目指せ出版! 日本史のセンセイと行く全国制覇の旅12 天皇弥栄

 正月2日のテレビを見ていると、必ず皇居の新年一般参賀のニュースが取り扱われるよね。新しい年を迎えたことを祝い、天皇陛下はじめ皇族方が祝賀をお受けになり、天皇陛下からお言葉があるのを知っているだろうか。多くの人が日の丸を振っている場面、見たことのある人も多いんじゃないかな。「一般の人が皇居に行くなんて、ニュースにもなるくらいだから特別なことなんでしょ」と思いがちだけれど、実は皇居も、京都にある御所も見学することができるんだ。

 まずは予約なしに入れる一般公開されているエリアから。皇居東御苑は昭和43年に完成した庭園で、月曜・金曜などの休園日を除けば午前9時以降、誰でも入れるようになっています。江戸城って徳川幕府の本拠地のお城なのに、何で天守閣がないんだろうと考えたことのある人はいませんか。そう、日本一の規模を誇る江戸城なのに城のシンボル的な存在である天守閣がないのです。これには理由があります。「火事と喧嘩は江戸の華」という言葉があるように、江戸は火事の多い街でした。庶民の住む区域は木造の家が密集しており大火事になりやすかったといわれています(だから当時の消火方法は、まだ燃えていない家屋をさすまたで破壊し、延焼を止める方法しかありませんでした。現在の地図記号で「消防署」がさすまたの形をしているのはその名残です)。そして火事に弱かったのは広い地域に建てられていた天守閣も同じことで、焼失してしまったのです。再建をしようとする声もありましたが、「不要である」と言ったのが会津藩祖の保科正之。現在は天守台のみが残り、見学することはもちろん、天守台の上に上ることもできるようになってるんだ。

 春の桜の時期と秋の紅葉の時期には、皇居乾通りの一般公開も行われている。厳重なセキュリティチェックを受けてから皇居内に入ると、宮内庁の庁舎前を通って乾通りの散策がスタート。江戸城を最初に築いた、太田道灌のころの雰囲気が残るという下道灌堀を左に見ながらおよそ750mの皇居散歩です。春の一般公開、今年は明日から3月31日まで実施中。この情報をゲットしたのも何かの縁、ぜひ参加を!

 事前申し込みをしなくても参加できるものの、予約をしておいたほうが安心なのが午前・午後1回ずつ行われる皇居参観です。こちらは乾通りの一般公開とはまた別のコースを見学することができます。江戸城の遺構の中では最も古いものに属する富士見櫓は、天守焼失後に天守閣の機能を果たした建物。これを見ると皇居はやはりお城なのだな、と再認識します。

 そして何と言っても皇居参観の一番の見どころは宮殿(長和殿)とその前にある宮殿東庭。新年一般参賀で天皇陛下はじめ皇族方が出ていらっしゃる場所が長和殿。そしてみんなで日の丸を振っているのが宮殿東庭なんだけれど、実際に行ってみると長和殿と東庭が思った以上に近い。国民に対して開かれた皇室を意識しているのだろうな、と感心してしまいます。日々の皇居参観では天皇陛下のお出ましはもちろんないけれど、広い東庭に立って長和殿を見ると、ぜひ一般参賀にも行ってみたいという気持ちになること請け合いです。新年2日か天皇誕生日に参加してください。

 庭園と本館の見学だけなら予約なしで見学できるのが、迎賓館赤坂離宮(和風別館も見学したいときには予約が必要)。四ッ谷駅が最寄りになりますので、皇居見学を午前中に済ませれば、午後は赤坂離宮を見学できますね。2015年までは年に10日間だけの公開(見学できるのは抽選で当選した人のみ)だったので、ぼくたちが気軽にみられるようになったのもここ最近のことなんだ。だからぜひ見に行ってほしいな。

 かつて紀州徳川家の屋敷があったこの場所は、明治になって皇室に献上され、明治42年、皇太子(のちの大正天皇)の住む東宮御所として誕生した日本唯一のネオ・バロック様式の西洋宮殿です(あまりに豪華だったため、大正天皇は気に入らず、ほとんど使用しなかったみたい)。戦後1974年に外国の要人を迎えるための迎賓館となり、1979年には東京サミットもここで行われ、2009年には明治以降の文化財として初めて国宝となりました。
 見どころは最も格式高い部屋である朝日の間。朝日を背にした女神の絵が天井に描かれているのが名前の由来で、国賓が天皇・皇后両陛下とお別れをする部屋です。この部屋の緞通(だんつう、元は中国製の絨毯のこと。ペルシャの絨毯よりも毛足が厚い)は47種類の糸を使って色彩の変化で桜を表していて、1271人の職人が10006時間をかけて製織した日本最高級のものなんだって。ぜひその風合いを見て楽しんでください。

 見学をするのに予約が必要な施設が三の丸尚蔵館。2023年に工事が終わって一般に開放していて、東御苑の入口近くにあります。見学料も1000円かかりますのでご注意を。ここには元々御物(ぎょぶつ、天皇の私的な持ち物)だったり、宮内庁が管理してきた宝物が収蔵されています。多くの宝物があるなかで誰でも知っているのが狩野永徳の「唐獅子図屏風」と、肥後の御家人・竹崎季長が描かせた「蒙古襲来絵詞」。ホンモノはやはり迫力がありますね。2023年11月からの展覧会では写真撮影もOKだったということで、見に行った人は興奮したはずです。収蔵品が多数あるため、いつ行っても全てが見られるわけではないけれど、タイミングを見計らって見に行ってみてください。

 平安の都にある京都御所も見学することができます。京都(平安京)が都となったのは794年、桓武天皇のときです。現在の京都御所の場所は、鎌倉幕府末期の1331年に光厳天皇が即位してから明治2年までの内裏(現在の皇居とほぼ同じ意味の言葉)で、現在残る建物の多くは江戸時代に建てられたもの。最も格式の高い建物は紫宸殿(ししんでん)で、現在は建物の中には入ることはできませんが、門の外から見ることができます。紫宸殿の中には天皇・皇后の御座所である高御座・御帳台が安置されており、東京で新しい天皇が即位するときだけこれを輸送することになっています(高御座のレプリカは、奈良県の平城宮跡に建てられている大極殿のなかでみることができます)。紫宸殿の前にはひな飾りでも有名な「右近の橘・左近の桜」が植えられています(これを知っていると、お内裏さまは天皇、お雛様は皇后であることがよく分かりますね)。

 討幕派が王政復古の大号令を発して天皇を中心とする新政府を樹立し、徳川慶喜に辞官納地を求めた小御所会議が開かれた小御所も紫宸殿の近くにあるからしっかりと見ておきましょう(実際に小御所会議が開かれた当時の建物は、昭和になってから焼失したので、現在見られるのは再建したもの)。建物の中には入ることはできませんが、間近に御所を見学できるのは身が引き締まります。春と秋の2回、特別公開「京都御所 宮廷文化の紹介」として雅楽や蹴鞠を予約なしで観覧することができる催しもあるので、ぜひ一度見てみたいものですね。

 今年の春の特別公開は3月24日まで。高御座が遠くから見られる! まだ間に合う、急げ!


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