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夏の西日本一人旅 備忘

日程:9/20〜9/24
目標:西日本(特に瀬戸内海沿)の気になる街づくり・都市デザインが行われている街を巡る
途中下街:大阪昭和町・岡山問屋町・岡山倉敷・広島尾道・山口宇部・山口下関・福岡門司港・福岡小倉など


研究領域の基礎的な知識を得るためと学生のうちに色々なまちづくりをみておこうという大きく2つのモチベーションで西日本を瀬戸内側から攻めてきました。

昨年の大河ドラマと重ねるなら、大阪から壇ノ浦までといったので、源平合戦と同じような方向巡った感じ(別に史跡は巡っていないが。)
まとめようと思っていたら、いつの間にか3月になっていた。ホントに備忘のために残しておく。


1.大阪市阿倍野区昭和町(エリアリノベーション)

まず大阪は、阿倍野区昭和町で取り組まれているローカルディベロッパーによるまちなみ保全・古民家再生プロジェクト周辺を散策。

大阪中心部から少し離れた住宅街に残る古民家を商業・観光施設へとコンバージョンしながら点群的な再生が行われていました。

ここの特徴は、ローカルディベロッパーが活動を主導していること、そして歴史的な建造物にも指定されるような物件から始まり、地区内の町家を中心に仲介、企画していること、そうした取組から『buy Local』という地域のお店で消費することを促すようなマルシェなどのイベントを主催していることが挙げられます。町家再生がキーポイントになるかなと感じている取組です。

エリアとして指定している範囲が他のプロジェクトに比べると広いので、面的に何か変わっている感じは、歩いていても中々読み取れませんでしたが、おそらく暮らしていたり長く見続けてたりしている人には、地域の変化が読み取れるものなのかもしれません。大きな変化がないと部外者は中々読み取れないですね。

2.岡山市問屋町地区(エリアリノベーション)

続いては、ちょいと移動して岡山市。問屋町は、岡山駅からバスで少しいった所にあり、隣駅の北長瀬駅からも徒歩で少し行った所という、車を利用しないユーザーからするとあまり交通の便が良くない所での取組です。

ここは元々繊維卸売業の総合団地であった地区であり、そこにグラフィックデザイナーが企画の依頼から関わり、まちの未来についての企画書も同時に提案したことがきっかけとなって取組が始まったものです。

ここでの特徴は、エリアが4×3ぐらいの歩いて3~4分あれば端から端まで行けるぐらいの小さなエリアで集中的に飲食・物販店舗や企業を誘致し、店舗のブランディングからエリアブランディングまでを行っているところではないかと思います。
実際、そうした取組で、おしゃれなお店が集積しているので、若い人・おしゃれな方々が平日の昼間でしたが、多くいらっしゃって、お店に人がしっかりと入っていました。

ただ、駅から遠いということで、総合団地の名残である広い幅員には多くの路上駐車があり、景観としてはなんとも言えない感じでした。おしゃれで高そうな車もチラホラだったので、それもそれで面白いかもしれないですがね。しかし人が集まる拠点をつくったというのは大きいでしょう。マンションも周辺に新しいのが数本建っていましたし、開発需要は上がったことでしょう。

3.岡山県倉敷市(途中下車)

倉敷は途中下車で訪れました。一度訪れたことがあったのですが、せっかくなのでもう一度。

前に訪れた時は、倉敷の街並み(美観地区)に感動して、大原美術館に魅了されて帰ってしまったので、今回はもう少し、町を堪能しようと思って散策していました。

一番の発見は、倉敷の美観地区の隣に位置する丘(阿知神社)から見る倉敷の美しさでした。上から見るとこんな感じなんだと初めて思い、その統一感がよかったです。
ぜひ倉敷に訪れたときには行ってみて下さい。

4.広島県尾道市旧市街地(エリアリノベーション)

尾道での取組は、斜面地に残された空き家の再生。
NPOを中心とした仲間、応援団的な方々による継続的な活動により、これまでに多くの空き家が改修され、飲食店舗や宿泊施設になっています。

ここでの特徴は改修をイベントと捉え、地元の大工さんや左官職人さんを読んで「空き家再生ワークショップ」を行い、参加者と一緒に改修を行っている所でしょう。

決して儲かる事業ではないと思うが、そこは市からの空き家バンクの事業の受託、そして改修してできたゲストハウスの収入で収益は安定し、自立的な運営につながっているそう。

商業の活性化とかエリアブランディング、まちなみ保全というよりは、空き家再生を通じたコミュニティ再生。そんな目的を持ったエリアリノベーションだと感じました。

実際に歩きながら物件を探してみましたが、街になじみ過ぎているのか見つけにくい。そして地域全体に点在しているので、この取組によって地域がどうなったかということを、歩きながら評価することはできない取組でした。

もっといろんな当事者に話を聞きながら、どんな人が関わっているのか、そういうことからわかることがこの取組の本筋かもなと感じました。

5.広島県福山市(ウォーカブル)

