去最悪を更新した。新型コロナウイルスの感染拡大で経済活動が大きく鈍った。 欧州各国は新型コロナの感染拡大を受けて、3月ごろから厳しい規制を導入した。

店舗の営業停止や移動の制限の影響が統計の数値に表れた。国別ではスペインやイタリアなど南欧の落ち込みが大きい。新型コロナの打撃は製造業よりも、観光などサービス業の方が大きいからだ。 コロナ死者数が多い南欧の2カ国をみると、イタリアのGDPは前期比12.4%減、スペインは同18.5%減だった。ユーロ圏2位の経済規模を持つフランスは同13.8%減。30日発表されたドイツの同10.1%減に比べると下げ幅が大きい。ユーロ圏全体だけでなく、31日までに発表したすべての加盟国で2四半期連続のマイナス成長となり、定義上の景気後退に入った。 各国は外出などの制限を5月から徐々に緩和し、経済は再び動き始めている。IHSマークイットによると、ユーロ圏の総合購買担当者景気指数(PMI)は7月に約2年ぶりの高水準となり、景況感は感染拡大前の水準を取り戻した。製造業、サービス業ともに節目の50を超え、企業活動がおおむね順調に再開されていることを示唆した。財政出動や欧州中央銀行(ECB)の金融緩和の効果も景気を支える。 オランダのING銀行の予測によると、7~9月期は年率換算47%増となる。ただ4~6月期の落ち込みの反動という面が大きく、前年同期と比べると7~9月期は7.3%減となる。それでも景気の持続性には3つの不安材料がくすぶる。 第1が感染再拡大だ。 スペインやドイツでは感染者数が増えつつあり、第2波への警戒感は強い。イタリアは感染拡大の懸念があるとして非常事態宣言を10月まで延長した。 「状況をコントロールするために我々は再び行動する」。ベルギーのウィルメス首相は27日、公共イベントに参加できる人数の上限を半分にするなどの措置を発表した。同国の新型コロナ感染者数は7月26日までの1週間で2470人と6月下旬の週の約600人から急増しており、制限の再強化に動いた。ベルギーのように各国が制限措置を再強化すれば経済活動は冷え込む。 第2の不安は雇用だ。6月のユーロ圏の失業率は7.8%。米国と比べて低いのは、雇用支援の政策効果が大きい。ただこうした支援策は時限措置だ。クルツアルバイト(時短勤務)と呼ばれるドイツの時短勤務者への所得補償制度は12月で期限が切れる。業績悪化が深刻な企業は採用に及び腰で、失業増加は社会不安にもつながりかねない。 中長期では財政悪化が懸念材料だ。景気の下支えを目的に積極的な財政出動に打って出た結果、政府債務は膨張している。EU統計局によると、1~3月のユーロ圏の公的債務はGDP比で9割近い。欧州委員会によると、20年通年では102.7%に膨らむ見通しだ。特に南欧は財政状況がもともと悪いところに新型コロナの感染が広がった。財政悪化を放置すれば再び債務危機を呼び起こしかねず、「どのタイミングで財政健全化に動くかが重要」(欧州証券)との声が多い。

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