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※扉絵はさくらゆきさんの作品です。この場を借りて御礼申し上げます。 凪は、紺地に白い縦…
低血圧の凪は朝が辛い。それが月曜日だと尚更だった。身支度を済ませ、窓を開けると、物憂い…
放課後の第2音楽室には、音が洪水のように溢れる。トロンボーン、クラリネット、ホルン、フ…
第2音楽室には、女の陰湿さが醸し出す退廃的な空気が漂い、凪はそれだけで息が詰まりそうに…
ドー、レー、ミー……。スネアドラムが刻むリズムと管楽器が奏でる音階が、朝の清々しい空気…
T中を金賞に導いた香川の顧問就任も、10年以上コンクールに出ていないA中では迷惑以外の何…
翌週、香川に説得されたのか、練習に出てこなかった2年の大半が戻ってきたが、桐原と東の姿はなかった。 第1トランペットの2人が欠けると、凪のリップスラーがきいた旋律が際立った。それに気づいたのか、香川が凪に尋ねた。 「橘、第1を吹いてみないか?」 凪は言葉を失った。とても現実とは思えず、そのとき目に入った香川の白いワイシャツが妙に鮮やかに映った。だが、自分に集まる部員の視線に気づくと、途端に現実に引き戻された。嬉々として飛びつけば、桐原や東に告げ口されるのはわかってい
その翌日、桐原と東が「久しぶり~!」と何事もなかったように練習に戻ってきた。凪が慌てて…
「橘さん、聞きたいことがあるから部室まで来てくれる?」 夏休みの練習後、凪が校門を出て…
どれくらい、そうしていただろうか。 凪が、いいかげん帰らなければと重い腰を上げようと…
凪は遠慮がちに頷いた。 香川の瞳と髪の色こそ黒だが、彫りが深く、鼻梁の高い顔立ちは西…
フルートが華やかな祭囃子のソロを奏で、和太鼓が腹に響くリズムを刻む。 「もっと楽しそう…
いつの間にか頬をかすめる風が暖かくなっていた。桜のつぼみも柔らかくなり始めた。グラウン…
山々が、咲き始めた桜でぽつぽつと明るくなったことが遠目にもわかる。校庭の桜は葉桜に変わり始めていた。凪は中途半端な桜が厭わしく、さっさと若葉になってしまえと思った。 凪は新しいクラスに慣れる忙しさで、心の穴を埋めようと努めていたが、ふとした隙間に、香川の思い出が蘇ってくるのが辛かった。 部活に行けば、3年に進級した先輩が以前のように部室に滞留している。2年になった凪たちは、今までのように音楽室の机を後ろに寄せ、椅子を合奏の配置にして、先輩の楽器を出す。 新学期か