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ECアプリでWebview利用をおすすめしている理由


先日書いたnoteで「(自分が関わってるEC機能があるアプリは)基本的にWebviewでECサイトを表示しているだけなことがほとんど」と書きました。

EC機能があるアプリを作る場合、アプリ内ブラウザとも呼ばれるWebviewという機能を使って既存のECサイトのWebページをアプリ内でそのまま表示するか、アプリ独自に機能を作り込んでECサイトと同等かそれ以上の使い勝手を実現するネイティブ開発をするか、の2択になります。

Webviewってなに? ってとこに関しては会社のブログにおあつらえ向きな記事があるのでそちらをどうぞ

コスト的にはWebviewのほうが圧倒的に安いです。でも、世間的にはネイティブ開発したECアプリはとにかくもう全ての面で最高に素晴らしいから何が何でもネイティブで作るべき!、みたいに思われてるんじゃないかと思います(偏見

ですが、僕らはEC機能を実装することに関しては経験上Webviewをオススメすることが圧倒的に多いです。今日はそのあたりのことを書きたいと思います。


3重投資を続ける覚悟があるか

まずこれです。この理由だけでWebviewにとどめる判断をしてもいいくらいです。

ECアプリをネイティブで作り込んだ場合、ECサイトの仕様が変わるとアプリ側も追従して変えていくことになります。ここで重要なのはECサイトとECアプリの2重投資ではなく、ECサイト・ECアプリ(iOS)・ECアプリ(Android)の3重投資になるということです。

これが初期開発だけでなくリリース後もECサイトに改修が入るたびにずっと続きます。このコスト負担はかなりインパクトがあります。しかも基本的に常に3つ同時に開発しなければいけない。今期は予算が取れなかったからECサイトだけ…ということも難しくなるわけです。

この3重投資が続けられずECサイトだけが更新されていってアプリが陳腐化していき使われなくなってしまった、といった話も聞きますし、アプリの改修ができないせいでECサイトも更新できなくなってしまうといった事態も起こり得ます。

Webviewで実現した場合はECサイトが更新されればアプリに表示される内容も勝手に変わります。アプリ内ブラウザで同じものを表示してるだけですから当然ですが。


自動ログインだけでも顧客体験は格段に向上する

2つめはこれです。

これはECに限った話ではないですが、アプリを使っているときに何度もログインを求められてストレスを感じた経験がみなさんあるんじゃないかと思います。

僕も以前、会社のブログでそのことについて書いてました。

このブログ内でも書いてますが、ECサイトとアプリをきちんと連携させればログインを自動化することは可能です。

これが実現できると、アプリ内でWebviewを使ってECサイトを表示するだけでも、お客さんにはECアプリを使っているのとほぼ変わらない体験を提供できます。これはログインが自動化されることでアプリとECサイトの遷移のつなぎ目が意識されなくなるからです。

実際、ECの部分がWebviewかネイティブかを気にしたり違いに気づくことができるのは僕らのような開発側の人だけで、お客さんにとってどう作られてるかはどうでもいいことです。スムーズにお買い物できさえすれば。


ECサイトと見え方を同じにする不毛な開発

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お客さんから「ECアプリの見え方がECサイトと違う」という声が寄せられることがあります。これが発端になってもともとネイティブでEC機能を作っていたのをWebviewに切り替えた事例も実際にあります。

ECアプリをネイティブで作り込んでいる場合、サイトとは表示のさせ方や内容が異なることがしばしばあります。もちろん技術的な理由や制約があったりもしますが、どちらかというと制作側はECサイトよりもサクサク動く快適なUIを提供したいとか、ECアプリならではの機能を提供したいという思いがあって、結果としてそうなっている場合がほとんどです。…が、この思いというやつが意外とお客さんに届きません。

サイトで表示されるレコメンド(いわゆるオススメ商品)が違うとか、商品をお気に入りするボタンの位置が違うとか、価格表示の大きさが違うとか、そもそもTOPページの表示内容が違うとか…

こういった要望に応えようと、ひたすらECアプリの見え方をECサイトに合わせていく改修を繰り返し、しかしECサイトはECサイトでどんどん機能追加やレイアウト変更なんかが起こったりしてアプリ側はまたその対応に追われ、終わることのないイタチごっこな開発が続くうちに疲れ果てた制作側はある日ふと気づいてしまいます。

