ロシア改憲案、支持確保へ保守化浮き彫り 全容判明 ロシアのプーチン大統領が主導する憲法改正案の全容が3日、明らかになった。領土割譲を禁じる条文に加え、同性婚への反対や信仰への言及など保守的な内容が数多く盛り込まれた。2024年にプーチン氏の退任を控え、政権が一段と保守化していることが浮き彫りになった。改憲案の賛否を問う4月の全国投票で賛成票を増やし、体制移行を円滑に進める。

プーチン大統領は1月20日に改憲の関連法案を下院に出し、3月2日に追加の改憲案を提出した。この全文を大手ラジオ局「モスクワのこだま」などが3日に伝えた。 下院は10日に改憲法案を基本採択する予定で、プーチン氏の提案がほぼそのまま議会を通過する可能性が高い。追加の改憲案には、4月22日の全国投票で投票者の「過半数の賛成」が得られれば改憲法案が成立することも盛り込んだ。 領土の割譲を禁じる条文について、プーチン氏は2月13日と26日の法改正準備作業グループの会合で支持を表明した。日本との領土問題や14年に併合を宣言したウクライナ南部クリミア半島などが念頭にあるとみられ、3月2日に提出した追加の改憲案でも「国境画定を除き、領土割譲に向けた行為、呼びかけを許さない」と定めた。 日本は北方領土問題の解決をめざし、ロシアと平和条約締結交渉を進めている。プーチン氏は領土の引き渡しに対する国民の懸念を打ち消すとともに、「国境画定」交渉の余地を残すことで、日本との協議の継続は拒否しない姿勢をにじませた可能性もある。 追加の改憲法案では公用語のロシア語を「国家を構成する民族」の言語と明記した。多民族国家のロシアで、ロシア人が中核的な役割を持つと示唆する内容で、民族主義的な傾向を持つロシア人の支持者を獲得する。 さらに「神への信仰」の保持や、「結婚は男女の結びつき」との条項も追加した。プーチン政権の支持基盤となっている保守的な価値観を重視する有権者に訴える。 ロシアの国としての位置づけは「ロシアがソ連の法的継承国である」とした。ロシアが旧ソ連を引き継いだ大国だとアピールする狙いがみえる。愛国主義的な文言も多く、第2次世界大戦を念頭に「祖国防衛での偉業の意義を損ねることを許さない」と盛り込んだ。 プーチン氏は退任後の権力維持をにらみ、改憲作業を急いできた。改憲案からはできるだけ多くの賛成票を獲得したい思惑が透ける。政権の基盤を強化し、体制移行期に社会が不安定になるのを避けたい考えだ。有力紙RBKによると、大統領府は2月に各州副知事らとの会合で、「投票率60%、賛成70%」との目標を示した。投票日を休日にするなど有権者の動員に躍起になっている。

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