書評・プラトン『ソクラテスの弁明』 納富信留訳、光文社古典新訳文庫

ソクラテスの「無知の知」と検索すれば、解説はたくさん出てきて、何だかわかったような気になってしまう。だけど、ちゃんと原典を読まないとわからないことがあるんじゃないかと思って読んでみた。

やっぱり、そうだった。
ソクラテスは「無知を知っている」なんて言ってない。
「知らないと思っている」ところから出発して、人間が知恵という点でどのように謙虚であるべきかを示して、哲学を始めようとしているのだ。

なんてここで簡単に書いてみても、うまく伝わらないだろう。だから、とにかく読んでみてくださいな。

一つだけ言っておくと、「解説」のp145に書かれていることがすごい。

ソクラテスは「知ったかぶりは恥ずかしい」と言っており、誰も経験したことのない「死」についてもそうだというのだ。

だから、死を恐れない態度をあくまで取ろうとする。

自分の主張と行動が一貫しており、ソクラテスのすごみが伝わってくるくだりである。

とここまで書いていて思ったのだが、「ソクラテスと言えば、無知の知だね」と知ったかぶりをすることこそ、ソクラテスが最も「しちゃいけないよ」と言っていたことだ!


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