2012/9/7 #223 下北沢が好きじゃなかった

下北沢が好きじゃなかった。

と言っても、街自体のアンチだったわけではなくて、サブカルチャーの空気が肌に合わなかった。

今となってはサブカルなんてものはほぼ存在しないように見える。
そのほとんどがもはやメインカルチャーだし、
「アングラかそうじゃないか」くらいに文化は大きく分かれてしまっている気がする。

下北沢も、パッと見オシャレな街と化した。

「じゃあ下北沢で集合ね」
高校一年生の頃だろうか。
インターネットの知り合い2人と下北沢で待ち合わせをした。

1人はドラムをやっている男の子で、1人は小学6年生?くらいの女の子だった。
今思うと小学生の女の子と高校生の男子が3人で会う、というのは異常なことだ。

小学生の女の子はわかりやすく腕がズタズタだった。

「ああ、これがリストカットというやつか。」と思った。
昔から、初めての物を見てもそこまで驚かないタイプだった。

当時は下北沢にも楽器屋があったように思う。
ドラマーの彼がスティックを眺めていたのを覚えている。

流れは覚えていないが、3人でヴィレッジヴァンガードに行った。
当時はその存在も認識していなかった。

小学生の女の子が、「完全自殺マニュアル」を手にとって僕に見せてくれた。

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タイトルは知っていたように思うが、生で見るのは初めてだった。

その後は「あ!〇〇さんの本がある!」とその子が好きな作家の本を見つけて喜んでいた。

合流して数時間くらいで解散した。

この日のことは素敵な思い出でもなんでもない。

でも高校3年間という長い時間で、記憶に残っている一日だったことは確かだ。

その日からしばらくは、なんとなく下北沢にあまりいいイメージを持てなかった。
その妙な日のことが理由なのかもしれない。

2010年にバンドを始めてからは、やたらと行くことになるのだが。

THURSDAY'S YOUTH
篠山浩生

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