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中国、成長率目標を見送り 延期の全人代が開幕 中国で年に1度の重要会議、全国人民代表大会(全人代、国会に相当)が22日、北京の人民大会堂で開幕した。李克強(リー・クォーチャン)首相は所信表明にあたる政府活動報告で「感染症対策は大きな戦略的成果を収めている」と述べたが、終息宣言は見送った。2020年の経済成長率の目標設定は見送り、景気対策として財政出動を拡大する方針を示した。

全人代は例年3月5日に開幕してきた。20年は新型コロナの封じ込めを優先し、2カ月半遅れの異例の開催となった。 李氏は新型コロナについて「なお終息しておらず、任務は極めて重い」と強調。引き続き防疫対策を徹底するように引き締めた。習近平(シー・ジンピン)国家主席や李氏らひな壇に並んだ党幹部はマスクをつけていなかったが、全人代代表はマスクをつけて臨んだ。 政府活動報告では実質経済成長率の目標が注目されるが、20年は設定しなかった。見送りは異例だ。新型コロナのまん延で海外需要も落ち込むなど景気動向の不確実性が高まっているからだ。李氏は「20年は雇用の安定と民生の保障に優先的に取り組む」と語った。 雇用の目標を巡り、失業率は6%前後と掲げた。19年は5.5%と設定していた。新型コロナで失業が増えたため、雇用対策を打つが悪化を見込む。都市部の新規雇用は900万人以上とした。19年目標の1100万人以上から引き下げた。 李氏は財政出動を拡大し、雇用対策などを進める方針を示した。 国内総生産(GDP)に対する財政赤字の比率は3.6%以上にする。19年(2.8%)より高く、統計を遡れる範囲で初めて3%を超えた。地方政府のインフラ債券(専項債)の発行額も3兆7500億元(約57兆円)と19年(2兆1500億元)より大幅に増やした。財政赤字に算入されない「特別国債」も1兆元発行する。発行は07年以来13年ぶり。 金融政策は「預金準備率と金利の引き下げを総合的に活用する」と述べた。19年の政府活動報告ではなかった文言で、機動的に対応する考えを強調した。 調達した資金は新型コロナで打撃を受けた雇用や所得環境の改善に充てるほか、湖北省の経済再生に生かす。李氏は増値税(付加価値税)の減税など5千億元規模の減税・手数料削減をすることも明らかにした。 米国との貿易摩擦を巡っては「中米第1段階の貿易合意を共同で徹底させる」と述べた。米国が問題視するハイテク産業の育成策「中国製造2025」は19年に続いて言及しなかった。 全人代で議論する香港の治安法制(香港版国家安全法)について、李氏は「香港が国家の発展の大局にいっそう溶け込むようにサポートし、長期的な繁栄と安定を保っていく」と、関与に意欲をみせた。香港では19年夏から若者によるデモが続く。これに対して「香港が国家安全を守るための法制度・執行メカニズムを確立し、憲法で定めた責任を香港政府に履行させなければならない」と語った。 緊張関係が続く台湾問題では「台湾独立をもくろむ分裂の行動に断固として反対し、くい止める必要がある」と述べた。 中国国務院(政府)が同日公表した20年予算案の国防費(中央政府分)は前年比6.6%増の1兆2680億元(約19兆円)となった。伸び率は19年(7.5%)より縮んだものの、新型コロナで経済が大きな打撃を受ける中で、過去最高額を計上した。

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