見出し画像

待機児童最少1.2万人 「年度末ゼロ」達成は厳しく 厚生労働省は4日、希望しても保育所などに入れない待機児童が2020年4月1日時点で1万2439人だったと発表した。1年前に比べ4333人減り、過去最少を更新した。減少は3年連続。受け皿となる施設の整備が都市部で進んだ。

一方で保育のニーズも高まっており、20年度末に待機児童をゼロとする政府目標の達成は難しくなっている。 加藤勝信厚労相は同日の記者会見で「足元では新型コロナ感染症対応で取り組みが難しくなっており、なかなか厳しい状況にある」と語った。 都道府県別で待機児童数が全国で最も多い東京都は、1347人減の2343人となった。市区町村別で全国ワースト1位の常連だった世田谷区は前年の470人から一気にゼロになった。足立区も120人減の3人となった。各自治体が待機児童対策を重点課題として保育所の整備などに力を注いできたことが実を結んでいる。 全国で保育所に入れない子供が減っているのも受け皿が広がっているためだ。企業主導型保育所を含む保育の定員は全国で7.9万人増え、313.5万人に拡大した。 待機児童がゼロの市区町村数は1341と全国の約8割に達した。100人以上いる市区町村数は前年の40から22へと大きく減った。主に都市部で保育所の整備が進み、ひずみが小さくなりつつあるようだ。 人口が増えている地域などで高まる需要に対策が追いつかない自治体もある。千葉県の船橋市や四街道市、兵庫県の西宮市や尼崎市などは待機児童数が増えた。 総じて保育の需要は高まっている。保育の申込者数は5.8万人増の284.2万人と、過去最多を更新した。子育てをしながら働く人が増えているのが大きい。25~44歳の女性の就業率は19年に77.7%と前年比1.2ポイント上昇した。 19年10月から幼児教育・保育の無償化が始まったことで、今後も保育所の利用希望者は増えるとみられる。厚労省は20年度末までに定員を10万人超増やし324.7万人へと高める計画だ。 総枠が拡大しても地域による需給のミスマッチなどがあって、そのまま待機児童の解消につながるわけではない。保育所に入れはしても自宅から遠いなど本来希望した施設ではないようなケースもある。国・自治体が公表する待機児童数は必ずしも実態を反映しない。 問題はハード面に限らない。人手不足が深刻な保育士の確保・定着や、認可施設以外の保育サービスの質と量の両面の底上げなど様々な取り組みが求められる。 政府が掲げてきた待機児童ゼロの目標は第2次安倍政権の間には達成できなかったことになる。当初は13年度からの5年間で待機児童を解消する目標を掲げていた。この目標を3年先送りした20年度末の実現も厳しい情勢で、待機児童対策は重い課題として次期政権に引き継がれる。

#COMEMO #NIKKEI

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?