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『この夏の星を見る』をトリガーとして思い起こされること

『この夏の星を見る』という辻村深月さんの小説を読み出した。これがとても面白い。

コロナの三年間の学校生活のことを描いた小説なのだが、読み始めると、コロナが始まった2020年の学校の様子をまざまざと思い出し、あの時は感じられなかった生徒たちの葛藤や悲しみを改めて思い出されるし、それが決して小さなことではないということを忘れてはいけないのだと思い起こされた。
あの時、色々な事があった。思い出されるのは、非常勤に行っていた学校で、その学校は3月に海外に行く修学旅行があった。その学校の修学旅行が直前に中止になってしまった。生徒たちは泣いていた。どうして私達、僕達の学年だけ修学旅行に行けないの、どうして私たちの学年なの…。
その涙は今考えると本当に重い、誰かと比べる事の出来ないような涙だったのだと思う。
1人の男子生徒、その子はすごく僕を慕ってくれていたのだけれど、修学旅行の中止が決まったときこう言った。

先生、仏教の力でコロナ終わらせて下さい。

僕は、何も返すことが出来なかった。しかし今考えると、あの冗談半分のセリフのように聞こえた彼の言葉はすごくリアリティのある、心からの叫びだったように思う。

コロナで悲しんでいる子どもたちを救う力ひとつない、何もできない自分が何を偉そうに、僧侶とか宗教者とか喧伝しているのかと本当に恥ずかしくなる。

あの生徒たちは元気なのだろうか?そして修学旅行に行けなかった彼等に私は何もできなかったし、何かしてあげようとする事すらなかった。そういうあり方をしている自分が宗教者面して恥ずかしげもなく生きていることが問えても情けなく感じる。今からでも、彼らに恥ずかしくない生き方を少しでもしていきたい。


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