途中地点ということもあって、福山駅前に宿泊。
そこで、グッドデザイン賞にもなっている福山市本通・船町商店街「とおり町Street Garden」に行ってきました。

商店街のアーケードを撤去して開放的な空間にしながら、ステンレスワイヤーを架けるというデザインになっています。

ここでは、商店街組合から地元の建築家に依頼が舞い込み実現に至っていました。朝だったため人影はまばらだったが、歩きやすい気持ちのいい商店街でしたね。いい空間でした。緑も座るところも多くて、飲食店舗や商業店舗が集積していたら、ちょっと長居してしまいそうだなと思いました。

この取組によって、約30店舗あった空き店舗は10店舗ほどに減ったようでした。次の予定もあったので、昼前に出てしまったのですが、お昼時はどうなっているのかは気になるところです。

ちょっと見た感じ、空き店舗は増えていてもやはり多くの店舗が変わっていないので、外から人を呼び込む、地域の人々が集まるという所までいっているのかは少し疑問でした。
あとは建築家の方の完成後の関わり方。作って終わりなのか継続的な関わりがあるのか。やはり良いものができても、その中身が継続的に発展していかないと遺跡になる気がするので、そういった所が気になりました。

また機会があったら途中下車したいと思います。

本通・船町商店街からバラ通りへ。ここも良さげな空間

6.山口県宇部市(学生まちづくり・ウォーカブル)

ウォーカブルの勉強をしている中でちらっと事例としてでてきたことや、学生が街づくりが密に関わっているということを知っていたので、当日にちょっとアポを取って、山大の学生さんとも色々話すことができました。

場所もやっていることも違うんですが、色々話していたら、話が膨らんで、すごく沢山話し込んでしまいました。失礼しました。

しかし、色々なことを学生がかなり主体的に絡んでやっている所に一学生として感銘を受けるとともに、地域のまちづくりの形としては、学生に色々やってもらって、行政や地域の人々から新たな取組の芽は出てきていないのだろうかと感じました。

学生は楽しんで、そして色々直面する課題に対して考えて対処する機会を得るので学びになります。それは学生にとっては良いこと。さて地域にとってはどうなのだろうかということ。
もちろん「若い力」が地域の活力になるというのは一理あるでしょうが、それだけで活性化するほど単純ではないでしょう。そのあたりの展開が気になる所です。

ちょっと話に夢中になって写真を撮り忘れてしまったのでURLを貼っておきます。

7.山口県下関市(途中下車)

ここも宿泊で寄ってきました。
下関駅周辺に泊まって、そこから唐戸市場、関門橋、関門トンネルへ

一番の喜びは、朝の唐戸市場でした。
すごい行列がいたるところにできていると思ったら、寿司がずらりと並んでいて、一貫ずつ頼んでいくスタイルで、朝ごはんを買い求める人々でいっぱいになっていました。

僕もホテルで軽く朝ごはんを食べていたんですが、見ただけでお腹が空いてきて、色々頼んでしまいました。

ふぐが有名ということでトラフグの寿司も頂き、大満足。皆さんにもお勧めです。

関門橋
やはり市場はテンション上がる
関門トンネル

8.福岡県北九州市門司港(途中下車)

関門トンネルを超えて北九州。歩いて本州から九州に来てしまった。

前に北九州に来た時に行けなかった門司港に行ってきました。
研究室のドクター(研究院)の方とも話した時に言ったのですが、小さな横浜みなとみらい・山手みたいでした。

洋館がポツポツと残っており、それが文化財として保存され、その中にはおしゃれなカフェとかホテルが入っていて、新築っぽい赤レンガを彷彿とさせるショッピングセンター。そしてみなとまち。

横浜よりもみなと感というか、漁船・輸送船が近くに止まっているみなとで、こじんまりとしていて良い雰囲気でした。洋館がモダンさをつくり、西洋と東洋の交差というような文脈を歩きながら感じました。

みなとに近いところには多くの観光客が訪れていましたが、少し入った所にある、昔は門司港に従事する人々を支えたのではないかと思われる商店街はかなり古びていて、一本の大きな道で観光客が吸い取られているような印象も覚えました。

表と裏。そんな感じ。
古地図とか昔の写真があればみて見たいなと思いました。みなとまちの変化とともに門司港レトロ(赤レンガ風ショッピングセンター)ができたりブランディングの方向性が変わったりする中で、どうなってきたのか気になりました。

一本内陸に入った所にある商店街
シャッター商店街になりつつあるように感じた

9.福岡県北九州市小倉・魚町地区(エリアリノベーション)

最後に北九州。こちらもエリアリノベーションで有名な街。

地元出身の建築家が、父からの相談で、最初のプロジェクトを起こすところから始まります。建築の改修計画だけではなく、テナント誘致から運営まで行い、事業を起こしていくことも、少しずつ手に職つけながら作っていったプロジェクトです。

行政とも連携しながら、複数の事業を起こしていきます。

そして組織をつくっていき、活動を面展開していくための発明が「リノベーション・スクール」。全国から参加を募り、空き家をリノベーションを提案する授業を受講、プロがサポートしながら、参加者のグループごろに考えていき、提案をオーナーにして、OKが出れば実現するというスキーム。

