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美容という視点から捉えた水素〜“免疫老化の制御”という新たな研究〜

水素研究の第一人者である東京都健康長寿医療センター研究所 研究副部長の大澤郁朗さん。今回は、メイクアップアーティストとして多くの女性誌や広告で活躍する森ユキオさんとの対談が実現。最新の水素研究を続ける大澤さんと、最先端の美容の現場に立ち続ける森さんが、それぞれの視点で「水素」を語る。



東京都健康長寿医療センター研究所 研究副部長大澤さんとヘアメイク森さん

炎症を抑える、という水素の新たな研究。

森:僕はヘア&メイクアップアーティストとして活動していて、日々の撮影現場でありとあらゆる美容情報に触れているんですが、実際に試してみて一番変化を感じたのが水素だったんです。身体が軽く感じたり、睡眠の質や便通の改善をダイレクトに実感できて。美容の世界では、水素といえば抗酸化のイメージが強いんですが、こういった実感と抗酸化って関係しているんでしょうか?

大澤:最初に水素の研究を始めた時には、確かに酸化と還元というところから始まっていて、抗酸化というポイントに着目していました。今でも水素がヒドロキシルラジカルを抑えるのは間違いないんです。ただ、ヒドロキシルラジカルが日常生活の中で少し出ているところに、多少の濃度の水素が働きかけても大して意味がないことも明らかになっています。現在、僕らが研究しているのは抗酸化のもっと先の話で、“炎症を抑える”という部分。そのメカニズムを研究していて、やっと少し話せるところまできたって感じですね。

森:新たなステップまで研究が進んでいるんですね。

大澤:そうですね。どうやって炎症を抑えているかというと、肺や腸にある免疫細胞が活性化するのを抑えるということなんです。肺や腸は外界からアタックされる臓器で、そういうところは免疫系が発達しているんですね。水素には、その免疫細胞が過剰に反応するのを抑える力があることがわかってきています。

森:免疫が反応しすぎるっていう状態は、どういう時に起こるんでしょうか?

大澤:外界から異物が入ってきたり、自分の身体の中に何か炎症が起こった場合です。そういった緊急な状態に対して免疫が過剰応答すると、最悪の場合は死に至ることもあります。

森:コロナでも話題になった免疫細胞の暴走ですね。水素は飲んだり、吸引したり、さまざまな取り入れ方がありますが、方法によってアプローチは変わるんですか?

大澤:水素はガスとして吸った場合には肺に、水素水やゼリーとして摂取した場合は腸に直接働きかけますが、免疫系は結局のところ全部繋がっているので、どの方法でも同じです。ただ吸引は濃度のコントロールが困難。吸入ガスの2〜4%が最適濃度と言われているんですが、自身で調整するのは難しいんですよ。水素ゼリーで摂取するなら1日1本でも良いですね。

大澤さん

老化の一つに、免疫細胞の老化がある。

森:実際に水素によって免疫を制御することは、見た目の若さや肌の美しさにつながるものなんでしょうか?

大澤:これは“老化”をどう捉えるかということと関係してくるんですが、一つにそれは免疫の老化だという考え方もあるんです。まだ動物による検証ですが、老化した免疫細胞を調べて、それを除去すると若返るっていう研究もあります。つまり、免疫の老化は全身の老化につながるってことなんですね。身体に炎症を持っている人、例えば高齢者の腎臓病も老化による免疫の異常が原因のひとつで、悪化して人工透析をしている患者さんでは動脈硬化になりやすい。老化が進行してしまうのですね。

森:なるほど。美容面でいうと、かつてはトレーニングをした後に水素水を飲むのが一つのブームになったりもしましたが、大澤さん的に運動後の水素は効果があるものと考えていますか?

大澤:健康のために運動していて疲れやすい人には効果的かと思います。ハードなトレーニング後に摂取すると、疲労の蓄積が防げます。

森:そういうことなんですね。僕は美容面以外でも花粉症が軽くなったって実感をもってるんです。以前は、周りからも「花粉症と言えば森さん」と言われるくらい重度で(笑)。鼻の粘膜を焼いたり、さまざまな対処療法を試しましたが、一向に改善しませんでした。でも、水素を始めたタイミングで、かなり症状が緩和して。そういったアレルギー症状に関して、水素はどう作用していると考えられているんですか?

大澤:それもやはり腸の免疫系に作用しているから、と言えるでしょう。花粉やハウスダストが原因となるアレルギー症状が緩和したという話をよく耳にします。

森:花粉症の緩和というと乳酸菌が有名ですが、それとはどう違うんですか?

大澤:一部の乳酸菌にも免疫系の反応を抑える効果があると思います。ただ水素も乳酸菌も皮膚に直接塗ってもダメなわけで、結局は腸をしっかりコントロールしておけば抑えられる症状なんですね。医薬でも同じことは起こせるんですけど、使い方を間違えると副作用が起こってしまう。水素の場合は限界までいかず、適度に抑えてくれる。アレルギーの反応なんかは程よく治る、そんなイメージです。

森:僕の知り合いで突発性難聴になってしまった方がいて、彼女も水素を始めて、症状が緩和したと話していました。

大澤:すべては身体の炎症なんです。ヨーロッパの研究では、コロナに感染した患者さんの回復に水素ガスを吸入したら症状が緩和したという話もあります。水素水が抗がん剤の投与による副作用を抑えるのも同じ。身体にインパクトのある炎症が起きた時に、それを抑制する働きがあるということですね。

森:ところで、水素は体内でも作られているって本当ですか?

大澤:大腸のあたりで腸内細菌が作っています。ただほとんどがオナラとして出ていってしまうので、効果はあまり期待できません。一過的にある程度濃度の高い水素が免疫系に届くってことが大事なんですよ。

森:そうなんですね。朝とか夜とか、空腹時がいいとか、どのタイミングで摂取するのが効果的なんですか?

大澤:まだその辺りはまだ明らかになっていなんです。腸の免疫系を整えるには午前の方が良いかもしれません。ただ、夜は睡眠の質やその日の疲労が取れるという声も聞きますね。

森:僕は最近、疲れるとまず水素!って感じで栄養補給のように取り入れてます(笑)。

大澤:身体を動かして疲労するってことは体内で炎症が起きるってことですから、それを抑えるという意味で有効です。疲労が軽減するのは、活性酸素が減るからじゃなくて、過度な炎症が抑えられるから。今後はそれをより多くの人に知ってもらいたいですね。

森:水素の研究が進むと、どんな可能性があるのでしょうか?

大澤:病院で取り入れる水素ガスは医療、日常的に取り入れる水素水や水素ゼリーは健康食品、どちらの可能性もあります。いずれにせよ、健康長寿という一つの方向は一緒。多くの人が安心して水素の恩恵を受けられるよう、僕たちは日々研究を重ねているわけです。

森:長生きする人がどんどん増えて、それと同時に老化へ不安も増していると思うんです。水素によって健康寿命を延ばせたらいいですね。




Profile

東京都健康長寿医療センター研究所
研究副部長 大澤郁朗さん

群馬県出身
東京大学工学部化学工学科卒、工学博士
1984年 日本ゼオン(株)研究開発センター 研究員
1994年 国立精神・神経センター神経研究所 博士研究員、
2001年 日本医科大学老人病研究所・生化学 助手
2003年 日本医科大学老人病研究所・生化学 講師
2008年 日本医科大学老人病研究所・水素分子医学 教授
2010年 東京都健康長寿医療センター研究所 研究副部長
2021年 日本分子状水素医学生物学会理事長