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テレワーク関連企業に追い風 Zoomの売上高4.6倍 新型コロナウイルスの影響が長引くなか、在宅勤務を支える企業の躍進が目立っている。ビデオ会議「Zoom」の運営会社が31日に発表した2020年5~7月期の売上高は前年同期比4.6倍に拡大した。

他のクラウド企業の業績も底堅く、コロナ後もテレワークが定着するとの見方が株価を支える。 米ズーム・ビデオ・コミュニケーションズが5~7月期の決算を公表すると、31日の時間外取引で株価は一時25%上昇した。 株式市場が驚いたのは6億6352万ドル(約700億円)に膨らんだ売上高だ。前年同期の4.6倍で、2~4月期と比べても2倍を超える。売り上げ拡大に伴い、純利益も前年同期比34倍の1億8574万ドルに急増した。21年1月期通期の売上高予想も、23億7000万~23億9000万ドルと従来予想から約3割引き上げた。 ズームは一部の機能を無料で使える「フリーミアム」の事業モデルのため、無課金の利用者も少なくない。5~7月期の業績を支えたのはお金を払って使う企業の顧客で、従業員10人超の企業の契約数は5.6倍の37万社に増えた。米エクソンモービルやゲーム会社の米アクティビジョン・ブリザードもビデオ会議を採用。ズームへの支払額が年10万ドルを超す企業も1000社に迫る。 企業との契約が大幅に伸びた背景には、2つの理由がある。1つ目がセキュリティー対策だ。 コロナで世界中が外出制限を迫られた今春、ズームでは不審者が乱入する「ズーム爆弾」が頻発し、利用を見合わせる企業や教育機関が相次いだ。データ保護に関する説明不足も露呈した。 だが、同社は参加者の管理やデータの暗号化といった対策を急ピッチで進めた。人材採用も含めてセキュリティーに関する不安を払拭したことで、有料で契約する企業ユーザーをつかんだ。 2つ目が新型コロナを機に広がった働き方の見直しだ。米国では約100社のIT(情報技術)企業が恒久的な在宅勤務を認めた。 日本でもヤフーやドワンゴなど、自宅で働けるようにする企業が相次ぐ。エリック・ユアン最高経営責任者(CEO)は「(コロナ下の)緊急対策にとどまらず、企業はどこからでも働ける未来を積極的に探り始めている」と話す。 テレワークが日常化する兆しは、ズーム以外の企業の決算にも現れている。 25日に決算を発表したクラウド企業の元祖、米セールスフォース・ドットコム。5~7月期の売上高は51億5100万ドルとなり、前年同期と比べて29%伸びた。通期の見通しも前年実績を2割超上回る207~208億ドルに上方修正し、26日以降の株価は25日の終値と比べて2割以上高い水準で推移している。 企業がコールセンターで働く社員を在宅勤務に切り替えたことが成長を後押しした。自宅でマニュアルなどを参照できるようにするため、セールスフォースのクラウドサービスの利用を進めた。創業者のマーク・ベニオフCEOは「我々は新しい世界にいる」と言う。 複数のクラウドを使う際の認証作業を効率化できるサービスを手掛ける米オクタは5~7月期の売上高が43%増の2億ドルだった。21年1月期通期の売上高見通しも8億ドルと、従来予想(7億7000万~7億8000万ドル)から引き上げた。前期を4割近く上回る水準だ。 クラウドを介して離れた場所にいる社員が書類を共有できるサービスを手掛ける米ボックスも26日、21年1月期通期の売上高見通しを100万~200万ドル上方修正した。電子署名大手ドキュサインのダン・スプリンガーCEOは「『逆戻り』する企業はわずかだ」と話す。 テレワークの定着は新たな競争も生む。例えばビデオ会議では米マイクロソフトや米グーグルといった大手が投資を積み増す。緊急対策から「新常態」へと変わるなか、成長持続が各社の課題となる。

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