もうECサイトをそのまま表示すればいいのでは…


もちろんこういう要望に徹底的に応え、サイトとほとんど同じ見え方をネイティブで実現しているECアプリはあります。実現できちゃうならこれはこれで理想的ではあります。

ただ、この投資はなんというか非常に“富豪的”です。理想的かもしれませんが、誰にでもオススメできる方法とはとてもいいづらい。↑で書いたような未来永劫続く3重投資の点も含めて、相当な覚悟が必要です。

アプリ開発側の立場にいる僕が言うのもなんですが、個人的にはここを追求するならECサイトのパフォーマンス向上に投資した方が効果が高いように思います。その上でアプリ側をWebviewに割り切れば、恩恵はサイト利用者もアプリ利用者も受けられますし、半永久的に続く“富豪的”な投資からも逃れることができます。


ECアプリをネイティブで作るなら

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サイトとアプリの見え方が違うという声には、ECサイトでできることはアプリでも同様にできるようにしてほしいという期待や、使い方(UIなど)も同じであって欲しいという、お客さんの期待が含まれていると思っています。

それを実現する方法としては、ECサイトのWebview表示+自動ログインが最もバランスがよいと僕は考えています。

それがあった上で、さらにアプリならではのお買い物が楽しくなるようなサービスを+αで提供する、ということであれば、その機能をネイティブで作る意味は出てくるかなと思います。あるいはライブコマース(タレントやインフルエンサーがライブ動画で商品紹介し、それを見ながら買えるサービス)のように、明確にECサイトとは別物とわかるサービスに振り切っていれば先に挙げたような不満は出てこないでしょう。

逆に、実際によく要望としていただくんですが、「ECサイトが重いからアプリで軽くしたい」というだけの目的ならネイティブで作り込むのはやめたほうがいいです。


商品を選び、商品を知る顧客体験の向上

さて、一言でアプリならではのお買い物が楽しくなるようなものと言ってもなかなか難しいものがあります。ただ、どうせ考えるなら単にアプリで買い物ができるだけじゃなく、もう少し広がりのあるアイデアを考えていきたいところです。


たとえばECサイトやECアプリはオンラインでの購入にしかつながらないと考えている方も多いかもしれませんが、実際は商品について詳しく調べるための「カタログ」として利用することが多く、最終的な購入は実店舗で行われることも多かったりします。

ウェブへの来訪動機の1番目は「買い物前に商品について調べる」であり、「ウェブ上での購入」は2番目、続いて「新商品のチェック」「セールやキャンペーン情報の収集」など、必ずしも来訪者全員が購買のために閲覧しているわけではないことがわかった。
「EC=通販チャネル」という最初の戦略を見直す必要が出てきたのだ。

EC×リアルを成功させた無印良品[前編]―― 顧客可視化までの道のり より抜粋

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逆にECアプリには実店舗で商品のことを詳しく知るという新たな目的が最近生まれてきています。

例えばユニクロアプリでは商品のバーコードをアプリで読み込むと、ECサイトでその商品の口コミ情報などを見ることができ、商品選びの後押しをしてくれるような流れができています。

ちょっと前までは店内でアプリ起動したり、カメラで何かを撮ったりすることはあまりできない雰囲気もありましたが、こういったアプリの普及でそのハードルは下がりつつあり、ユニクロアプリのように在庫がいまその店にあるかどうかわかるようにしたい、という要望も最近耳にすることが多くなってきました。

こういった商品を探しその商品のことをよく知るという購買前の行動が、オンライン・オフラインの区別なく行われるようになっている中、これをサポートする機能はまだまだ発展途上であり、僕も会社もこのことに積極的に取り組んでいくことが必要だと考えています。

そのためには、ECサイトの置き換えや上位互換となるようなサービスをアプリで作るような考え方ではなく、商品選びを後押ししお買い物をより楽しくするためにオンライン・オフライン問わずどんな価値を提供できるか。そういったオムニチャネル・O2Oといった視点でのアイデアがこれからさらに求められてくると思います。


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