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巨大ITの反競争行為「厳正に対処」、古谷公取委員長 公正取引委員会のトップが7年半ぶりに交代し、新委員長に就任した古谷一之氏が17日、初めて記者会見した。各国で課題となる巨大IT(情報技術)企業への対策について「反競争的行為には厳正に対処する」と述べた。菅義偉首相が最重要テーマに掲げる規制改革にも、競争当局として積極的に関わる考えを示した。

古谷氏は会見で菅首相が掲げる規制改革を支援する考えを示し「規制緩和は競争環境を回復・維持することと整合する。公取委が貢献できる部分は大きく、積極的に参画したい」と話した。 特に携帯電話については公取委が2018年に出した報告書で、契約の「4年縛り」や携帯端末と通信サービスの「セット販売」などを問題視。その2カ月後に菅氏が携帯値下げの意向を打ち出した経緯がある。菅首相は料金の一段の引き下げに前向きで、古谷氏は会見で「競争環境を確保して料金値下げが実現できれば良い。政府全体の議論の中で貢献できればと思う」と述べた。 デジタル分野では、米国の「GAFA」をはじめとする巨大IT企業による市場寡占が懸念されている。古谷氏は、巨大IT企業のビジネスの実態把握を進め、独禁法違反があれば「厳正に対処する」と強調した。 欧州連合(EU)などは、市場寡占が進む前に「事前規制」を強化する考えを示している。古谷氏も「(問題が起きる前に)企業側と様々な議論をできる力を組織として蓄えたい」と述べ、デジタル分野などの専門人材の強化に意欲を示した。 足元では米グーグルなどによる市場の寡占が指摘されているデジタル広告市場への調査が続いている。「公取委としても十分監視し、考え方を政府全体の議論に反映したい」と述べた。 菅首相の下で加速が予想される地銀再編への対応も注目される。独禁法の例外を認めて地銀の合併をしやすくする特例法の施行は11月に迫る。古谷氏は「地銀の利用者の利便性や実質的な競争環境が確保されることが重要だ。金融庁から協議があれば意見を申し上げたい」と話し、競争当局としても引き続き関与する考えを示した。 古谷氏は財務省出身。国税庁長官などを経て、第2次安倍政権で内閣官房副長官補に就任して省庁間調整を担った。前任の杉本和行公取委員長の定年退職に伴い、16日に委員長に就任した。 前任の杉本氏は、巨大IT企業から取引先や消費者を守るため独禁法を積極的に運用する姿勢を打ち出した。また、芸能界やスポーツ界、フリーランスとして働く人など、従来の独禁法がカバーしていなかった領域にも法適用の範囲を広げてきた。古谷氏は会見のなかで、前任の路線を引き継ぐ考えを表明。「公正で自由な市場環境を確保し、イノベーションが起こるような市場をつくることが公取委の使命だ」と意気込みを語った。

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