ってみて感じたこととしては、北九州駅に近い所にある商店街ということもあり、日頃からある一定の人流はある地域であること、デザインは商店街の中で目立ち過ぎない程度のものになっているということを感じました。

またおそらく直接関わりがあるのかが定かではないが、おしゃれな建物を周辺にはちらほら建っており、波及している可能性も見て取れた。

歩いていく中で魚町商店街にも行ってきました。
前にも行ったことがあり、最近火事があったことは知っていたので、かなり大きな被害があったことが、写真からもよくわかるのではないでしょうか。

前に行った時の写真も見つかったので、載せておきます。

火災に遭った魚町商店街

10.千里ニュータウン(郊外住宅地・ウォーカブル)

初期日程では9まで行って帰る予定だったですが、新幹線が台風の影響で新大阪で止まってしまったので、大阪で一泊することになってしまいました。せっかくだから新幹線が復旧するまでにどこか行こうと思い立ち、ホテルから近くて興味のあった千里ニュータウンへ行ってみたという感じです。

ニュータウンのはじまり
今でもなお進化するニュータウンでした。

バスターミナルには多くのバスが狭しなく止まっては通り過ぎていて、駅前にはショッピングモールがあり、そこについては今後再開発予定のようで、特にセルシーという建物については、閉鎖され、近代建築の遺跡となっていた。周辺は取り壊され建替えが起こるらしいですね。

そして駅前周辺には中高層のマンションが建ち、少し歩いて一本道を超えようとすると見慣れた「the 郊外団地」が綺麗に整列していました。

その外側には一軒家が立ち並び、歩行者専用道と車の道が別々に歩車分離が成り立っており、郊外住宅地・ニュータウンの都市計画を歩きながら、肌で感じることができたような気がします。

駅前に中高層マンションが建つあたり、大阪中心部へのアクセス性の良さ、ニュータウンという一定の人口による消費需要などによって開発需要は落ちていないんだなと感じました。

中高層マンションから低層の団地、一軒家まで、色々な住まい方の選択地がある街は、これから住みたいと思う人にとっては嬉しいのではないかと思いました。自分たちのライフスタイルや家族構成、家賃相場などから住まいを決められますからね。

町全体としても消費者はある程度いるので、衰退しているようには見えませんでした。しかし、ベッドタウンとして計画された街が今後どう変化していくのか、そういった所が気になりました。

駅から離れると住宅しかないので、駅まで行き来する必要があり、高齢者にはキツイ所もあるだろうなとか、交通ハブの老朽化とか、コミュニティみたいな話とか。

これがニューニュータウンの問いなのかなと、思いながら。


総括

西日本に限るが、各地のエリアリノベーションやウォーカブルの取り組みを見てきました。

まとめられるほど、悉皆的に見に行ったわけではないので、全体を通じて、個人的に感じたことを最後に書いておきます。

まず、エリアリノベーションとかウォーカブルとか、同じ枠組みの中での先進的な事例として知られている所ばかりでしたが、やはり地域ごとのプロジェクトの特色は当然ながら沢山あり、エリアリノベーションに関しては「どんなきっかけ初めて、誰が主導して、どんな事業をやっているのか」という所に、またウォーカブルに関しては「何のために、道路整備や社会実験、場づくりをやっているのだろうか」という所に興味の矛先があったように思います。

そして、偶然ではありますが、この二つの取組を数日の間に沢山接種して感じたのは、案外二つが絡み合っているということです。

エリアリノベーションでは、事業を起こして、面的な変化につなげていくうちにエリアのウォーカブル(歩きやすさ・歩いて楽しい)度の重要さも増していく気がしました。面白い事業が近く、いくつかあっても、そこの間が歩きづらいと回遊はしづらい。

逆に、どんなに道路を整備したり社会実験で一時的な賑わいを起こしたりしても、沿道や周辺に魅力的な場所がないと、そこはただの「歩きやすい・綺麗な通り道」にしかならない。

途中下車として回った街も、同じような視点でみると面白かったです。
各街が何を活かして街おこしというかまちづくりをやっているのか。そういうことを意識的に見続けることで、感じたことが沢山有りました。

未だ言語化しきれていない部分も沢山ありますが、次は、自分で考えてチャレンジするステージかと思います。その中で感じていたことをしっかりと言語化できたらいいんじゃないかと思っています。

・・・

4月から社会人になると、長い時間が取りづらくなるので、こんな色んな所に一気にいくような旅はできなくなるだろう。

その変わりと言えるかはわからないが、人脈がもっと広がれば、もっと地域を訪れた時に街づくりに深く関わっている人々の話が聞けるチャンスが増えるかもしれない。そういう旅の変化を楽しむとしよう。

学生最後の春休みは、ちょっとこうした長期旅に出る予定はないのだが、ちょこちょこ旅行には予定なので、それはまた次のnoteで。

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