コトラーのマーケティング5.0を総まとめしてみた
どもっ、しのジャッキーです。本記事は、マーケティングに関する個人的な学びのアウトプットです。
マーケティングの巨匠コトラー氏の最新版「Marketing 5.0: Technology for Humanity」(英語版2021/1/27)の日本語版は2022/4/20についにでましたねぇ~。
英語版は以下
日本語版は以下
ということで、さっそく本書の内容について、目次をもとに、ざっくり俯瞰してみたいと思います。
Marketing4.0までの系譜
と、その前に、以前の投稿でも使った。Marketing1.0から4.0までの表をここに入れておきます。
マーケティング5.0の構成要素
マーケティング5.0の構成要素は、5つあり、2つの規律と3つのアプリケーションからなる、としています。
2つの規律
データドリブン・マーケティング
アジャイル・マーケティング
3つのアプリケーション
予測マーケティング(Predictive Marketing)
コンテクスチュアルマーケティング(Contextual Marketing)
拡張マーケティング(Argumented Marketing)
直近、私のnoteでは、2021年に日本語版がでた「コトラーのH2Hマーケティング「人間中心マーケティング」の理論と実践」についてまとめていました。そちらの書籍では、H2Hマーケの3つの要素「マインドセット・マネジメント・プロセス」×3つの影響要因「デザイン思考・サービスドミナントロジック・デジタライゼーション」の3×3のフレームで整理されていました。
なんとなく、要素を分解して再構築しているように感じます。H2Hマーケに関して関心がある方は、以下に総まとめをしていますので、ご参照ください。
デジタル世界でマーケターが直面する3つの課題
デジタル化が進展した現在において、マーケターは以下の問題に直面しているとしています。
世代間ギャップ
複数の世代(ベビーブーム世代, X,Y,Zそしてα世代)への対応
富の二極化
雇用・思想・ライフスタイル・市場の二極化の社会に、包摂性とサステナビリティを生み出す、というチャレンジ
デジタル・ディバイド
デジタル化の支持派と批判派の二極化(断絶)
テクノロジーによって強化されたマーケ新戦略
3つのデジタル化戦略
邦訳ではテクノロジー支援マーケティングということですが、英語では、Tech-Empowered Marketingということで、技術によって強化されることがマーケ戦略にどういう影響を与えるか、を「顧客のデジタル化への準備度」と「企業のデジタル化の準備度」という2つの軸で整理し、3つの戦略を提示しています。
3つのデジタル化戦略
顧客をデジタル・チャネルに移行させるための戦略
デジタル能力を構築するための戦略
デジタルリーダーシップを強化するための戦略
ネクスト・テクノロジーと新しい顧客体験
上記3つの戦略を支える最新のテクノロジーやその背景が解説されています。コンピュータの処理能力の向上、オープンソース化、クラウド化、モバイル化、ビッグデータの蓄積といった背景と、AI、NLP、センサー技術、ロボティクス、MR、IoT、ブロックチェーンといった最新テクノロジーについてのといった感じです。
その上で、新しい顧客体験とは、「マシンのクールさ」と「人間の暖かさ」のかけ合わせだとします。この掛け算を最新のカスタマー・ジャーニーのモデルである5Aに当てはめた7つの顧客体験(CX)のユースケース(広告、コンテンツマーケ、ダイレクトマーケ、セールスCRM、流通チャネル、製品・サービスサービスCRM)についてポイントが解説されています。
なんかマーケティング5.0の図表はH2Hマーケに比べるとシンプルというか少ないですね。5AについてH2Hマーケで出てきたリアルとデジタルのタッチポイントの整理はわかりやすかったので、載せておきます。
これらの顧客の状態・体験を先に進めるために企業ができる働きかけに関して、H2Hマーケでは、以下のように整理していました。これをテクノロジーとユースケースの組み合わせでマーケティング5.0では7つに再構成した感じですね。
マーケティング・テクノロジー活用の新戦術
戦略(Strategy)から、戦術(Tactics)にトピックは移ります。ここからは、冒頭で紹介した2つの規律と3つのアプリケーションからなるマーケティング5.0の5つの構成要素について、以下の順番で解説されています。
規律1:データドリブン・マーケティング
アプリ1:予測マーケティング(Predictive Marketing)
アプリ2:コンテクスチュアルマーケティング(Contextual Marketing)
アプリ3:拡張マーケティング(Argumented Marketing)
規律2:アジャイル・マーケティング
データドリブンマーケ~予測マーケ
NECというICTの企業に所属している私としては、AIで処理させるためには、目的変数(課題の設定)と説明変数(どうやってそれを達成するかのデータ設計)を定義する必要があることや、予測モデルの背後にある基本的な考え方をマーケターが理解すべきである、として紙幅を割いて説明していることにとても好感を持ちました。
このあたりのことって、4,5年前に、AIの案件への適用を考えてたときに、研究者や技術者の人に何度も教えてもらった内容でもありました。
