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ブレンディスティックとチョコレート

気持ちが落ち着かないとき、寂しいとき、誰かと話したいけど誰かわからないとき、どこかに行きたいけどどこにも行きたくないとき。
とりあえず温かいものを飲み、チョコレートをひとつ食べる、というのが私の常套手段だ。

それで何かが解決するわけではない。
依然として胸はざわざわするし、上着を羽織っても寒気がするし、頭は痛いし、誰かが声を聞かせてくれるわけでもない。

それでも私は、ブレンディスティックをお湯で溶かし、70%のカレドショコラをひとつだけ食べる。落ち着こうと努力はした、そのポーズが大事なのだ。自分がさっきよりは落ち着いていると錯覚できる。儀式に近いかもしれない。

甘いものを口に入れたら勇気が出て、近所のスーパーの求人にえいやっと応募してみた。
大学の頃、スーパーのレジのバイトを始めたら、物覚えが悪すぎて先輩バイトにいびられて辞めたことがある。近所のスーパーは、お惣菜を作るバイトも募集していたので、そちらを希望することにした。

求人を探すこと、応募すること、電話に応対すること、面接に行くこと。
たかが主婦のお小遣い稼ぎだけれど、バイトを始めるためのステップのひとつひとつは、私にはひどく大きな段差に思える。

ばかみたいに甘いキャラメルマキアートを飲んで、苦いチョコレートを食べたら、よいしょっと足を踏み出せるだろうか。


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