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米民主、ブルームバーグ氏浮上 巨額資金で支持率3位 中道の受け皿期待 民主党の大統領選候補レースで、遅れて出馬表明したマイケル・ブルームバーグ前ニューヨーク市長が浮上してきた。失速するバイデン前副大統領に代わる中道の受け皿と期待され、全米で支持率が3位に上昇。大富豪としても知られ、ライバル候補の2倍以上の選挙資金を投じる。

自ら富裕層増税を打ち出すなど政策提案も強めている。 ブルームバーグ氏は15日、米南部バージニア州の州都、リッチモンドで支持者900人を集めて演説した。「ドナルド・トランプを倒すために出馬した。

民主党のほかの候補者は非現実的な政策を掲げているが、自分はニューヨーク市長として銃規制や環境対策、医療保険改革で実績がある」などと主張した。 同氏は600億ドルもの資産を持つとされる大富豪だ。ただ、同氏は「自分のような富裕層は、もっと税金を負担すべきだ」と訴え、個人所得税の最高税率の引き上げなどを提案。地元で不動産会社に勤めるジョン・ハンドさん(59)は「バイデン氏の惨敗にがっかりした。サンダース上院議員は急進的で、残るブルームバーグ氏の主張を聞いてみようと思った」と急きょ集会に参加したという。 ブルームバーグ氏は2019年11月になって出馬表明し、予備選が集中する3月3日の「スーパーチューズデー」から本格参戦する。にもかかわらず、全米の世論調査では、支持率が14.2%まで上昇。サンダース氏(23.6%)、バイデン氏(19.2%)に次ぐ3位に浮上してきた。 その原動力は、巨額の選挙資金だ。2億ドルの選挙資金を自ら拠出し、その規模は個人献金に頼るサンダース氏の2倍近い。バイデン氏やブティジェッジ前インディアナ州サウスベンド市長と比べれば、資金規模は3倍前後と極めて潤沢だ。テレビやインターネットなどに大量の選挙広告を流して存在感を高めている。 集会に参加した白人女性のマルニ・ピラフィアンさんは「経済政策ではウォーレン上院議員がいいけど、トランプ氏に勝てるのはブルームバーグ氏しかいない」と言う。サンダース氏ら急進左派は中道の支持を得にくい。躍進したブティジェッジ氏は中道だが、経験も知名度も現時点で劣る。トランプ氏と一騎打ちを想定した世論調査では、ブルームバーグ氏が9ポイント差で勝利するとの結果が出た。その差は、サンダース氏らを上回って民主候補でトップだった。 ブルームバーグ氏には、巨額の選挙資金で共和党を打ち破った実績もある。演説したバージニア州は保守層が厚い共和党の地盤だが、19年11月の地方選では州上下両院とも25年ぶりに民主党が過半数を奪還。その裏で動いたのが、大量の選挙資金を同州に投じたブルームバーグ氏だった。 「全米ライフル協会(NRA)を倒せ」。ブルームバーグ氏がバージニア州選に焦点を定めたのは、同州はNRAが本部を置く「銃の権利」の総本山だからだ。同氏はニューヨーク市長時代に違法銃器の締め出しで名を高め、銃規制の強化を大統領選の公約ともする。バージニア州では関連団体を通じ、NRAを上回る250万ドルの選挙資金を投じて番狂わせの勝利につなげてみせた。 もっとも、同じバージニア州で13日に演説したウォーレン氏は、ブルームバーグ氏を「人種差別者の大富豪」と手厳しく批判した。ブルームバーグ氏にはニューヨーク市長時代、治安改善を名目に黒人やヒスパニックを集中的に所持品検査したとの批判がある。同氏は15日の演説で「誤った施策だった。遺憾に思っている」と話したものの、会場に黒人支持者の姿はほとんどなかった。 トランプ政権で首席戦略官を務めたスティーブン・バノン氏は「ブルームバーグ氏が出馬すれば、民主党は分裂してトランプ氏の再選に追い風となる」と予測してきた。知名度の高い大富豪の躍進は、左派や中道だけでなく人種問題も絡んで混戦を深める可能性がある。

#COMEMO #NIKKEI

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