ちなみにちょっとだけ宣伝を挟むと、NECから研究者を外に出す、カーブアウトという形で北米に設立したdotData社が提供しているデータ・サイエンス・オートメーションは、どういった説明変数で説明するのか設計する特徴量設計という、非常に時間とハイスキルなデータサイエンティストが必要な工程を自動化するソリューションを提供することで、短時間で予測モデルを作り出すことを実現しています。
関心のある方は、以下からホワイトペーパーがダウンロードできますので、ご参照ください(自社の宣伝おわり)
コンテクスチュアルマーケティング
コンテクスチュアルマーケは、顧客のおかれた状況に合わせて、最適なマーケティングアプローチをすることです。パーソナライズですね。このこと自体は、以前からあるが、これらが最新テクノロジーによって自動化できるになったことが大きな変化だとしています。
顧客がスマートフォンをもっていることが当たり前になり、顧客の位置が把握できるようになってきたことも大きな要因です。また、顔認証技術やアイトラッキング(目線追跡)、感情推定、脳波などについても言及されています。デバイス系では、アレクサやら、3Dプリンターやら、についても例が示されています。
このあたりは、マーケティングに対する、監視・ストーキングされているような気持ち悪さを感じる側面もある領域でもあります。そういったプライバシーや人権などと隣り合わせでもある、という倫理的な側面についても言及すべきではないかな、と読んでいて思いました。
ちなみに、NECでは、AIと人権に関するポリシーを規定しており「公平性」「プライバシー」「透明性」「説明する責任」「適正利用」「AIの発展と人材育成」「マルチステークホルダーとの対話」の7つを指針として挙げています。関心のある方は、以下をご参照ください。
拡張マーケ
拡張マーケで何を拡張するのかといえば、ヒトとマシンの協同作業によってお互いの能力を拡張することと理解しました。AIと対比させて、IA(知能増幅:Intelligence augmentation)という表現をしていました。以下の文章が印象的でした。
拡張マーケでは、いわゆるマーケティングファネル、セールスファネルの段階ごとに利用するインターフェースの選択肢がヒトとマシンの共生によって増えたとして、いくつかのユースケースを紹介してくれています。
このあたりは、マーケティングオートメーションの一つのモデルを提唱してくれている「THE MODEL マーケティング・インサイドセールス・営業・カスタマーサクセスの共業プロセス/福田 康隆 (著)」があり、戦術一つ一つについて専門書を読まないと、と改めて思わされました
あと、データドリブンに顧客体験を以下に改善するか、については「UXグロースモデル アフターデジタルを生き抜く実践方法論/藤井 保文 (著), 小城 崇 (著), 佐藤 駿 (著)」あたりをじっくり読むとさらに理解が深まるだろうなー、と思いました。
UXグロースモデルについては、以前に、当方のnoteでまとめていますので、以下、ご参照いただけますと幸いです。
アジャイルマーケ
さて、最後はアジャイルマーケです。H2Hマーケでは、H2Hプロセスっていっていたものです。VUCAでかつ変化が激しく・早い中で、計画的ではなく、俊敏(アジャイル)に変化に適応していく必要があるというのが背景です。以下の6つの要素を掲げています。
リアルタイム分析の能力を築く
分散型チームを設立する
柔軟な製品プラットフォームを開発する
並行プロセスを開発する
迅速なテストを行う
オープンイノベーションを利用する
これらについて説明した上で、アジャイルマーケプロジェクトの管理には、迅速かつ簡潔な記録の作成が必要だ、として1ページのワークシートを例示しています。ワークシートの要素は以下となっていました。
マーケ戦略のポイント
チームメンバー
期間
サイクル(何回目の検証か)
問題・課題設定(市場の必要性)
解決策・改善策
スケジュールと役割分担(タスク・時期・担当者)
市場テストの結果
H2Hマーケのほうでは、MVC(Minimum Viable Contents)という言い方をしていましたが、どうやって効果・効率的に仮説検証サイクルを高速に回すために、学びたいことから逆算してMVP(Minimum Viable Products)を作り、実験するのか?という戦術手法についてとなります。
H2Hマーケのほうでは、以下のようにプロセスを説明していました。
基本的には、製品・サービス開発の現場で使われるアジャイルの手法やその具体的な手法として代表的なスクラム、新事業開発でいけばリーンスタートアップ、このあたりの専門書を読み、学びを深めるのがよいと思いました。
ちなみに、私は、分散型チームについて、どのように考えればいいか、ベストプラクティスを学びたくて、いまいま現在、以下の2冊を読んでます。
おわりに
ということで、今回は、2022/4/20に発刊された「コトラーのマーケティング5.0」について学びを総まとめしてみました。
このほか、当方のマーケティングに関する記事は以下のマガジンにまとめていますので、もしよかったらのぞいてみてください。またフォローや記事への「スキ」をしてもらえると励みになります。
ということで「形のあるアウトプットを出す、を習慣化する」を目標に更新していきます。よろしくお願いします。
しのジャッキーでした。
Twitter: shinojackie